人柱様の足音
俺、遠野拓海はこの度、失業した。
幸い、しばらく暮らすくらいの貯金はある が、奨学金を返す分がない。
すでに卒業してから半年がたっているので、来月あたりから返済が始まる
大体月2万くらいだから、それは少しバイトすればなんとかなる。
しかし、20年…ながいなぁ
最近この部屋を紹介してくれた不動産屋さんの依頼でバイトを受けた。
怪異現象のおこる物件の調査の依頼だった。
事故物件ではないらしいのだが、怪音のため、入居者が次々と出て行ってしまうというのだ。
立地的的には良い場所にあるので、本来なら良い物件なのだが、その部屋だけ怪音のため借り手がつかない。
しかもホラーチックなうわさが立ち、物好きが見物にくるので他の住人にも迷惑が掛かってしまっている状態で困っているとのことだった。
解決はしたものの本物の白骨遺体を発見してしまったため、正真正銘の事故物件になってしまった。
こうなるとご近所迷惑だけではすまなくなり、今いる住人はみんな引っ越したらしい。
おかげでマンションに建て替えられるとオーナーさんはよろこんだので、きちんとバイト代も入ってきた。
綺麗な1ルームマンションは部屋数も前の3倍で、きれいで、最新の防犯設備もそなえたので女性の一人暮らしに大人気らしい。
入居待ちがでるほどだとか。
おかげで不動産屋さんには感謝され、アパートのオーナーさんからは謝礼ももらってしまった。
美味しいバイトだった。
しかし、俺の部屋にはその時のかりかりさんが呪いさんと仲良くなったのか、うちの家へ越してきてしまっていた。
毎夜、きーばんばんの音にくわえ、カリカリと小さい音だがずっと鳴っている。
友人たちには一連の事情を話した。
「じゃぁお前、そういう仕事をはじめたら?」
「そういう仕事?」
「事故物件の調査いたします。みたいな? 怪異探偵とかよくないか?」
「やだよ、それでまた居候増えたら俺があの部屋に住めなくなる。」
「料金設定とかホームぺージの作成とか格安でやってやるぞ。」
「だから、やらないって。」
「お前ら楽しんでるけどな、実際あうと怖いんだぞ。そんなにさせたいなら次お前が調査に付き合えよ。」
ぶるっと身体を震わせながら悠馬が周りの奴らを指さす。
「いやぁ、俺はそういうの苦手だから…まぁがんばれよ。」
身をのりだしてホームページだと叫んでいた奴が悠馬に指をさされて逃げた。
「本当にもうやめとけよ、事故物件は。俺もう付き合わないからな。」
悠馬がぷいっと横をむく。
そう言いながらお願いしたら付き合ってくれるんだろうなぁ。
悠馬も小太郎も良いやつらだ。
「そういや、小太郎。前回なんで呪いさん連れてきてくれたんだ?」
「あー荷物取りに部屋へ行ったら呪いさんが連れてけって。端きったら良いからって。」
「呪いさんが…さては呪いさん、カリカリさんのこと知ってたんじゃ…」
怪異ネットワークとか恨みサークルみたいなものがあるのでは…
それなら仕事にしてもいいかもしれない…けど、これ以上音が増えるのは本意ではない。
「そういえば、山手の洋館取り壊すらしいぞ。」
「あの幽霊屋敷か。」
「そうそう、あの幽霊屋敷。昔、肝試しとかって忍び込んだよな。」
「なつかしいな。あそこまだ壊してなかったんだ。家主が死んでもう30年近いんじゃないか?」
「未だ出るらしいぞ。これが」
と両手を幽霊の形にしてぬぅっと立ち上がる。
「やめろよ、たんなる噂だろ。」
「でも、それ取り壊そうとしたら、なんか霊的妨害にあって、今中断してるとか言ってたけど…」
「霊的妨害?」
「なんでも、重機をいれたらガソリンとかはちゃんと入ってるのに、なぜか動かないとか。柱切り倒そうとしたらチェーンソーの歯がおれて作業員がケガしたとか…」
「呪いの館?」
「なんかぞくぞくしね?」
みんな一様に押し黙った。
「もうこの話題はやめようぜ。」
しかし、その翌日 不動産屋さんがきて、こんどは幽霊屋敷を調査してほしいとまたバイトの話を持ってきてくれた。
あいつらが言ってた通り、取り壊したいのに取り壊せなくてこまっているということだった。
バイト代おいしいし、引き受けたいのは山々なれど…
大丈夫かな?
