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転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第二章毒を喰らう者
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第18話決裂の血路

ヴェイルがドラゴンの頭から飛び上がり、俺に向けて槌を振るい、俺の頬が綺麗に切れた。

ヤツはデカイにも関わらず動きは素早く、俺の攻撃も容易く避ける。

だが、前夜と違う。

あの時のような"雷の奔流"はなく、鍛え抜かれた肉体は重そうで、槌も鈍い光を放っていた。


「……弱ってるな」


俺の呟きにヴェイルは眉を動かした。


「だああッ!!!」


ヴェイルが拳を叩き込み、視界が揺れた。

その一瞬の隙に槌へ雷が宿る。


ゴンッ!!!!


体格に似合わない素早さだな…でも、以前程じゃない。


両手で槌を受け止め、衝撃が俺を伝わり地面に亀裂が入る。

そして地面は崩壊し、ヴェイルは片手を使い槌を押して俺は圧力に耐え続けた。


「おいおい、さっきまでの威勢はどうした!やはり回復してから殺し合うか?」


ヴェイルはニヤつきながら俺を押し続けるが、次第に俺が槌を押し上げ、ヴェイルの笑顔は段々と引きつっていく。


「お前、月光で強くなるんだろ?でも今は月も出てない」


「逆に聞くぞ。日が沈んでからやるか?」


「黙れッ!!」


ヴェイルが怒った瞬間、俺は槌を押し返し、ヴェイルは勢いで後ろへ下がった。


ドンッ!!!!


俺の渾身の一撃がヴェイルの顎に入り、ヴェイルの口は切れ、ヴェイルは頬を指でなぞる。

歪んだ歯を摘み、引き抜くとポイと軽く腕を振り上げ捨てた。


「それこそが我らと同じ"化け物"だ」


ヴェイルは槌を投げ、俺の肺を押し潰す。


「ぐっ!!!」


ヴェイルは槌の持ち手を掴み雷を帯びて、遥か上空へと俺を巻き込みながら飛ぶ。


「お前を気に入った!我が五帝に入り、新たな世界の……!」


上体を引いてヴェイルの鼻に思いっきり頭突きを食らわす。

ヴェイルは鼻血を出し、俺は何度も頭突きをしているとヴェイルは飛行のコントロールを失い、俺を巻き込んで墜落した。


「さっさと終わらせるぞ……ヴェイル…!」


土埃を振り払い辺りを見渡すとここは砦の中。

目の前にいたヴェイルは起き上がり、腕を横に突き出して槌を手元へ呼び出した。


「ウオォォォオ!!!!」


ヴェイルは雄叫びを上げ、全身全力で俺に向かって走り出した。


「アアアッ!!!」


俺は剣を生成し、ヴェイルに剣を振り下ろす。

激しい衝突音がして、ヴェイルは俺の攻撃を槌で受け止め防ぎ続けた。


「フンッ!!」


ヴェイルは槌を振るい、剣の刃は地面に突き刺さる。

武器を再び生成しようとした瞬間、ヴェイルはスキルを使用させまいと速度をあげて攻撃をし始めた。


ゴンッ!!!!!


重い槌の一撃が顔面にめり込み、俺はテントにぶつかり積み上げられた木箱に押し潰された。


身動きが取れねぇ……!


