2章22話 第2次ソロモン海戦(中)
「タリホー!見つけたぞ!敵の空母だ!!」
第二機動部隊が発見されたのはガダルカナル島空襲第二次攻撃隊収容後であった。
「敵は軽空母1、水上機母艦1を中核とした輪形陣。周辺に戦艦2巡洋艦5、駆逐艦多数を認む。速力18ノット、味方からの距離200海里(370キロ)。接触を続ける。」
「これは恐らく陽動部隊だ。主力部隊がいるはずだよ。」
スプルーアンスが静かに分析した。彼女は皮膚病により入院中のハルゼーにかわり、ハルゼー本人から抜擢された指揮官だ。
金色の髪を揺らし、まるで悪魔のように真っ赤な眼をしている。
身長は184センチと男に負けない高さである。それでいて体重は50キロと、軽い方である。
「フレッチャーはなんて言ってるの?」
部下が答えた。
「フレッチャー中将はいまだ偵察機からの報告はなしと送ってきています。ただ、報告無しというよりは途絶えたという方が正しいかもしれないとの事です。」
「それはどういうこと?」
「偵察機撃墜された可能性が高いのです。」
「それだ!!」
スプルーアンスは確信に満ちた顔で言い放った。
「撃墜された周辺に敵の主力がいるはずだ!どのへんだ!?」
「一番機がマライタ島北東67マイル地点、四番機が同島北70マイル地点です。」
「マライタ島の太平洋側、それも島から遠く見積もっても150マイル(241キロ)以内にはいる可能性が高い。」
「偵察を出しますか?」
「これ以上SBDを出したくない。TBF(雷撃機)を3機出してくれ。」
かくして、スプルーアンスからはTBFが3機出撃した。スプルーアンスの読みは、半ばあたっていたのだ。
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「今のところ報告はされていないようね。」
「飛鷹の紫電改がこっちに来てくれたおかげです。もっとも、はぐれたことが原因ですが。」
「そうだね。」
南雲と草鹿は苦笑しながら偵察機を撃墜してくれている4機の紫電改を艦橋から見下ろした。
紫電改。三菱重工製の水上機紫電の改良型で、局地戦闘機紫電改を艦載機型に改造したものだ。
紫電の運用成績が非常に優れていたため局地戦闘機に改造。
それを艦載機にできないだろうかと改造したのが紫電改艦載機型である。
紫電改は零戦を圧倒的に凌ぐ防御力とスピード、そして20ミリ機銃4門という重武装である。SBDでもこの火力の前には後部座席の12.7ミリ機銃も歯が立たず叩き落とされた。
初実戦ということもあり、撃墜するまでに少し手間取ったが、被弾数が多かった笠山大尉機でもなんなく着艦できたほどだ。
その被弾数は零戦ならすぐ撃墜されていただろう。
「伊19潜から報告です。敵機動部隊発見、中央には
空母1隻、ワスプ型を認める。周辺には巡洋艦2隻、駆逐艦数隻。」
「丁度いいじゃないか。雷撃を頼め。」
「了解しました。」
南雲は、この潜水艦が攻撃を成功させてくれたら非常に助かる思いでいた。
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「それにしてもきつい。」
スプルーアンスは第17任務部隊(エンタープライズ基幹)を指揮していた。
ワスプの指揮をフレッチャーに頼んだが、空襲部隊にしては戦力が薄いと考え、フレッチャーのワスプを中心とした第16任務部隊を即席で編成したのだ。つまり、伊19に発見されたのはフレッチャーの部隊になる。
「このソロモン海にいるのはワスプとエンタープラ
イズ。ただでさえ空母数が負けているのに2手にわけるなんて……仕方のない事ではあるが…。」
ワスプはどちらかといえば中型空母。搭載機は90機を誇るものの、戦力としてはやはりいまいちな面があった。
「リー中将が頼みだな。ジャップの空母を叩いてくれると嬉しいんだが…。」
そんな時だった。
「ジャップの主力部隊を発見しました!!空母2、軽空母1を中心とする輪形陣!周辺に戦艦2、巡洋艦6、駆逐艦多数!速力30ノット、味方からの距離248マイル!」
「見つけたか!!」
やはりいた。敵は空母を惜しみなく出してきているのだ。つまり主力空母は少なくとも3隻はいる(赤城、加賀、飛龍がいないだけで、実際は5隻)。これを叩けば天秤は平行に近づくはずだ。
「すぐに攻撃隊を編成し出撃させろ!フレッチャーにも連絡だ!」
スプルーアンスは興奮を覚えていた。いよいよジャップ共に一泡吹かせられる…!!
