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転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第二章毒を喰らう者
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第16話白の竜

周りの草は赤く染まり、白く写る息が前にいる者達を恐怖に陥れる。

全身は血と肉片で塗みれていて、その戦いと姿は騎士以前にただの獣だった。

目は赤く充血し、犬歯が鋭く大きくなっていく。

その姿はまるで人狼のようで、物語の化け物だった。


1人が叫ぶ声もあげれず逃げ出そうと背を向けた瞬間、食に飢えた猛獣のように牙を剥き出しにして剣を振り下ろし、内蔵が地面へ強く落ちた。


「へ、ヘルファイヤ!!」


1人の手下が自分の手先が火傷する程の炎の技を繰り出し、地獄の門から出た炎は地を抉り、空気が焼ける音がして、焦げる臭いが立ち込め、物凄いスピードで迫る攻撃を避けれず腕を突き出して防いだ。


バンッ!!!!!


まるで爆発でも起きたような激しい音が鳴り、

焼け焦げた腕が見えた。

風に当たると切り刻まれたような激痛が走り、全身が拒否しているのを感じた。


「効くぞ!こいつには魔法が通じる!」


手下が大声を出すと有効なスキルを使える者は次々と詠唱や通常スキルを放ち、俺に向けて集中砲火し始めた。

水、風、炎、一般的に多いスキルを相性も考えずに放ち続け、中には魔力の消費で倒れる奴まで現れた。


土は抉れ、耐え難い切り裂く音、皮膚を焦がすような爆風。

絶え間ない攻撃が続き、数十秒の間を経て、攻撃は止まった。


「……誰か、確認を」


手下が言いかけた瞬間、そこには誰もおらず、大きくへこんだ地面だけが見えた。

そしてこの場にいた皆が思う。

相手は複数のスキルを扱う化け物、"貪食"だと。


「ごばっ!!」


全身に傷が入り自分の血なのか返り血なのか、わからない程汚れた男が手下の胸を貫き心臓を抉り取っていた。


そこに視点を合わせると暴風が吹き、前方にいた手下は風の斬撃に木っ端微塵となっていた。


またおかしくなっちまう所だった…次からはスキルの使用を抑えないと。

次の瞬間、炎と風が合わさった攻撃が襲いかかり、全身にパックリと傷をつけ、離れていても人が焦げた臭いが充満した。


「さっさとヴェイル様を呼べよ!!」


「連絡は取ってる!でも、返事が帰ってこないんだよ!」


「なに!?」


すぐに鉄の盾を大きく展開し、多種多様なスキルで俺を抑える中、そんな会話が聞こえる。

ヴェイルが約束を放棄した?毒帝の忠誠が腐れたのか……ならなんでヤツは瀕死ながらも俺を追いかけてきた?

裏切るのはあり得ない、なら……


ハンか!


