ようこそ、社木へ
「そういえばこの町についてしらないよね?」
「うん、今初めて来たばっかり」
「よし、教えてあげたろー!」
「社木地区はね、面白い地区なんだよ。
あたり一面山で囲まれていて、唯一のトンネルが命綱なんだよ!」
その後にまるで諜報機関のスパイに指令をするように、
森さんはたくさんの情報を教えてくれた。
地元っ子しか知らないような秘密基地や、
生活用品や食品が安く買える場所、そして学校の場所。
伝え終わったのは、夜の7時を越えていたと思う。
窓に目をやると、もう山も山の形を保っていなかった。
全部が全部理解できたわけじゃないけど、大体の位置は頭に叩き込むことができた。
「それじゃ、これで失礼しようかな」
「うん」
玄関先で彼女は手を振ってくれた。
玄関先で外の空気を吸い感動するとともに、
山がもう完全に見えなくなってしまったことを知った。
「すごい、もう山が見えなくなっちゃった・・・・・・」
「星がもうすぐ見られるよ」
「本当?」
「ほら、上を見て」
上を見る。
「うわぁ・・・・・・、きれい」
満天の星空を見とれていると、彼女は僕の耳に、まるでたくさんの星の瞬きを邪魔しないように、こっそりと、でもしっかりとささやいた。
「ようこそ、社木へ」
振り返ると、彼女は少し離れたところで、ニコニコと僕を見ていた。
やはり笑顔というものはいいなぁ。
「ありがとう」
「じゃあ、また学校で会いましょう」
家に着いたら、突如として眠気に襲われ、そのまま地面で寝てしまった。
緊張していたんだろうな・・・、と眠りに落ちる前にふと思った。