「スプルーアンスから主力部隊発見の報告が入った。すぐに攻撃隊を編成して!」
ワスプは慌ただしくなった。飛行甲板上にはすぐ出撃できるように置いておくのがアメリカのやり方だ。
日本の空母は全機が一斉に発艦できるシステムがないため、その分ではアメリカに劣っていた。
ワスプはすぐにF4F18、SBD20、TBF12の計50機が出撃体制に入った。
フレッチャーは珊瑚海やミッドウェー、さらにはヴァンデクリフト達の護衛を放棄したつけを精算する時が来たのだと喜び、興奮を覚えていた。
人間とはこんな時にこそ、最悪の言葉を聞くと思考が停止するのだ。
「魚雷接近!!間に合わない!!!」
それはあまりにも、非情な叫び声だった。
4本の魚雷はワスプの横っ腹に突き刺さり炸裂、巨大な水柱を作り上げた。
飛行甲板上の艦載機が横転し、その衝撃で爆弾が炸裂した。
だるま落としのように次々と誘爆し、搭乗員の一部はその爆発に飲み込まれた。日本の魚雷は恐ろしいほどの威力を持ち合わせ、たちまちワスプは傾き始めた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
フレッチャーは悲鳴をあげた。これまでレキシントン、ホーネットを自分の失態で失ってきた。そして今、ワスプが4本の魚雷を受け傾きつつある。
「中将!!早くご避難を!横にミネアポリスが来ています!そこに乗艦してください!!」
フレッチャーは言われるがままにワスプの艦橋から降りた。
飛行甲板上では消火活動をするも、誘爆による火災が激しくもはや無意味であった。フレッチャーが海上のボートに乗った時には、ワスプは静かに海に姿を隠しつつあった。
そして避雷から30分後、その姿を完全に海中に隠した。潜水艦による、最初で最後の空母撃沈記録である。しかし、伊19潜が発射した魚雷は6本である。残りの2本はどこに行ったのだろうか?
「そうか、ジャップの機動部隊を見つけたのか!」
リー中将は性格がとても明るく、挨拶を欠かさずするという。
それが例え部下であっても、遠かろうが近かろうが構わず挨拶をする。そんな気さくな性格が部下に好評で、「赤さびW」の名で親しまれていた。
「是非イギリスが借用を申し込んだという高速戦艦と撃ち合ってみたいわ!!」
リー中将はアメリカ人にしては珍しい167センチと低身長で、それでも目立つ大きな胸を有していた。海兵の間ではあのニミッツといい勝負だという。
「このままスプルーアンスの護衛を行い、可能ならばブインを砲撃か。実に面白いじゃないか。」
リー中将には護衛ともうひとつ、日本軍のようにブインを艦砲射撃するという作戦があった。もっとも、戦場では何が起こるのかがわからない。
油断の心は持たなかった。
そんな時だった。
ズズーン!!!
戦艦ノースカロライナの艦首に巨大な水柱が2本立ち上がった。
ノースカロライナは瞬時に艦首が千切れ、浸水が発生。艦首方向に12度沈むという大損害を受けた。この被害によってノースカロライナは12ノットしか出なくなってしまった。
「潜水艦の雷撃か!?」
さすがのリー中将も意表をつかれた。対潜警戒は行っていたが、まさかやられるとは……。
「あれがジャップの魚雷…。2本で戦艦を戦線離脱させるとは……。」
リー中将は言葉も出なかった。話には聞いていたが、こんなにも威力が高いとは想像もしていなかった。
ノースカロライナは駆逐艦4隻に守られながらオーストラリア、ポートダーウィンに向かって退避を始めた。
無論、リー中将はこれが1万5000メートルも前に離れたところからの雷撃なんて知るはずがなかった。
「ワスプが!?」
ワスプ撃沈、更にはノースカロライナの戦線離脱の報告を受け取るとさすがのスプルーアンスも顔面蒼白となり椅子に座り込んだ。
「ただでさえ空母がないのに……。」
スプルーアンスはこの世の地獄を味わった。しかし、地獄は迫っている途中であった。
中、Fin
3話同時更新は初めてなので、これを書いているのは予定を大幅に遅れた21時13分です。本当にすいません!!
21時をすぎてしまったため、このお話は22時に更新します。許してください!
ソロモン海戦の中編まで載せましたが、すごく中途半端になっている事に気づいたときは遅かった……ひえぇぇえ
まだまだ頑張っていく次第です!
誤字が無いように努めてますが、万が一あった場合は遠慮無く「間違えてるよアホ」と罵ってください。Mではありません。
感想もおまちしてます!
次回は9日の21時に更新します。お楽しみに!




