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第二十七話 視察は大事

罠が仕掛けてあった。

屍人を作り出す能力。


これはつまりオーベルがこの先に居る証明だ。

南の方がフェイクという事になる。


ヨハン達の向かう方角で正解だったのだ。


念の為に残された馬車を調べるが

何も変わった所は無かった。

居なくなった馬は

そのまま逃走用に使われたと思われる。


追跡を再開すると

同じ様な馬無し放置馬車が

いくつかあり、いずれも旅人が屍人化されていた。

同じ様に処理していく。


「これで残り一台よ」


パウルとの交信で

渓谷方面に向かった

該当する馬車の事だ。


いずれも罠に使用され

とうとう本命の一台が残った。


「良かったぜ。屍人はうんざりだ」


死後間もないせいもあり

見た目は普通の人間に見える。

それを焼いたり吹き飛ばしていくのは

精神的に来る。


かと言って、放置も出来ない。

後から来る事情を知らない旅人が

被害に遭ってしまう。


心を強く持ち

全て処分するしかなかった。


最新の馬車。

優秀な馬を持ってもしても

追いつけなかった。

倒す為と言うよりは

見過ごす事が出来ない事を

見越しての時間稼ぎの罠を

残しっていったのだ。


渓谷方面に入る分岐点で

不意にソフィは馬車を止めた。


何事かと御者席を見ればソフィは

輪留め用の石ころを道に投げる。


予想外の金属音が響く

野生動物捕獲用の罠が

当たった石ころで作動したのだ。


地面の微妙な違和感を見破ったのだ。

その先でも張り巡らされた鋼糸の罠や

馬の脚を狙った落とし穴など

次々と解除しながら進んでいく。


「頼もしいぜ」


暗殺をメインに政府に雇われる前は

盗賊シーフとしてG級冒険者をしていたソフィ

その本領発揮である。


「武」を担当していた経験のあるヨハン。

戦略は専門だが、ここまで細かい対人用の罠に

なると難しい。


ヨハン達だけなら

全ての罠を回避出来たとは思えない

手痛いダメージを被ってしまう事も

十分有り得た。


パウルはここまで読んで

ソフィを派遣してくれたのかと思うと

恐れ入った。


日が暮れ始めた。

馬車での移動の限界は迫り

焦りが生じ始めるが

遂に追いついた。


馬が先に進むのを嫌がり始めた。

人にはまだ感知出来ない異臭を嗅ぎ取ったのだ。


慌てるソフィにその事を教える。

馬車での移動の限界点だ。


「じゃあ、目当ての馬車はどこへ」


その疑問にもヨハンは予想を答えた。


「馬もゾンビ化したんだろ」


視察に来た時に見つけて置いたポイント

前回もここで馬を待機させた場所だ。

汚染されていない小さな小川があり

馬を休ませる事が出来るのだ。


ソフィに場所を指示して

そこまで移動する。

馬達は物凄い勢いで水を飲み始めた。

無理も無い走らせっぱなしだった。

エサも食いたいだけ食わせる。


その間にソフィはパウルからの

呼び出しに答えていた。

交信が終わると内容を話してくれた。


「皇太子は無事、保護されたわ」


南に向かった囮は

貴族側の聖騎士と

乗り捨てられたエロルだったのだ。


オーベルは分岐点の集落で

聖騎士達に偽の目的地を告げ

その後に何者かに乗り換えたのだ。


ベレンから向かった勇者とハンスを

含む追跡班が捉え

戦闘になる事無く

話し合いで済んだとの事だ。


「治療の魔法が使える司教が

エロルの傷を治して無事も確認した

そうよ。その後、勇者と二人でこっちに

向かってるって」


またガバガバにおんぶしてもらって

いるのだろうか。

確かに馬より速いが

良く怖く無いものだと

ヨハンは感心した。


「到着待っている余裕は無ぇな」


解毒の魔法が使えるハンスが

来てくれるのは心強いが

ここは毒の効かないヨハンとストレガ

毒の効果を解除出来るゲカイの三人で

先行し、ソフィとチャッキーは

勇者とハンスをここで待つ事になった。


「どうしようも無くなったら

これを空に向けて打って」


ソフィはそう言ってヨハンに

小さな棒状のアイテムを渡した。


信号弾と呼ばれる花火の様なモノだそうだ。


「まぁ使わずに済ませないがな」


有難く受け取っておくヨハンは

そう言った。


「んじゃついてきてくれ道は任せろ」


視察しておいて良かった。

ヨハンは自信たっぷりに

そう言うと

ゲカイとストレガを伴い

古城までの道を進み出した。

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