初めての彼女
その少女の家は坂の上にあり、こぢんまりとした洋風の家だった。
この森林の多い田舎の村にはとてもマッチしていて、おしゃれなお宅だ。
少なくとも僕の家よりかは断然いいだろう。
庭には、リードをつけた大型犬がスヤスヤと寝ている。
本当に大きな犬だ。いびきすらも大きい。
「はやく来てね」
ドアを開けて少女はニッコリと笑った。
「じゃないと、大変なことに・・・・・・」
「えっ?」
僕は「えっ?」と呟いた後、「大変な事」というのが何なのかを悟った。
黒い獰猛そうな大型犬が僕ににじりよって来たのだ!
「うひゃああああああああああああああっ!」
僕は玄関までかけぬけた。 それにつられて犬も追ってくる!
「ワンワンワンワン!!!」
腰が抜けそう・・・。
しかし時すでに遅し、大型犬は僕を突き飛ばしてペロペロ舐め始めたのだ!ってあれ、
「ほーらアインシュタイン、人をペロペロ舐めないの」
少女が犬と戯れている。
犬は本当に幸せそうだ。
あれれれれれ…?
「そういう事なら早目に言ってくださいよ」
「いやあ、ごめんなさいね。あの子は小型犬として飼われてたんだけど、
スクスクとあそこまで大きく成長しちゃってね それで性格が今でも小型犬のままってわけ」
「伝え忘れたけど私は森和美。君と同い年」
「知っての通り僕は宮部麻耶。よろしく」
「こちらこそ」同い年なのか。しかし僕より確実に大人びている。
性格も落ち着いていて大人な人だなあ。
僕もあんな人になりたいなぁ・・・。
でもこの平日夕方の時間帯に両親がいないって言うことは、両親はお仕事をしているのだろうか。
「お母さんとお父さんは?」
「今仕事中なの」当たった。共働きなのか。
「そちらは?」
「ん?僕の両親について?」
「うん」
「まあ、僕も、共働きかな・・・」
「でも一人でここに引越ししてきたから、いつもいないよ」
「一人で引越しかぁ、到底私にはできないなぁ」
「まぁでもお父さんが帰ってくるのも週一くらいだったから、いつも一人だったし慣れてるんだ」
「じゃあ私がいつでもあなたのお宅に訪問してもいいってことね?」
「そうだね。いつでも来てよ。待ってるよ」
僕の家に来たいって言ってくれた初めての人だ。
僕に興味を持ってくれた。それなら明日にでも来てくれればいいのに。