第14話 白銀色のステータスカード
#白銀色のステータスカード
ゲラールに帰るべく、ローザンヌ街道を東へ向かう。途中で休憩を挟みつつ、陽が沈みはじめるまでにはヒュドラと戦った戦場跡にたどり着くことができた。
眼前には更地のような街道と掘り返された跡のある荒地が延々と広がっている。
馬を歩ませつつ前方を見渡していると、愛馬に跨ったエリスが馬を寄せてきた。
「ミーナちゃん、だいぶ馬に慣れてきたね」
「ありがとう、エリス。でも走らせるだけね。馬が賢いから助かってるけど、やっぱり戦うのは難しいわ」
「ステラはどうしてか大丈夫っぽいのです」
ステラは背が低いせいで騎乗だけは介助が必要だったが、あとは自在に馬を操れている。ランスチャージも問題なくできていた。彼女も私と同じく特別な訓練などしていない。
「初めて盾を持たせたときもそうだったけど、騎士や聖騎士のクラスによる恩恵なのかしら」
「ゲラールに帰ったら馬を飼ってみる? その軍馬は王国のだから返さなきゃならないけど」
「餌もあげないといけないし、面倒みられないわ。でも訓練だけはしたいわね。お城で頼んでみようかな……」
とはいえ、城はただの冒険者がそうそう気楽に入らせてもらえる場所ではない。騎士団長であるカインの許可があったから中庭で訓練できたし、騎士のエリスがいたから馬を借りられただけだ。
「じゃあ、この愛馬、ジョセフィーヌちゃんで教えてあげるよ。お姉さんに任せなさい!」
「時間が空いたらね。それはそうと、この辺りは死骸だらけだったはずだけど、もう残ってないみたい」
「工兵隊じゃないかな。クレアが手配してたよ」
「そうね。きっと、彼らがやってくれたんだわ」
エリスの言う通り、ここを出る前にクレアがそのように言っていた。あの巨大ヒュドラの死骸を運べるのはあのゴリラのような工兵隊のゴーレムだけだろう。
もう撤収したようで、彼らの姿は見当たらない。
少し先の街道の南側でポイズンリザードの死骸が積み上げられ、幾つか炎と煙が上がっている。その近くに大穴が掘られていて、大勢の騎士や冒険者が死骸を放り込んでいる。毒持ちの魔獣を焼いているので、浄化のための神官が何人も待機している。
「街道の整備は済ませたけど、さすがに死骸の処分はまだこれからかな」
街道は簡素な馬防柵によって封鎖されている。ゲラールとモント=レヴァンの鎧を着けた数人の騎士が通ろうとする者を制止している。
「騎士があまり残ってないわね」
「ゲラールに向かったんじゃないかな。大公が避難してるはずだもん」
ローザンヌ公国の騎士の大半は馬を失っていた。戻るにしても徒歩でこの距離は厳しい。
検問場所で聞いてみると、やはり彼らはゲラールへ避難したようだ。
「冒険者かしら。騎士よりもそっちのほうが多いくらい」
騎士を手伝っている不揃いな鎧姿の者が多く目立っている。
「ミーナ。間違いない、冒険者だ。知っている顔や、迷宮で見かけた者もいる」
「ゲラールに住んでるガイが言うなら間違いないわね」
ちょうど南に広がる森から帰ってきたパーティがいたので、近づいて声をかけてみる。
「ねえ、調子はどう?」
「ボチボチだ。そうか。あんたらだろう? ここいらで暴れまわったという冒険者は」
「まあ、そうかもね。かなり綺麗さっぱりになったようだけど、まだやることが残ってるの?」
「緊急依頼があったんだよ。それで、森に生き残りがいないか探してるんだ。実際に何体かトカゲがいたな。バシリスクって特別な奴はまだ見つからないが。Bランクの魔石だったらしいな。畜生、出遅れちまったぜ」
この辺りにあった死骸の魔石はもらい損ねたようだ。彼ら以外にも、高額の魔石を求めて森に入っている連中がいるそうだ。
私がいま話している男はベテランの冒険者風で、一応は装備も整っている。毒があることさえわかっていれば、バシリスクでも後れをとることはないだろう。
「奴らを捜索してくれるのは助かるし、石化毒についてわかっていることだけど……」
コカトリスやバシリスクについて、私の知る範囲で対処法を伝えた。
「……でも、この辺りはもういないんじゃないかしら。もっと西のほうがいいんじゃない? モント=レヴァンからやってきた魔獣だから。昨日は街道上にも魔獣が残ってたわよ」
「そうか。ここで野営できそうだから、もうちょっと西に足を運んでみるか。ありがとな」
