第21話 残虐なあなたへ⑥『真っ暗な夢の中で』
病院での事件から一週間が経った。病院についてはガス爆発として世間に公表され、院内にいた人は不幸にも全員巻き込まれて亡くなったということにされた。
魔術会本部は表にでてきた悪魔崇拝の組織と思われる『D機関』への対応でバタバタしていた。その過程で存在を知りながら報告をしなかったアレンに白羽の矢が立っていた。
「アレン、何故分かっていたのに報告しなかった?」
「今の魔術会は信用できないんでね。それよりもだ、弟君をあそこまでボロボロにしたやつの正体は掴めたのか?」
「話を逸らすなアレン!……アレン、せめておれにくらいは話してくれても良かったんじゃないか?」
デイビッドは画面越しにアレンを睨みつける。今アレンは日本での任務にあたっているため、リモートでの尋問を行っていた。
「……あんたに話すと情報が漏れる可能性があるんでね。完全にクリアと分かった者にだけ話していた。オルタナは自分で辿り着いてしまったがな」
「……まあいい。今回の件は帰ったらしっかり問い詰めるからな。とりあえず先程の回答だが、わからんの一言に尽きる。近くにグチャグチャになった死体があったがそれ以外はさっぱりだ。おそらく悪魔の仕業だろうが何一つとして痕跡が残されてないんだ。一条悠が起きないと分からない」
アレンはため息をつくと画面に顔を近づける。
「気をつけろよデイビッド。今回の件はかなりの大物が関わっているはずだ。十五年前の規模の戦いになるかもしれない」
「安心しろ。こっちは魔術会の最高戦力が揃ってんだ。これ以上のヘマはやらんよ」
「……『D機関』か。どこかで聞いたことがあるんだよな。こちらでも調べてみる」
「悪いな。そっちもだいぶヤバいんだろ?」
「ああ、日本支部は組織としてはもう終わってるよ。個々人は能力あるんだがなぁ……まあとりあえず何か分かったら連絡するよ」
「よろしく頼む」
画面が真っ暗になった。
デイビッドは椅子からずり落ち、天を仰ぐのだった。
※ ※ ※
悠は真っ暗な世界に座っていた。周りには何もない、本当に真っ暗な世界。無の世界。
悠は立ち上がるとゆっくりと歩みを進める。だが進めど進めど景色は変わらない。ずっと真っ暗。歩いているのに先に進めない感じが気持ち悪かった。
しばらくすると鎖がこすれるような音が微かに聞こえた。悠は音のなる方へ進む。進むにつれて音は段々と大きくなる。
「……誰かいるのか?」
試しに問いかけてみるが応答はない。だが音はやまない。悠は音に向かって歩く。そして鎖を見つけた。その鎖は奥に続いていた。
悠は鎖を伝って奥へ奥へと進んでいく。どれぐらい歩いただろうか。永遠とも呼べる長さの鎖だった。終わりが見えない。
更に進む。そして、終着点に着いた。
そこには人が一人入れるくらいの檻があった。鎖はその中に続く。悠はゆっくりと檻に近づき、中を覗き込む。その中では手足を鎖で繋がれた誰かが眠っていた。
それは蹲るようにして眠っていた。時々寝返りをうち、鎖がジャラジャラと擦れる。
「……おーい」
起きる気配はない。
悠は檻に触れる。すると檻が光りだし、バチンと悠を弾き飛ばした。起き上がると再び辺りは真っ暗になっていた。
「……え」
悠は起き上がり、再び鎖を探す。鎖はすぐ手元にあった。悠は鎖を伝って進む。そして檻を見つけ、再び触れる。するとまた弾き飛ばされ、辺りが真っ暗になった。どうやら触れると元いた場所に弾き飛ばされるようだ。
今度は檻に触れないように近づく。
檻の中の影が動いた。ゆっくりと起き上がりこちらをじっと見ていた。悠はゆっくりと近づき、中を覗く。そして目があった。悠は檻の中にいる者を見て驚愕した。
「え」
そして世界が明るくなった。真っ暗な世界がなくなり、目に写ったのは見慣れない天井だった。悠はゆっくりと体を起こし、夢を振り返る。
「夢……?」
夢というよりは現実に近い感じだった。檻の中で鎖に繋がれていたのは自分だった。




