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ぞ・ん・て・ん!?  作者: 場流丹星児
2/6

ゾンビの能力は如何に?

「ゾンビかよ……」


 不本意なれども、異世界転生をしてしまった灘井青年は、早速体験した異世界的能力に、もしや凄い存在になって転生したのでは? と、期待して自分自身を鑑定したのだが、その期待を思い切り外されて心の底からずっこけた。


「参ったなぁ、よりにもよってゾンビかよ……」


 ゾンビと言えば、スライム、ゴブリンに並ぶ、三大弱小ザコモンスターとして、駆け出し冒険者の刀のサビとなる存在である。灘井青年は頭を抱えた。


「オーケー、オーケー、少し落ち着こう」


 ゾンビ……、ゾンビね、正直もう少しマシな存在になりたかったが、なってしまった以上仕方ない。考えようによっちゃ、一回死んでる訳だから、異世界転生自体がゾンビになった様なもんだ。オーケーオーケー、一応『人間』の形をしているんだし、スライムやゴブリンに転生するよかよっぽどマシだ。


 そう腹をくくった灘井青年は、もう一度自分自身を鑑定する。


「賢者の卵、冒険者ダナーの骸か……」


 灘井青年はそう呟くと、考え込んだ。


 これは『憑依型』の異世界転生だな、ということは……


「この身体の前の持ち主、冒険者ダナーの記憶を取り出す事は出来ないかな? 」


 それが出来れば、今後の行動指標が立てやすい、しかし……


「脳死状態だよな、やっぱり」


 ダナーの記憶を辿る事が出来なかった灘井青年は、そう結論付けると次の方策を考るうちに、ふと気がつく。


「待てよ、記憶をたどれなくても、ひょっとしたら? 」


 鑑定能力というお約束スキルが有るのだから、あの定番も有るかも知れない。


「ステイタスの確認は出来ないか? 」


 そう考えると、視界の中にステイタスが浮かび上がった。


「やりぃ」


 ニンマリとしながら、灘井青年はステイタスの確認を始めた。



 名前:無し

 種族:ゾンビ

 HP:17 〔666〕

 MP:2369 〔100O0〕

 STR:17 〔256〕

 DEX:17 〔993〕

 VIT:17 〔228〕

 AGI:17 〔867〕

 INT:279 〔4729〕

 MND:17 〔4872〕


「墓に刻む数字ね……」


 予想はしていたが、こりゃまた不吉と言うか、お約束の数字が並んでるね、ゾンビだから仕方ないか……、しかしこの数字から察するにこの世界、或いはこの地域はイタリアみたいな文化気質を持っているのかな? で、スキルは何が有るのかな。


 灘井青年はスキル欄に目を移した。


 魔法適正:無属性 土属性 木属性 闇属性 〔全属性〕

 魔法工学:ー 〔錬金術〕 〔魔方陣制作〕 〔魔道具制作〕

 魔術補正:ー 〔高速詠唱〕〔無詠唱〕 〔高速思考〕

 体術:ー 〔徒手格闘術〕 〔短剣術〕 〔短杖術〕


 特殊スキル:明鏡止水 時空干渉 〔■■■■アクセス権〕

 固有スキル:賢者の種 勇者の種


 ダナーさんは、チートな人だったんだ……


 ふむふむと頷きながら、灘井青年は備考欄に目を移す。


 状態異常:死亡 腐敗【進行度6】


 そりゃそうだ、ゾンビだもん。しかし、腐敗の進行が進むとどうなるんだ? それにステイタスの数値、後ろの〔〕の数字はなんだろう? 偽装でもしてるのかな?


 思わず吹き出した灘井青年だが、ここまで見て湧いた疑問点に頭をひねる。まあゾンビなんだし、気長に検証してみるさ。〔〕といえば、スキルにも囲まれたスキルが有ったな……、それから■■■■アクセス権、■■■■には何が伏せられているんだ? まあ、これも気長に……


 そう思った瞬間、灘井青年は疑問点の大部分を知ることになる。


「おおう」


 灘井青年の頭の中に、不意に電子音声がアナウンスされた。


 腐敗進行度、6から7に進行しました、それにより、能力の変動が起こります。


 名前:無し

 種族:ゾンビ

 HP:13 〔666〕

 MP:2300 〔100O0〕

 STR:13 〔256〕

 DEX:13 〔993〕

 VIT:13 〔228〕

 AGI:13 〔867〕

 INT:256 〔4729〕

 MND:13 〔4872〕


 魔法適正:無属性 土属性 闇属性 〔全属性〕

 魔法工学:ー 〔錬金術〕 〔魔方陣制作〕 〔魔道具制作〕

 魔術補正:ー 〔高速詠唱〕〔無詠唱〕 〔高速思考〕

 体術:ー 〔徒手格闘術〕 〔短剣術〕 〔短杖術〕


 特殊スキル:明鏡止水 時空干渉 〔■■■■アクセス権〕

 固有スキル:賢者の種 勇者の種



 げげっ!! パラメーター下がりやがった!! という事は、〔〕で囲まれているのは、生前のダナーさんのステイタスなんだ。腐敗進行度が進んで、今の状態ね。という事は、腐敗が進行すればするほど弱体化していく、そういう理解で間違いないな。ヤバい、尻カッチンじゃん!! 今、何が必要!? 蘇生? 防腐?


「AED、どっかに無いかな……」


 悠長に構えていた自分の見通しの間違いに気づいた灘井青年は、新たな事実の発覚にやや慌てるも直ぐに平静を取り戻し、ジョークを口にしたところでもう一つの自分自身の異変に気がついた。


 こんな事態なのに、よく落ち着いていられるな、俺。ひょっとして、これはスキル『明鏡止水』のお陰なのかな、以前の俺ならパニックになっているぞ、きっと。さて、腐敗が進むとどうなるんだ? 恐らく良くてスケルトン、悪くてゴーストか? 最悪完全死亡として魂ごと消滅という所だろう。消滅は論外だが、スケルトンやゴーストも、人間の身体を取り戻すには今より困難になるだろう。


 そう結論に達した灘井青年は、直近の行動指標を次の様に定めるのだった。


 所持スキルからして、この世界は所謂剣と魔法の、ファンタジーの世界に間違いない。この世界で生き抜く為に何とかしてこの身体の腐敗進行度を止め、そして蘇生方法を探しだし、この身体本来の力を手に入れなければ。



 灘井青年は拳を握りしめた。


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