バシリスクの大半は壊滅させたが、残っている可能性がないわけではない。街道にまとまっていたのは四天王が操っていたのとローザンヌ騎士団が戦っていたからだ。
その時、少し離れた場所にいる集団の中から誰かが飛び出してきた。
「ああっ、やっと見つけましたよぉ!」
冒険者ギルドの制服を着た男だ。疲れ切った様子で肩で息をしている。
「徹夜で待っていたんですからぁ。まったく人使いが荒くて困りますよ。ミーナさんたちにはギルドから召還要請が出ています。急いでゲラールに戻ってください」
「わかったわ。でも連絡要員としてオリビエとジョゼットを残しておいたんだけど。見なかった?」
「オリビエさんなら知ってますし、会いました。彼の神官団には助けてもらっていますからね」
神殿における祭事の長が神官長や司教であるとすれば、軍事の長で神官団を率いる役職が大神官である。
オリビエは子持ちのお父さんとはいえまだまだ若々しく、大都市アトネの大神官に相応しい立派な鎧も着けていた。人混みの中でも目立ったはずだ。
「ジョゼットは?」
「ジョゼットさんはわからないですね……」
片やジョゼットは黒っぽいローブを着ていて私から見ても地味で目立たなかった。見渡した感じ、いないようだ。オリビエと一緒に帰ったのかもしれない。
「……でも、オリビエさんも皆さんがいつ帰ってくるかまではわからないって言うし、ここで待っているしかなかったんですよ」
「ごめんね。こんなとこで待ってくれてありがとう。この荷馬車に乗っていく? 寝てていいわよ」
「お願いします。やっと終わったぁ」
彼を荷馬車に載せるとすぐに倒れるように寝てしまったので、召還の詳しい話までは聞けなかった。
「勝手に公都まで行っちゃったから怒られるのかな。そう言えばバシリスクの討伐依頼を受けてたんだった」
それでも依頼期限はまだ過ぎていないし、問題ないはずだ。それに、運んできたはずの鉄の檻が見当たらなかった。オリビエに死骸の確保を頼んでおいたので、積んでいってくれたはずだ。なんらかの事情で届いていないのだろうか。
となると、わざわざギルド職員が徹夜までして呼びに来るほどだ。今までそのような事は一度もなかった。よほどの緊急事態かもしれない。
荷馬車がついて来れるギリギリまで速度を上げ、急いでゲラールに向かった。
護衛としてゲラール騎士が随行してくれた。彼は西外城門に近づくと先触れに駆けていった。
「「「おお~っ!」」」「「「わあ~っ!」」」
「竜殺しが帰ってきたぞ!」
「巨人殺し万歳! 竜殺し万歳!」
何を先触れしたのかわからないが、町に着くと、沿道にいる市民から大歓声で迎えられた。
「倒したのはヒュドラで、ドラゴンじゃないんだけどなあ……」
戸惑いつつ城門を抜け、西通りを東へ進む。狩猟組合の市場前を通ると、3つの大きなヒュドラの頭が首から切断されて並んでいるのが見えた。
頭だけならドラゴンに見えなくもない。剥製にして置物にでもするのだろうか。そのアイデアはなかった。
荷馬車のメーベルに問いかける。
「メーベルにあれを倒した称号がついてたよね」
「はい。左様でございます」
「ギルドに着いたら、それでランクアップできるか聞いてみるわね」
やがて南通りに入り、冒険者ギルドにある馬車留めに馬を停めた。
依然としてもの凄い人だかりだ。
通りの向かい側の武器屋からバルトが出てきていた。歓声に遮られてどちらの声も通らず、手を振るくらいしかできない。
「仕方ない、あとで檻を借りたお礼にいこう」
全員を下馬させ、まだ寝ぼけ顔の職員の男を連れて冒険者ギルドの中に入った。
依頼を終えた冒険者が帰ってくる時間帯なので、ギルドホールには大勢の冒険者がいた。私たちを歓迎する者もいれば、我関せずの者もいる。冒険者とはそのようなものだ。
「皆さん、おかえりなさい!」
声がしたギルドホール正面の階段前に目を向けると、妙にニコニコして私たちを手招きする受付のお姉さんがいた。
◇ ◇
いつものように2階の応接室へと案内される。ところが、ソファーに腰かけた途端、受付のお姉さんの表情が一変した。
「で、どうして勝手に行っちゃうんですか!」
怒髪天を衝く、というのはこういう感じなのだろうか。
「ごめんなさい。そんなに怒っているとは思ってなくて。モント=レヴァンに行ったのは悪かったわ。連絡員は置いてきたんだけど……」
