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セーラー服と雪女Ⅶ 新章③ 「雪子と雪村」そして本編へ  作者: サナダムシオ


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第玖話 建築の依頼

 雪村はすぐクルマで迎えに来た。

「あのメモの裏面に、僕が喋ったこと以上に、なんかゴチャゴチャたくさん書いてるなあ、と思ったんですよ。」

「やっぱり、気づいてくれたのね。さすが私の雪村君。」


「今日の動きと、今日までにやっておいて欲しい依頼が、びっしり書き込まれてましたよ。でも、なんであんなことを?」

「壁に耳あり、障子に目あり、って言うでしょ?それで、準備万端なのね?」

「ええ、それはもちろん。まかせてください。」

 馬券で儲かった雪村は、すっかり雪子の下僕である。


 雪村のマンションに戻ると、部屋では彼の父親の真田英二が待っていた。

 雪村のウインドブレーカーを羽織った雪子は、挨拶もそこそこに本題に入る。


「はじめまして。真田雪子と申します。」

「社長の真田英二です。」

「たまたま同じ苗字なのも、きっと何かのご縁でしょうね。早速商談の方を進めてよろしいかしら。」

「どうぞ、どうぞ。」


 そこで雪子は、例の土地の買取と、地上三階地下二階の双子ビルの建設を英二に依頼する。

「土地の測量図も建物の設計図もこちらにあります。」

 照和の時間軸で既に同じことをやっているので、雪村にあらかじめ用意させていた。


「手付金として…。」

 そう言いながら雪子はテーブルに札束を積む。

「…現金で5000万円あります。足りなければまた言ってください。」

 森林公園の裏手の土地はまだまだ安いはずだ。

 この金額で十分。もう一回やってるし。雪子はそう考えていた。


「わかりました。お急ぎですか?」

 普段から、大規模スーパーとの商談をしている英二は、そんな札束にこれっぽっちも驚きもせず、話を続ける。

「工期は半年以内でいいです。災害に耐えうる頑強なものを希望します。」

「了解しました。司法書士などにも話は通しておきます。」

 話はとんとん拍子に進んだ。


 英二は聡明な頭脳を持っているし、誠実な性格だ。そして、その不動産業者としての手腕は、よく知っているので信頼できる。

 何しろ他の全ての時間軸では、雪子の父親なのだから。


「ところで、あの…。」

「何かしら?」

「以前、どこかでお会いしましたっけ?」

「違います。これから、お会いするんですよ。」

「???」


 雪子はうっかり本当のことを言ってしまった。

 でも英二には通じていない。

 解るはずも無かった。


 雪子は壁の時計をチラ見する。

 もうすぐ9時だ。タイムアップだわ。

「じゃあ、よろしくお願いします。」


「父さん、僕、雪子さんを送って行くよ。」

「ああ、頼む。そうしてくれ。」

 英二は熱心にその他の書類に目を通している。

 大丈夫、準備は抜かりないはずだ。


 雪子が助手席に乗り込むと、雪村はクルマをスタートさせる。

「これから、どこに行くのかしら?」

「とりあえず大学に。ヒマな時はいつもそうしてるんだ。友だちは下宿生や寮生が多いからね。」


「私は例によって、もうすぐこの場から消えます。」

「…うん。」

「今度こそ、お別れね。」

「うん、そうだね。」

「でも、サヨナラは言わないわよ。」

「うん。」

「またね。」


 雪村が助手席を見ると、もう雪子は消えていた。

 でも、やはり、二度と会えないような感じはしなかったのだった。


挿絵(By みてみん)

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