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チンピラだった俺が、たった27人で天下を取ることになった  作者: 越後⭐︎ドラゴン
第5章 西征編

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55話 成都の残虐

 綿竹を落し成都に着いた。益州の州都である。巨大な城であった。


 レイセキも到着していた。シュクユウは荊州軍がシバチョウの軍より精強だと感じ、無理に迎撃せず、軍を温存して成都まで引き込むことにしたようであった。


 成都の前に反乱軍が展開している。その数は8万まで膨れていた。漢人の部隊を前に出しており、南蛮兵はその後ろに控えた。明らかに漢人を先に戦わせるつもりであった。


 俺とレイセキは合わせて8万6千の軍である。総大将はレイセキである。俺の1万6千は右翼に配置された。左翼にはレイセキ配下の将軍であるオウホウが3万で布陣する。中央はレイセキの4万だ。


「綿竹をあっさり抜いたそうですな。コハンはどうでしたか」


「どうも何も......レイセキ殿も人が悪い」


 俺がそう言うとレイセキは愉快そうに笑った。俺が思った通り、コハンを押し付けたのだ。


「それよりあの敵をどうみますか」


 反乱軍は4万の漢人の兵を前面に出している。俺はあの漢人たちが寝返るなら勝負はすぐに付くと思ってそう言った。


「いや......あの者たちは城の中に人質を取られているのでしょう。寝返りは期待できない」


 俺は顔を曇らせた。人質を取り無理やり戦わせる。そのやり方を嫌悪した。


「リュウユウ殿は正直なお方だ。その正直さが人を惹きつけるのでしょう」


「え?」


「いや、今の言葉は忘れてください。そろそろ始まります。配置についてください」


 俺はレイセキの言ったことを反芻した。人を惹きつける。確かに転生前とは性格も変わった。スロット三昧だった頃は心が荒んでいて人に興味が無かった。だが、改めてはっきり言われると、変わった事を自覚していなかった自分に気が付いた。


「どうした?何を考え事している」


「ボクシ。俺は魅力的か」


「うっ......お前何を気持ち悪いこと言ってるんだ。早く配置に付け」


 ボクシは俺の言葉を勘違いしたようだ。俺自身もボーイズラブに興味があるわけでは無い。


「ふふふ。将軍はとても魅力的ですよ」


 コハンが横に立った。


「こんなところで脱ぐなよ」


「ご心配なく。脱ぐのは今夜、将軍の軍営の中にしますわ」


 俺は周囲を見渡した。アイは居なかった。こんな会話を聞かれたら殺されかねない。コハンが配置につく。俺はコハンの背中に早くあっちに行けと念を送った。



「敵の右翼が少ないな。何かの作戦か」


 シュクユウは東晋軍の配置が均等でないのを見て怪しんだ。


「リュウユウという者が右翼の将のようです。綿竹を抜いてきた北府の軍のようです」


「リュウユウ......北府......」


 夏のカクレンを撃退した男として名を聞いていた。レイセキも只者ではなさそうだが、リュウユウも強敵に感じた。


「油断するな。はじめよ」


 シュクユウが合図を送る。攻撃の太鼓が打たれる。漢人の4万の軍が一斉に前進を始めた。



「来るぞ。迎え撃て」


 俺の方には1万の軍が攻めよせてきた。敵も3つに分かれ、中央と左翼も同時に攻撃してきた。カンシュクの弓隊が一斉に矢を放った。敵は盾を構え前進してくる。カンシュクが魔道具の弓を引く。その矢は水龍を纏って飛び、指揮官の頭を貫いた。


 敵はその様子を見て怯んだ。だが、下がろうとする兵を後ろから南蛮の兵が来て督戦する。


「ユウ......あれを見ろ」


 成都の城壁に人影が見えた。兵ではなかった。漢人の女子供であった。漢人の兵たちの家族であろう。人質だ。彼らが怯んで後退しようとすると、人質は1人ずつ城壁から落とされた。


「酷いことをする......」


「それだけ漢人に対する恨みがあるということだ」


 漢人の兵たちは必死であった。少しでも下がると人質を殺される。指揮官が撃ち抜かれようと、仲間が倒れようと屍を乗り越え前進してきた。


「槍を構えよ」


 歩兵隊が槍を突き出した。衝突する。ドウサイが地面を突くと、敵は足場を崩されよろめく。そこを槍衾が集中した。敵は懸命に戦っている。だが、俺の軍も、レイセキの軍も揺るがない。益州の兵たちとは練度が違うのだ。戦乱の時代ではあるが、益州は中華の端で激闘した経験が少ないのだ。その差が如実に出た。


「全然、崩せないではないか。やる気が足りないのではないか」


 シュクユウは何やら指示を送ると、前線に伝令が走った。


「あれを決行せよ!やらないと人質の命はないぞ!」


 漢人の兵たちの顔に緊張が走った。


「何か仕掛けて来るぞ!各隊警戒せよ!」


 敵兵がしがみ付いてくる。


「なんだこいつら!離れろ!」


 歩兵たちは敵を振りほどこうともがいていた。すると敵が体ごと爆発した。


「これは!?自爆したのか!?」


 俺は驚愕した。ここまでして戦う意味が分からなかった。このような事を強要する南蛮を許せないと感じた。


「あれは、おそらくモウシュウシの屁と同じ火魔法の応用だ」


「ボクシ、説明はいい。どうする!?」


 前線が崩れていく。あちこちで爆発が起き混乱していた。それはレイセキの軍の方でも起きていた。


「歩兵をいったん下げる!距離を取れ!」


 鐘が鳴り、ドウサイたちの歩兵が後退を始めた。敵と距離を取る。そこをカンシュクの弓隊が再び矢を放つ。


「確実に急所を狙い一撃で仕留めよ!近づけさせるな!」


 ボクシも前に出て火球を放つ。敵兵は近づく前に引火し、爆発した。それが更に誘爆し、敵兵は次々と吹き飛んでいった。


「なんて戦いだ......」


 自爆攻撃が対処されていると見たシュクユウは退却の鐘を鳴らした。攻撃はようやく止んだ。戦場は辺り一面に肉片が飛び散り、まさしく地獄絵図であった。遠距離攻撃で対処したとはいえ、完璧に抑え込めたわけではない。相当な被害が出ていた。


「敵は2万は死んだ。こちらも2千の被害が出ている」


 レイセキの方はもっと被害が大きく、8千は犠牲者が出たという。数の上では敵の方が兵を失っている。だが、その決死の戦い方に衝撃を受け、兵たちの心を抉っていた。明らかに士気が落ちていた。


 シュクユウは屍累々の光景に目を背けた。城壁から落とされた人質も数百いる。成都の城内は漢人の兵たちや人質たちの咽び声であふれていた。


 漢人に対する恨みはある。だが、ここまでする気はシュクユウは考えてなかった。将軍として戦果を挙げた。ショウジュウを殺した。それで終わりのはずであった。だが、南蛮の長老たちはシュクユウを推戴し政権を立てた。今日の戦もシュクユウが命令を下したが、大元は長老たちの考えた作戦であった。


 シュクユウは目を閉じてうずくまり耳を塞いだ。いつまでも咽び声が聞こえていた。



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