「ごめんなさいなのです」
ステラともども頭を下げる。
「バシリスクの件だよね。依頼を放ったままにするつもりはなかったの。オリビエを見なかった?」
報告するまでが依頼だ。ましてや石化毒の研究に使うためのバシリスクの捕獲だったのだから、あと回しにして怒られても仕方がない。
ところが、お姉さんは首をブンブンと振って答える。
「違います! そこじゃない! ヒュドラです! 三つ首の!」
「ヒュドラね。強かったわ。そこそこ」
「なんでヒュドラを目撃して、あまつさえ倒してしまったのにすぐに報告しに来ないんですか!」
今回の依頼は、災害級か城塞級と予想される魔獣の脅威からゲラールを守り、被災者を救護するためだった。行動を起こしたのは私たちだけではない。町の人や工兵隊のジョセフさんたちも同じだ。だから、ヒュドラを含め、街道の魔獣を討伐して当面の脅威が去ったのなら、知らせに戻るべきだったのかもしれない。
「う~ん、でもなあ……」
それでもやはり、魔獣の発生源を止めるために遺跡に向かったのは正しかったと信じている。
結果論になるかもしれないが、実際に遺跡にはヒュドラよりも遥かに脅威的な力を持つパメラや巨人がいたのだ。
パメラは渾身の力を籠めた【ライトニングボルト】を直撃させても死ななかったうえに逃げられた。作戦が功を奏してガイが殺してくれたからいいようなものの、設置されていたという転送の魔法陣で見失っていた可能性は大いにある。
巨人の鎧はステラと私の剣しか傷をつけられなかった。善戦したとは思うが、結局倒せたのはフローネガルデの巨人の盾のおかげだ。
それでも、仮に逃げられ倒せなかったとしても、誰も遺跡に向かっていなければどうなっていたか。奴らが野放しにされていたことになり、事態がより深刻になっていたに違いない。
思案に沈んでいると、お姉さんは私が反省して項垂れていると思ったのか、幾らかトーンを落として話を続ける。
「いいですか。一口に災害級といってもですね。上位の天災級との間には天と地ほどの差があるんです。つまり、範囲が広いんです。あのヒュドラは天災級のドラゴンに迫るほどの脅威度なんですよ」
「でもドラゴンよりも圧倒的に弱かったと思うわ。だって鈍くてみんなの攻撃が効いたし。翼もなくて、尻尾はだらんとしてた」
レッドドラゴンが如何に恐ろしいか、ベルンガルドから聞かされたことがある。
体長は30メートル前後で尻尾を伸ばせば50メートルほどになるそうだ。そのでかい図体にも関わらず、走れば馬よりも速く、力はトロールの何倍もあり、高い城壁もひとっ飛びで飛び越える脚力を持つ。
大きな翼で空を飛び、マグマのような灼熱のブレスを吐く。地上に降りればカタパルトで撃ちだされた巨石が着弾したかのような突進で城門が粉砕される。鎧のような竜鱗に覆われた丸太よりも太い尻尾を振れば、森の木々も薙ぎ倒されるほどだ。
「とにかく! 普通、物語でも勇者が魔王を倒したらお城に帰ってくるでしょ。そのままどこかに行ったりしません!」
「勇者と魔王? ああ。はは~ん。なるほど~」
「な、何よ……」
「お姉さんはあのヒュドラが、物語の最後に出てくるような最強の敵だと思ってたのか。残念だけど、あれは魔王じゃないわ。悪の幹部ですらない。だってモント=レヴァンにはもっと凄いのがいたんだから」
「へ? もっと凄いの?」
キョトンとしているお姉さんに公都での戦いの報告をした。
リザードマンという新種の獣人の発見。国境付近での誘拐事案の発覚。
マーフやパメラといった魔獣や人を改造する者が組織している集団がいたこと。
オウガ=トロールを始め、地下道にいた魔獣はその改造された魔獣である可能性が高いこと。
それと、フローネガルデが構わないと言うので、暴走した黒い巨人の話もした。
「なるほど、それは……」
ヒートアップしていたお姉さんがようやく冷静さを取り戻していく。
「……確かにミーナさんたちがいなければ途轍もない被害を被っていたでしょうね」
「わかってくれた?」
「ええ。どれもランク付けされていない個体ですので、その功績をどう扱うかは私には判断できませんが……」
「もともと報酬なんて期待してなかったわ。『勝手に討伐』は慣れてるし」
「それが、報酬ならあるんですよ。今回皆さんを探していたのは、指名依頼があったからなんです。まずは依頼完了の手続きをしましょう」