なんだかんだと押し切られてしまった。
「では、よろしくお願いします。」
実害あるのはこまるんだけどなぁ。
でもまぁ、俺が取り壊そうとするわけじゃないから…きっと大丈夫…かなぁ…
とりあえず、一人でキャンプ用具持参で泊まりに行った。
一応、悠馬と小太郎も呼んだが行かないと断られたので、呪いさんの鏡だけもって泊まりにいった。
なんだか生暖かい風が雰囲気よろしく吹いてくる。
ねずみでもいるのか時折部屋の隅でカサコソいったり、だーっと走っていくおとがする。
玄関の扉は朽ちて半分外れかけている。
幽霊屋敷の名前の通り雰囲気も満点である。
ねずみや虫たちの音に交じって夜中になると
ヒタヒタ…
と足音が聞こえだした。
少し湿った素足で板の間を歩くような足音。
こんな埃っぽい場所でそんな音がするような板の間はない。
ヒタヒタ…
音が少しずつ近づいてくる。
ヒタヒタ…
後ろを振り向いても誰もいない。
当たり前だが、そんな音がするような歩き方をする虫やネズミもいない。
ヒタヒタ…
俺、別に取り壊しの手伝いにきたわけじゃないです。
と言いたいが変な汗でのども張り付いている。
ヒタヒタ…ヒタ
足音がすぐ後ろで止まった。
後ろを振り返ろうとして…殴られた?
頭に鈍い痛みを感じてその場にうずくまった。
強い腕に捕まれいつの間にできたのか大きな穴に放り込まれた。
上から土がかけられる。
顔や胸に土がどんどんかけられていく。
息が苦しい。俺、生き埋めにされるのか?
怖くなって手足を動かそうとしたがぴくりとも動かなかった。
ヒタヒタ…
足音が聞こえる。
初めて怖いと思った。
にくい…なんで俺が人柱になんか…俺を埋めたやつらみんな呪ってやる…
かすかに声が聞こえる、これヒタヒタさんの記憶?埋められた時の?
でも幻覚には思えない 俺、このまま死んじゃうのかな…
カリカリカリカリ…
かりかりさん?
急に息ができるようになった。
おぉ、かりかりさんが口や鼻に詰まった土を掻き出してくれたらしい。
しかし、かけられる土はやむことがなく、どんどん息はくるしくなっていく。
かりかりさん、がんばれー
と応援するがそれさえも声にはならない。
「あれ? 拓海いないじゃん。」
悠馬と小太郎の声。
俺はここだ。
叫ぼうとするが声はでない。
こんな大きな穴、気が付かないはずないだろう。見えてないのか?
「買い物にでもいったんじゃないか?しばらく待って帰ってこなかったら帰ろうぜ。」
そんな声が遠くで聞こえる。
いかないで…俺はここに…
意識が遠くなっていく。
もうだめかもしれない。
かりかりさん、ありがとう。俺、もう無理っぽい。
みつけてもらえず、俺は生き埋めにされて…
突然、空気が戻ってきた。
ごほごほとせき込みながら口や鼻に入った土を吐き出す。
悠馬と小太郎が俺を掘り起こしてくれていた。
「こんな穴、さっきはみえなかったのにな。」
いいながら救い出してくれた。
「なんで急に気が付いた?」
まだ少しせき込みながら聞くと、
「いや、誰もいないし。気味悪いしで帰ろうとしたら… きーばんばんって音がかすかにして。んでおとがしたとこ掘ろうとしたらいきなり穴があいて、お前が埋まってた。」
呪いさんが音で知らせてくれたのか。
危うく昇天するとこだった。
怪異に殺されかけて怪音に助けられるって…
その後、屋敷の解体は進められ、ヒタヒタさんが地中深くで見つかった。
屋敷の半地下に書庫が見つかり、そこにあった古文書によると昔、この地方を襲った水害は何年も続き、それをおさめるために人柱の儀式をしたとあった。
500年ほど昔の話だった。
それ以降屋敷の当主は代々短命で怪異も続いたという。
200年ほど前にこの屋敷は建てられ、祭壇を設け、人柱様を祭ったらしい。
それヵらは怪異は収まっていたらしいのだが、最後の当主が30年ほど前に亡くなり、祭るものもいずに荒れ果ててしまったこの屋敷には恨みだけが残ってしまったようだった。
かなり深くに埋められていた人柱様は無事掘り起こされちゃんと埋葬された。
恨みはまだあるだろうけど、これ以上悪さはしないとおそらく思う。
俺も死にかけたし、しばらくは事故物件とは距離を置こうと思っている。
不動産屋さんとこの屋敷のオーナーさんは解体できて喜んでいるが、あまりここに建物を建てるのはおすすめしないのだが。
たまにここにきて、お線香をあげたりしている。
めちゃ苦しくて怖かったので…
誤字脱字、変換ミスてんこ盛りかもですが、速やかに訂正していきたいと思っておりますので、長い目で見てやってください(>_<)




