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長ゼリフが二箇所あります…。
カララン…!カララン…!カララン…!
授業開始の鐘が鳴り、私はカルロスと空いていた席に隣同士で座った。 (他に空いている席が無かったという…ね)
「何と言うか…凄まじいですね」
「…ええ、本当ですわね」
前の方では、女子生徒達がキャアキャア騒いでいる。
朝早くから、あんなに騒いでいて疲れないのかな、元気だね…。
隣のカルロスは、その様子にドン引きしていた。
これじゃ、ユリアス大変だろうなー…なんて思っていた時。ユリアスが教室に入ってきた。
「きゃあっ!居らしたわっ!」
「今日も素敵〜!」
「ユリアス先生ー!!」
入学式からまだ二日目だと言うのに大人気だな…。
騒ぐ女子生徒達を何とか落ち着かせたユリアスは、簡単に自己紹介をし始めた…その途端に。
「あのっ!ユリアス先生は、どのような女性がお好きですかっ?」
「年下も恋愛対象に入りますか〜!?」
「お休みの日は何をされているのですかー?」
キャアキャア騒ぎながら次から次へと質問攻めにする女子達。……うん、ほんっとに煩いね。もう、肉食女子とでも呼ぼうか。
「静かに。今は授業中だ。授業に関係ない質問を受け付ける気はない」
ユリアスが冷たく言い切るが…
「やだ〜!クールで素敵ねっ!」
「やっぱり格好良いですわ!」
「本当に。見惚れてしまいます!」
こう言ってはなんだけど…あまり、効果は無かったようだ。
授業に入ったのは、授業開始から十五分が過ぎてからだった。
今日は傷薬になる薬草についての授業をするらしい。
大きく描かれた薬草の絵と説明が書かれた、黒板半分位の大きな長方形の紙を黒板に貼り付け、名称から、薬になる部分の説明、効能について。そして、薬の作り方や生息地についてユリアスが説明と共に薬草を配布して、それを模写した紙を提出…と、なった。
模写用の紙も授業参加者に渡り、模写が始まった教室内は、静かな空間となった………と、言いたいところだが。
模写を適当に済ませたのか、肉食女子達が再び騒ぎ出した。
ねぇ、バカなの?あんた達はバカなの??ユリアスが好きなら普通は真面目に授業を受けるよね?他の真面目に授業を受けに来た生徒や私達に対する妨害でもしているの?これ、ユリアスも授業妨害されてるからね?
…と。言ってやりたい…が。我慢だ、我慢。
「先生〜、終わりましたわ!」
「私達、早くに描き終えてしまいましたから時間が余ってしまいましたわ!」
「授業終了まで、私達とお話し致しましょう!」
………我慢、だ。
「書き終わったのなら、教卓上に、提出して席に戻るか、教室から退出して貰って構わない」
教卓を指でトントンと叩き、女子生徒達には目もくれず。ユリアスは開いていたテキストに視線を向けている。
「えっ、そんなぁ!」
「私達、ユリアス先生とお話したくて早く終わらせましたのよ?」
「そうですわ、ユリアス先生!私達、先生に会う為に薬草学に来ましたの!」
……。あれ?我慢って何?…それって美味しいの?
「……な」
「え?グリンベルグ嬢、今何か言いました?」
はい。うるさいな、と呟いておりました。
カルロスの質問には答えず『申し訳ありません、ルウェイン様。こちらを少しの間、お願い致します』と、私が使っていた机上から、模写中だった紙をカルロスの机上に乗せた後。
バンッ!!!バンッ!!