ヴェイルは槌に魔力を注ぎ、槌はバチバチと雷を帯びて、ヴェイルが槌を突き出した瞬間、激しい雷の奔流が目を潰すような閃光を放った。


「やはり、乱れるな……」


ヴェイルには今、月光の力がない。

その不安からか、そんな事を呟いた。

次の瞬間、刃のような風が雷を刻み、雷の奔流は一瞬にして破壊された。


「なに!?」


ヴェイルは驚いた瞬間、俺は風スキルを使い一気にヴェイルの懐へ入った。


「オラァ!!!!」


ヴェイルが槌を振り上げるとそこにはもうカイはいない。

背後へ消えるように移動した俺は生成した剣をヴェイルの背中を突き刺し、ヴェイルは一瞬固まった。


「ブフゥッ!!」


ヴェイルは口から血を吹き出し、俺は風スキルでヴェイルの全身をズタボロに切り刻む。


「勝負は決まったな」


そして跪いたヴェイルに生成した剣を心臓へ、深く突き刺した。


「ごはっ……!!」


血は剣に伝わり、俺の手から腕、肘に滴り地面に一滴落ちた。

血が流れる音が少しの間、空気を震わせる。


「俺の勝ちだ。ヴェイル」


こいつのおかげで楽に侵入できたが、後悔も罪悪感も感じない。

毒帝を殺す事によって一番鬱陶しい敵を倒せた。


ヴェイルは死にかけていてもまだ笑っている。


「それこそが……"化け物"だ」


「貪食よ……」


ヴェイルは力なく地面に倒れた。

毒帝の強力な手下を一人。

残るはアルダの師匠……稀血の研究員だ。

冷たい風の向こう。そこから、血の匂いと肉塊が降り注ぎ地面に落ちる生々しい音が耳を震わせる。


そしてもう一つ。

弦を勢いよく引っ張り、耳に張り付くようなピンッと音が微かに耳に触れた。


アルダとハンか.交戦している。

師匠か、毒帝……最悪の場合、両方と鉢合わせているかも。


「急ぐか」


俺は激しく戦闘をしている場所へと走って向かって行く。


----一向、アルダは師匠の血の攻撃によって、全身に打撲傷や切り傷を受けながら吹き飛び、かなり離れた砦の小城内にいた。


蝋燭の火は消えかけ、城の中は不気味な雰囲気に包まれている。

師匠のスキルによって武器のように殺傷できる血が浮遊し、壁際まで追い詰められたアルダは傷だらけで血塗れ。


師匠はそんなアルダに剣先を向け、今にも命を奪いそうだった。


「師匠……なんで毒帝側にいるの?」


アルダは壁に背中を擦り付けながら、まるで最後に聞くかのように言い出した。

師匠は躊躇い少し刃を引くが、またアルダの胸元に刃を突き立てた。


「俺は剣士以前に研究者だ」


「君を狙う理由は血液中には魔力があるんだ。だから魔力を使い知識があれば傷を治せる」


「だが稀血の血液には特殊な魔力が宿っている」


「それは、個人差はあるが寿命が長くなること」


「実証できるかどうかを確かめる為に私を助けたの?」


「……ああ」


アルダは師匠に涙を見せているが、何処か様子を伺っている。

着実に腕の傷を開く動作に、師匠は全く気付いていない。


「そこで稀血に興味がある毒帝と手を組んだ」


「君の血を輸血したり、飲んだり、食したり」


「私の事、ずっと研究対象だったんだ」


「すまないが…そうだ」


師匠は剣先をアルダの胸に少し組み込ませ、一滴の血が流れた。


「君に罪はない、その血に罪がある。殺した後は血だけ抜いて綺麗に埋葬するよ」


「なら……最後に、これを……」


アルダはポケットから何かを取り出すふりをして握り拳の右手を見せ、師匠はその手に意識が向いた。


「これでも食らえ!クソ野郎!」


アルダは腕の切り傷を開き、血飛沫が師匠の体全体に細かく付着した。


「私の血が欲しいんだろ!?」


血の目潰しでアルダは壁際から抜け出し、この不利な空間から脱出するために駆け足で階段を上がった。


「この……!あいつは昔からこうだ!」


次の瞬間、師匠の体に異変が起きる。

強烈な吐き気と発熱が襲い、解毒スキルで毒を消そうとしようとしたが、全く効かない。

壁は歪んで見え、毛穴から滝のように汗が出てくる。


師匠は血管をなぞるように魔力を流し、細かな毒粒を一つずつ押し戻していた。


小刻みに震えあまり言うことの効かない脚を進め、階段を上がり、その震える脚はやがて鉄骨のように見える。

壁を伝わりながら歩き、砦を出る頃にはしっかりと立ち、周囲も把握できて以前と変わらなくなった。


そして目の前には毒帝と戦うハンとアルダの姿が見える。

毒帝はスキルをまだ使っておらず、2人の止まらない攻撃を容易く避けては致命打にもならない攻撃を繰り出すだけ。


やはり、温存しているのか……毒帝。

待っておけ、俺が向かう。


すると師匠はアルダに向けて、耳が痛くなるぐらいの大声を出した。


「アルダ!!!」


アルダは大声のした方向を咄嗟に目で追ってしまい、毒帝はアルダを蹴り飛ばし、強制的に師匠と戦わせる。


「それ以上血を出させるなよ」


「わかってる!」


毒帝と師匠はそう言い、1対1の最悪な状況になった。


「アルダ、さっきの続きといこうではないか」


アルダは師匠の背後をチラッとだけ見ると、姿勢を楽にし、その様子に師匠は困惑する。

そしてすぐその答えは分かった。


「さてはヴェイルを殺したか!カイ!」


俺は師匠に短剣を投げ、師匠のアルダの距離を強引に引き剥がし、毒帝との2対1を実現させた。


本当は師匠はアルダに任せたいが……流石に恩師を殺すことはできないだろうな。


「アルダ!毒帝を殺したいんだろ!」


「ここは俺に任せろ」


アルダは安心して前に進み、師匠は一刻も早くアルダを捕える為、周りにいる死体からの流れた血を操り、数十本の槍を宙に浮遊させ構えた。


あの酒臭い師匠の眼光は熟練された戦士。

何百も人を殺し続けた眼だった。

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