手下は体力の消耗でスキルを少しの間だけ止めた。

その隙に盾で身を隠しながら風スキルを両手の中に込める。

空間が歪み、両手の間に風が吹き荒れ、かなりの魔力を消費し、息切れし始めた。


「陣形を整えろ!スキルを放てる者は前へ!」


手下らが前に出て手を突き出す。


「放てッ!!!」


水の爽やかな匂いと火の匂い、雷に混じる嫌な匂い、土臭い匂いが轟音を立てながら手の中で生まれ始めた。

中にはより強力な魔法を放つ為に詠唱を唱え、巨大な炎の弓矢まで作る者までいる。

そして合図と共に、生み出された攻撃が俺に向かって接近した。


その時。盾は地面に溶けるように消え、俺は抑えていた風を前方へと放った。

耳が張り裂けるような爆音が響き、切り裂く風は魔法を破壊し、弾け飛んだ。


「い、一体なにが……?」


手下が唖然としている隙に一気に攻め、スキルを使い手下達の背後へと移動した。

風スキルを運用して動きは素早く、そしてその無防備な背後から仕留める。


指揮を取っていた男の心臓を貫き、静けさだけが残った。



----



一方、アルダは腰を曲げ、上体だけ倒して剣を避けた。

すぐに体勢を立て直して、手下の剣を受け流しながら背後にいる手下の首を跳ねた。


宙には綺麗な血飛沫が飛び、まるで絵の具が付いた筆を振るったように飛び散る。

首が地面を転がると手下の1人は混乱し、身動きが取れなくなってしまった。


それを見た手下のボスは固まった手下を押し、アルダの剣を受け止めた。


「しっかりしろ!このアホ!!」


その瞬間アルダは気付く。

こんな奴らにも情はある。

大切な部下が傷付けば自分も傷付く人間。

アルダは剣を強く握り、受け止めたボスを押し退けた。


ボスが後方へ下がると手下が背後からスキルを放つ。

耳が張り裂けるような音が押し寄せ、アルダは地面を飛び回りその場から距離を取った。

数秒食らっただけでも未だに耳が酷く痛む。

そのせいか、吐き気を催し、視界もチカチカと異常が出る。


「おらっ!!」


手下は剣を振り下ろし、アルダに斬りかかる。

急いで下がると鼻先に剣を感じ、その瞬間再び剣を強く握り、両腕が下がった今。

アルダは手下の両腕を切り落とし、手下は断末魔もあげる暇なく、首を掻き切られた。


「おい!檻の魔物を放てッ!」


「よ、よいのですか!?」


「後始末は私とヴェイルが引き受ける!」


アルダは手下を追いかけ、ボスは手下を守る為にアルダの前に立ち塞がった。


「なにする気?」


「猛獣を放つだけだ!」


ボスは力任せに剣を振るい、アルダは剣をギリギリで避けた。

するとボスはアルダにスキルを放つ。


「水流星群!!」


滝のように激しく音を立て、大きく迫る数々の水はアルダを強く殴打し、壁に打ち付けられた。

砂埃が立ち込め、アルダはゆっくりと呼吸をした。


ドスンッ!!!!!


突如、目の前に巨大な鱗に覆われた足が見えた。

鱗は白く、所々灰色の毛が生えていて、更に空気を凍てつかせる。


「ど、ド……」


手下が檻の鍵を開け、そこから出てきたのは雪原のドラゴンであった。

豪雪は陽の日を遮り、奇妙な植物や、危険な生物が蔓延る中での上位生物。

ボスは魔法の模様が描かれた角笛を取り出し、強く吹くとドラゴンの注意を集めて言った。


「砦外にいる侵入者を殺せ!!」


すると魔法が効いたのか、ドラゴンは素直に従い、カイがいる方向へ低空飛行で向かって行く。


ま、マズイ!あのままじゃ危ない!


アルダは落ち着き、考えを巡らせる。


カイを助けに行く……いや、ここは信じて師匠と合流、火薬庫を破壊したらすぐさまカイを助けに行く!


……カイと師匠を信じて毒帝の場所に向かう。


大きく目立つ建物を睨み付け、アルダは復讐に燃え始めた。


でも今は…


アルダはボスと目を合う。

手下は怯えて逃げたのか、命令で逃げたのか定かではないがもうここにはいない。

邪魔者は、もうこの男だけだ。


「貴様。毒帝様の生け贄だな」


男は剣を突き出し、アルダを指した。


「ええ、そうよ。稀血の持ち主」


「毒帝はなんで顔を出さないの?私が傷を付けたから?」


「戯れ言を。お前が生け贄だとわかった瞬間、毒帝様に連絡してある」


「準備が整えば直々にお出迎えしてくれるだろうな」


「わざわざ来てくれるんだ。手間が省けた」


そして2人は睨み合う。

向こうでしか激しく戦う音は聞こえず、砦内は静寂に包まれていた。

刃は太陽で輝き、真っ直ぐ突き進んだ。

男の攻撃よりも速く、剣が振り下ろされる前に懐へ潜る。


バスッ!!!!


「ぐはっ!!」


アルダは男の腹を切ると、血は固まり、猛毒となった。

フラフラと脚が弱まる男にアルダは剣を向け、跪いた男の首は血を吹き出しながら地面に転がった。


「直々にお出迎え……ね」


アルダは側の木箱に腰掛け、毒帝を待つことにする。

殺風景な風がなびき、その目線の先に不気味な笑い声が聞こえた気がした。

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