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精霊のお話

 私の名前はリルリレリットフェルゼイル・リィレシュレイムクェンスフィード・ジィリスレイ。こんな立派な名前があるのに、ロスってばリリィなんて省略して呼ぶのよ。失礼しちゃうわ。

 しかも私は、今代の勇者の守護を命じられた、選ばれし精霊なのよ。それなのにあの子ったら、私を虫でも追い払うかのように!!どうしてあんな失礼な子が勇者なの!!



 そもそも勇者というのは只の通り名の様なもので、正式に言えば、「世界の調停を司る者」なの。世界の歪みを一身に受けるのが「魔王」であるなら、それを正すのが勇者の仕事。

 世界に怨嗟のような負の感情が飽和して「歪み」が生じた時、それを正す役目を負う者が生まれる。

 通常は、その「歪み」を核に生まれる「世界の調停を司る者」――つまり魔王を倒す事で歪みを正す事ができるの。けれど、歪みのぶつかりあう戦争があった時や、歪みが原因で起こる天災等を食い止める事で一度溜まり始めた歪みを正す事も出来る。

 そう言った事例の積み重ねが人間の史実にも残っているみたいだしね。

 兎に角、「勇者」とは世界を正常に戻す重要な存在な訳。

 当然それだけの大きな力を宿して生まれる事となるわ。そうなると、その力を得んと、様々なものから狙われる事となる。その為に、私達守護精霊が居るのよ。

 

 先ず、生まれた勇者を外敵から守る為に守護精霊が「加護」を授けるの。その時に、大き過ぎる力に器が壊れてしまわぬよう、勇者の力をすこしだけ抑えたりもするのよ。

 そして、その大いなる力に押しつぶされないだけの器が出来上がったら、勇者の力を少しずつ開放して、本来の力を取り戻させるの。

 そうやって勇者の補佐をするのが守護精霊の役目よ。

 私に勇者の守護という名誉ある役目を任せて頂けると分かった時、私本当に嬉しかったわ。何があっても勇者を護り抜くと、立派な勇者になれるように全力で支えようと心に誓ったわ。


 ――なのに、現実は……


「ロスっ!!」

「おお~!今日も美味そうだな~大根!!」

「ロスってば!!」

「なんていい色艶なんだトマト!!齧り付きたいくらいだ!」

「聴いてるのっ?ロスっ!!」

「何だよリリィ。仕事の邪魔すんなよ」

「だから私の名前はリルリレリットフェルゼイル・リィレシュ……」

「長いからリリィでいいだろ」

「そう言う問題じゃなぁ~い!!」

 いっっっっっっつもこの調子なんだからっ!!

 剣を片手に様々な魔法を駆使して魔王と戦う筈の勇者が、ど~~~~~っして鍬を片手に様々な肥料を駆使して農業なんてやってるのよ!!


 ロスだってちゃんと実力はあるのに。

 昨日倒したウルヴレインという魔物だって、王都の精鋭騎士達が5人がかりで倒すほどの強敵なのに、ロスったら一人で2匹まとめて倒しちゃうんだもの。

 ――そもそも、ウルヴレインを「わんころ」呼ばわりするこの村人だってぜ~~~~~ったいに変!!

 

「今日も異常なしっ!!立派に育てよ~」

「魔王が生まれた時点で異常あるんだってば!!いいから早く旅立ちなさいよ!!」



 ……ああ……。私の苦労と心労はまだまだ続くのね……。


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