質の良い木で出来た机の上を両手で思い切り叩いた。……地味に手が痛い。けれど、今はそんな事はいい。
「煩いですわ!いい加減にして下さいませんこと!?薬草学を学びたくて、こちらに来ている他の生徒や、ルチアーニ先生の迷惑になっている事に、気づいていらっしゃらないのですか!?…先程から黙って聞いていれば、何です?先生の好み?休日は何をしている?早く描き終えて暇?…そんな事、知った事ではありません!知りたければ授業時間外にお聞き下さい!……あと、先生に会いたくて来た、と。おっしゃいましたわね?貴女達は薬草学を学びたくて、この教室に来たのでは無いのですか?もしも。授業に興味が無いのでしたら、退出されて授業が終わるのをお待ちになられたら如何かしら?」
肉食女子三人組は、私の方を睨みつけてきたが…注意をしたのが私だと解ると、視線を逸らして気まずそうにしていた。
…グリンベルグ家は侯爵家だが、公爵位に近い位の権力も財力もある家だ。
なので、うちと同等。もしくは公爵家、王族に連なる身分の家柄でない限りは、下手に刃向かえない筈だ。
…まあ、身分に頼りたくはないんだけど。使えるうちは有難く使わせて貰う事にしよう。
だんまりを決め込む肉食女子達に『それで?この後は、どうするおつもりかしら?』(…あれ?何か今の私って、悪役令嬢みたい?…いやいや、真っ当な事を言っているよね!?)と言葉を掛けると…
「…申し訳、ございません」
「…席に、戻りますわ」
「…煩くしてしまい、失礼しました」
そう言いながら。三人組は悔しそうな顔で教卓前から、席へと戻り始めた。
(…や、やってしまったー!!…後で報復とかされないかなー、ヤダなー。怖いよー!)
…なんて、思っていたら。
思わぬところからフォロー?が、入った。
「少しいいですか?貴女達は、ご存知ですか?今、薬草を模写された紙が、薬草学を受ける事が出来る生徒の選抜材料になるという事を。一年生の薬草学の選択授業は週に二日。火の日と、木の日。それぞれ各二時間のみ。今日は体験、見学ですから三時間ほど開かれていますが…来週からは一日に二時間。人数は二クラス分。
今日の一時間目で、この人数…一クラス分ですね。そして、次の時間以降、薬草学選択希望の生徒が居ないとは限りませんよね?グリンベルグ嬢は他の生徒だけでなく、早々と描き終えてしまった貴女方の事を、選抜から外されてしまうのではないかと心配されて、強く注意されたのです。そうですよね?」
ん?私は模写が選抜材料とか知らなかったよ。しかも、あまりの煩さと身勝手っぷりにキレただけだったんだけど…。
「え、ええ。ルウェイン様の仰る通りですわ。つい、キツイ言葉を向けてしまいましたわ、皆さん。ごめんなさいね」
カルロスの言葉に有難く乗っておく事にした。(報復されたら嫌だし、ご令嬢方と闘っている時間も勿体無いし…)
「…そうでしたの。そうとは知らず…こちらこそ、本当に申し訳ありませんでした」
「…グリンベルグ様。ご心配頂き、感謝致しますわ」
「ルウェイン様も、ありがとうございます」
肉食女子三人組は、揃ってペコリと頭を下げた。チョロ…純粋な人達で良かった、良かった。
「い、いいえ。解って頂けたのでしたら良いのですわ。お互い頑張りましょう」
「ふふっ、誤解も解けたようで何よりです。共に薬草学の授業が受けられると良いですね」
そして、ニコリと微笑むカルロスを見た肉食女子達が皆、頬を染めた後。
提出した筈の紙を再び教卓まで取りに行った三人組は、黙々と。そして、貸しだされていた黒のパステルをガリガリと紙の上に走らせ、模写をやり直していた…。
これは…肉食女子三人組が、カルロス派に宗旨替えするだろう事が容易に想像出来た。(いや、もうカルロス派かも?)
――ここからは余談になるのだけど。
一時的に授業を中断させてしまった事を、授業後に真面目に模写をしていた生徒達に謝ったところ…
「いいえ、お気になさらないで下さい。グリンベルグ様のお言葉、聞いていてスッキリしましたわ!」
「薬草の事を勉強したくて、この授業を希望したので注意して頂き助かりました」
…など、好意的な反応が返ってきたので、ホッとしていた。
ちなみに。ユリアスからは放課後、薬草学・魔法薬学教員室へ、ご招待(呼び出しとも言うね!)頂いた。…ヤバイな。問題児のレッテルを貼られたか!?ぬぬぬ…それは困るよ!どうしたものか…。
やたら長ゼリフな二人と、空気化してる一人の差が…。次回は空気化してるユリアスがちゃんと喋ります(笑)




