快晴
「つまり?俺があの時投げた二つの宝石が?はるか遠くの星喰を吹っ飛ばしたと?」
「そういうこと、だからおとなしく英雄扱いを受けやがれ」
「やだー!!めんどくさーい!!!」
ここに、世界一自分の業績に疎い英雄が誕生した。
太陽照り付けるよく晴れた昼。
随分と魔獣が減った見晴らしのいい平原にてにぎやかな声がよく響く。
大遷移という災害を未然に、そして永遠に阻止した魔術師団はお祝いの最中であった。
「かっこよかったぜー新人君!!」
「近くで見てたけど星喰がズバーンって裂けたのサイコーだったわ!!!」
「未然に防いで今後大遷移は起きなくなった、俺ら暇になっちゃうながはは」
「今後は開拓が主な仕事になるだろうね、星喰に封鎖されてた大陸の大半に行けるようになるからさ」
魔術師は和気あいあいと雑談しながら英雄を暴風で振り回していた。
「おーろーしーてー!飯食いたーい!!」
ぐわーんと、ヴェルヘンは空中で単振動をさせられている。
魔術師流の祝い方らしい。
飯の要望に応えたのか何らかの肉が彼の口の中に飛んできた。
暴風で少し冷めたがおいしいらしい。
そんな和気あいあいとしている空間の少し遠く。
即席で掘られた穴の中で正座をさせられている老人がいた。
星喰討伐の立案者にして実行指示役の団長である。
穴のそばに試験官を務めていた副団長が鬼の形相で仁王立ちしている
「馬鹿なんですか?あなた」
「待ってくれ、言い訳をさせてくれないか?」
少し穴の土が崩れた。
白い髪に土がパラパラと降り注ぐ。
「星喰を物理攻撃で倒す計画は以前からありました。
これ以上奴が近づいてきたら人類存続にかかわりますから、急いで倒したくなるのもわかります。
というか、奴を打ち倒したことは心の底から賞賛します。
ですが...実行計画が杜撰すぎんだよ!
せめて俺に話し通せっつってんだろジジイ!!」
「成功したしいいだろう?」
「あ?」
土がさらに崩れた。
「作戦の主軸となる人物を!当日急に呼ぶんじゃない!!しかも新人の子を!!!」
「うぐっ、だが」
「言い訳無用!!」
さらに穴が崩れた。
もう団長の膝は土に埋まっている。
「ほかのとこに話し通さずに大量の風魔術師引き抜くな!!
無断で宝物庫から素材持ってくな!!」
「必要だったから」
穴が埋まった。
土が少し蠢いている。
「はぁ、これから元魔力吸収範囲内の探索とかやることが盛沢山なのでここまでにしておきます」
「悪かったとは思っている。次からは君に話を通す」
言い切ると同時に土が動き階段が出現する。
全身に付いた土を一瞬で消し、地上に上ってくる団長。
「いや、いい機会か。憂いもなくなった今、団長を卒業するいい機会かもしらんな」
「ふざけんなよジジイ、これから忙しいっつったろ。仕事増やすな」
「儂ももう年だ、次の副団長だけは探しといとくれ。新人のアレフ君なんかは儂より真面目そうじゃぞ」
「大概の人がそうだろうが、魔術馬鹿」
憎まれ口をたたかれながら、団長はまぶしい空を遠くまで見渡す。
もう空の果ての黒き塔に怯える必要はなくなった。
いつ奴がこちらに飛んでくるか、いつ人類が滅亡するか、警戒する必要はなくなった。
魔術師団団長という席に座ってから、彼は初めて空を綺麗と思えた。




