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氷の奇公子 ~変人王子の生存術~  作者: 佐藤湊
第1章 誕生と王国の影
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幕間 ガルディシア伯爵邸にて

社交界が終わった、その夜。


王宮は静まり返っていた。


昼間の喧騒が嘘のように消え、廊下を照らす燭台の炎だけが、静かに揺れている。


その一室に、二人の男女が向かい合っていた。


「お久しぶりです。お兄様」


紫色の髪と漆黒の瞳を持つ、大柄な女性。


第二王妃、ヴィクトリア・ゲンス・デイ・アンティクイランド。


対面に座る男は、ガルディシア伯爵プロディトル・デイ・ガルディシア。


海峡と補給港、周辺都市を支配し、カヴィーレスターン・スルタン国との国交を一手に担う、この国でも屈指の大貴族である。


「ふむ。久しいな」


短い返答。


ヴィクトリアは席に腰を下ろした。


本来ならば、王妃がわざわざ足を運ぶような相手ではない。


それでも彼女はここへ来た。


それだけ、確認しなければならないことがあった。


「それで……返答は?」


プロディトルは懐から一通の封書を取り出した。


封蝋には、見慣れない紋章が刻まれている。


「皇帝陛下からだ」


ヴィクトリアの瞳が僅かに細くなる。


プロディトルは封を切り、淡々と読み上げた。


「――そなたらが『灼熱竜の僕』へ戻ることを歓迎する。次の計画、第一段階通りに進めよ」


「……第一段階」


ヴィクトリアが呟く。


「何をするのです?」


プロディトルは手紙から目を離した。


そして、何の感情もない声で告げる。


「第一王子のお披露目の際、王弟殿下の子らを使い、家督継承争いを起こせ」


ヴィクトリアは黙って聞いていた。


「それと同時に――」


一拍。


プロディトルの口元が、僅かに歪んだ。


「第一王妃を暗殺せよ」

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