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コンビネーション

化け物は仁を執拗に狙っていた。

仁は化け物との距離を保ちながら、これ以上刺激しないようゆっくりと後ろに下がるだけで精一杯だった。

一方、魔弾は後ろから何度か金属を刺し自分を狙うように仕向けていたが、いつ振り向きざまに爪を振り下ろされるか分からない恐怖から、深追いする事が出来ず小さなダメージしか与える事が出来なかった。

ーーやっぱりちゃんとした穂先が無いと厳しいか?それとも俺がビビりすぎて深く刺せてないだけか?

ーーそもそも焼けた位置が高すぎる、あれじゃ竜騎士じゃないと届かないわ…

化け物はずっと立ち上がったまま、仁を威嚇しながら木や草をなぎ払っていた。

仁も段々と恐怖に慣れてきたのか、間合いにさえ入らなければと火炎瓶を片手に着火するタイミングを測っていた。

「毒いるーー?!」

あまりに緊張感の無い呼び掛けに、魔弾の恐怖は一気に吹き飛んだ。

「いるー!こっち投げて!」

魔弾は仁の視界に入るよう移動し、大きく手を振って見せた。

仁は化け物を注視したまま、火炎瓶を袋にしまい持って来た腰鞄から、毒の入った小瓶を取り出し視界の隅にいる魔弾の方向へ投げた。

化け物はまた炎で焼かれる事を恐れたのか、前足を地につけ横に避けるように仁から距離を取った。

仁の視界は化け物を中心としていた為、小瓶が魔弾に渡ったかは確認出来ず、化け物がいつ走って近づいてくるかと警戒しながら、火炎瓶の着火タイミングを待つしかなかった。

立ち上がるか走るそぶりを見せたらすぐにでも投げようと仁が覚悟を決めた時だった、いつの間にか魔弾は化け物の左後方に移動しゆっくり化け物に近づいていた。

魔弾は化け物が立ち上がる前に、なんとしても焼けた部分に毒を塗ったナイフと金属を深く刺したいと行動に出た。

化け物の目は右目しか機能しておらず、嗅覚および聴覚を頼りに仁と距離を縮めようとしていたが、左側は見えていないのか風下から近づく魔弾には気づいていない。

化け物の間合いに近づくにつれ、魔弾の緊張は膨れ上がった。

ーー頼む!そのまま動かないでくれー!!

魔弾は間合いに入ると同時に勢いよく走り、背中の焼けた部分に力一杯ナイフを突き立てた。

強烈な痛みに驚いた化け物は、すぐに立ち上がった。

そのタイミングを逃さず、仁は火炎瓶を化け物に向かって投げた。

仁は腹から首の辺りを狙って投げたつもりだったが、距離があった為か火炎瓶は化け物の振り下ろした前足に当たってしまった。

しかし投げた火炎瓶は無駄になった訳ではなく、前足に火がついた化け物はパニックに陥り木にぶつかったり空間を爪で切り裂こうとしたりと不可解な行動を続けていた。

魔弾は金属も隙を見て刺そうとしていたが、今化け物に近づくのは危険と判断し様子を見ながら仁の居る場所に移動した。

「ジン、さっきのめっちゃナイスだった!」

「本当は首に当てたかったんだけどね…まぁ結果オーライかな…」

二人は視線を化け物から逸らさず会話を続けた。

「確かに首狙いいいかも!ゴウさんもあの爺さんも首狙ってたし!火炎瓶まだある?」

「まだあるよ、あーそれとナイフいっぱい小屋から持ってきた!」

「ナイフ2本と火炎瓶ちょうだい!」

仁は先ほど同じように化け物を注視したまま袋から、ナイフと火炎瓶を取り出し魔弾へ渡した。

魔弾は受け取ったナイフを一本ずつ腰紐にさしながら、化け物の動きをよく観察した。

化け物は、少しずつ暴れながら距離を縮めて来る。

ーー暴れてる上にこの木の多さじゃな…ピンポイントで首狙うの無理じゃね?

「投げナイフ試してみていい?」

仁は自信があるのか、ナイフを片手に一歩踏み出した。

「OK!追い打ちは任せな!」

魔弾は仁から松明を受け取り、火炎瓶に火を点けた。

仁はナイフを片手に構えると、化け物に集中し始めた。

ーーなにあのナイフの持ち方?!映画みたいで素敵なんですけど!

ーーっておい!お前も集中しろって!動き止まったら首狙いだかんな!

遅れて魔弾も化け物に集中し移動を始めると同時に、仁は勢いをつけてナイフを投げた。

ナイフは化け物の焼けた前足に刺さり、驚いた化け物はナイフを抜こうと前足を振り回した。

その時、魔弾はなるべく木の障害物が少ない場所で待機し、火炎瓶を投げるタイミングを待っていた。

暴れる化け物をめがけて魔弾が大声をあげながら近づくと、化け物は一瞬動きを止めすぐに魔弾へ五感を集中させた。

動きの止まった化け物が火炎瓶の存在を認識した時には、高速で近づく火炎瓶になす術も無く、次の瞬間化け物の首から顔面にかけてを炎が覆った。

化け物の顔面が燃える様子を確認した魔弾は、すぐに化け物と距離を取り、首にナイフを刺す機会を待った。

しかし、化け物は大人しくなるどころかより一層怒りを露わに暴れていた。

魔弾が様子を見ていると、仁の二投目のナイフが化け物の前足に刺さった。

ーーすげぇ…ちゃんと焼けたとこ刺さってる!カッケェ!!

ーーって、あれ?ナイフ効いてる??痛み感じなくなっちゃった感じ??

一投目のナイフは抜こうと必死に前足を振り回していたが、二投目が刺さった後化け物は動きを止め前足を地につけ警戒し始めた。

魔弾は仁が三投目を構え集中し始めたのを確認し、いつでもナイフで首を狙えるように構えながら身を潜めた。

仁が三投目を投げようとした時、突然化け物が仁に向かって走り出した。

仁はすぐにナイフを投げたが、化け物は仁の投げたナイフが鼻に刺さったにもかかわらず、動きを止める事なく仁に向かって突っ込んできた。

化け物のあまりの早さに、仁は恐怖で足が竦み動けないでいた。

化け物は仁に近づき立ち上がると、右前足を振り上げ勢いよく振り下ろした。

仁は腕で防御姿勢をとりながら後ろへ下がろうとしたが、足がうまく動かせず後ろへ尻餅をついた。

仁の悲鳴が辺りに響く。

化け物は仁にとどめを刺そうと、仰向けに横たわる仁の腹を引っ掻こうとした時、化け物の後方から魔弾がナイフを背中に深く刺し力一杯切り裂いた。

今度は化け物の悲痛な叫びが響き渡る。

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