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勇者様のお話

 ――勇者、それは古より連綿と受け継がれてきた、英雄の称号である。



 大地を割る程の力、無尽蔵の魔力、そして精霊の祝福――


 それら優れた能力を生まれながらに宿し、世界の安寧の為に戦う。


 それが「勇者」である。



 それは時に数十年と続く戦乱を終わらせたり、、邪悪なる魔王を打ち倒したり。


 時代によって功績は様々であるが、それでも後世に残る偉業を成してきたのは間違いない。



 武に優れ、智に優れ、精霊にも愛された、神に選ばれし者――



 「勇者」とは、常に人々の希望の象徴であった。





 ――その勇者が、俺。



 ほんっと、信じらんねぇ。人の人生勝手に決めんなよな。

 俺は平和を愛する由緒正しい田舎者だぜ?戦争だなんだとそんな野蛮な事はしねーっつの。

 ――まぁ、王都の人間が「勇者」を探してるって知ったのが最近だってのもあるけど、知ってても絶対に名乗り出たりなんてしなかったろうし。

 それに実際未だに名乗り出てないしな。

 大体、「魔王」が出てきたから戦えってさ、イキナリ過ぎるし、勝手だと思うだろう?

 正直、見た事もない「魔王」よりも村のロウ爺の方が恐ぇっての。

 だから俺には何の関係もないし、関係ないから出て行ったりもしない。


 

「お、ロス。大漁じゃねぇか」

「おう。森歩いてたら丁度わんころが騒いでてな」

「2匹まとめてなんてうらやましい限りだな」

『ちょっと!』

 さっき大人しくさせたわんころ2匹を担いでいたら、俺のダチが話しかけて来た。

「俺にもちょっとくらい寄こせよ」

「はぁ?何でだよ。これは全部俺のに決まってんだろ」

『ちょっと!!』

 旅になんて出たら、こんな風にダチと気易く話す事も出来なくなるしな。

『ねぇってば!!』

 まぁ、旅の途中でも気の合う仲間ってヤツが出来るのかもしれないけどさ。

『もうっ!!ロスってば!!』


「なんだようっさいな」

『いつまでこんな田舎で燻ぶっているつもりなの!?いい加減に旅立ちなさいよ!』

「なんで俺がそんな面倒なことをしなきゃなんねーの?帰る家があんのに野宿とか訳わかんねぇ」

 因みにさっきから煩いこいつは、精霊のリリィ。俺に、勇者の条件にある、精霊の加護やら祝福やらという余計なものを授けた精霊だ。

『今代の魔王が現れたのよ!世界の安定の為に戦うべきだわ!』

「だーから俺には関係ないって言ってんだろ!そのマオウとやらがウチの畑を荒らしたってならともかく」

『なんで畑なのよ!そんな小さなものより世界の為に働きなさいよ!」

「小さいとはなんだ小さいとは。確かに小さいかもしれんが、野菜の質は良いんだぞ!愛情込めて世話してんだからな」

『だから畑から離れなさいってば!!』

 離れられる訳がねぇだろ。俺の自慢の畑なんだから。

 田舎最高!平和万歳!

 俺はこれからもイチ田舎者として平凡に生きて行くぜ。


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