私たちが町を出たあとで、避難してきたローザンヌ大公が私たちに指名依頼をしていたそうだ。すでに依頼内容は達成済だが、受注扱いにしてもらえた。
いつもならお姉さんや職員の人が依頼書の手続きをしに出ていくが、今回は予め準備されていた。目の前のテーブルに探求の大水晶と天秤の大水晶が並べてある。
そのため、全員のステータスカードを集めてお姉さんに渡したあとは、いつもよりテキパキと手続きが進んでいった。
「まず、バシリスクとポイズンリザードの依頼分です。オリビエさんが持ち帰ってくれました。死骸もいっぱいあったけど、1体だけ生きているバシリスクを【スリープクラウド】で眠らせて持ち帰ってくれたんです。本当に23人分の等分分配でいいのね?」
ローザンヌ街道で戦ったメンバーは『女神の館』が8名、『ブラックフェニックス』が6名、残りはゲラール騎士が9名だ。
「もちろんよ。どっちかというと、それはほとんどクレアたち騎馬隊の戦果だわ。じゃないと私たちだけじゃそんなに倒せなかったもの。ステラとエリスが加わってたし、私も傷ついた馬を治すとかサポートをしたけど」
討伐数は875体まで数えられたそうだ。追加報酬を含めて金貨19枚、銀貨8枚、大銅貨2枚、銅貨6枚ずつ入った布袋を渡された。
「次にローザンヌ大公の指名依頼分です。本当にこれも23人で等分していいの? 報酬は金貨じゃなくて白金貨なのよ?」
「まあいいんじゃない? さっきも言ったように、騎馬隊が頑張ってくれたし、城の騎士たちにはこの前の襲撃事件で迷惑かけちゃったし」
白金貨4枚、金貨34枚、銀貨78枚、大銅貨2枚、銅貨6枚ずつ入った革袋を受け取った。
あの時、馬に乗って追いかけてきて一緒に町を出たゲラール騎士は、全滅した専従騎士の生き残りだ。
非番や外城門の門番をしていてあの地下通路の惨劇に居合わせず助かったのだ。そして白竜騎士団による占拠中には脅された領主の命令とはいえ片棒を担ぐような真似をさせられていた。これまで忸怩たる想いでいたのだろう。
「魔石ですが、ヒュドラの魔石はオリビエさんが預かって、他の魔石は集まってくれた冒険者に現地で分配したそうですよ。残りはオリビエさんから受け取ってくださいね」
「オリビエ、グッジョブ! 面倒だなと思ってたんだよね。後から誰が来たか知らないし、配ってまわるのも大変だもの」
「はあ…… 最後にギルドポイントです。ミーナさんを始め、6名の方に16万6816ポイントずつ加算され、全員がBランクにランクアップとなりました。また、メーベルさんの称号と引き換えに、メーベルさんには10万ポイント、他の方には5万ポイントが別途加えられました」
「昇格試験はどうするの? それにメーベルやセルディックとグロリアはEランクだし、ギルドに入ってから間もないけど」
「本来は昇格試験が必要ですが特別に免除となります。メーベルさんはヒュドラの首と称号を確認しましたし、ちびっ子2人は年齢制限のせいで長らくギルドに入れなかったのですが、アトネではかなり有名なパーティなんです」
「へぇ~ そうだったんだ」
どちらにしろ、報酬の入った革袋の向こう側に置かれたステータスカードの束は、すでにBランクを示す白銀色に変えられていた。
「昇格試験の内容はご存知ですか? ギルド職員が随伴して、その冒険者の知識や良識などの為人を測ります。Bランク以上は加えて戦闘面の能力を確認するんです」
「なんとなくは聞いたことがあるわ。依頼の内容が要人の護衛だったり、魔獣の討伐になるからだよね」
「そうです。Bランク以上となれば、それらの依頼をこなす必要がありますので」
「じゃあ私たちなら問題ないわね」
「そういうことです。それから、このあとミーナさんとステラさんはゲラール城に行ってください。名誉騎士の爵位が授与されることになっています」
「名誉騎士⁉」
「領主が功績をあげた市民を表彰し、恩賞を与えるための爵位が名誉騎士です。王ではなく領主が与えるので名誉市民的扱いですが、領内では一代騎士爵の貴族として扱われ、屋敷を構えれば年金も支給されますよ」
「そんなの要らないわ。そもそも私たちの家はエルンだし……」
「そういうわけにもいきません。今回の件で、ローザンヌ大公はフレイン王国に感謝を伝えるでしょう。ゲラールの危機も未然に防がれました。そうなれば、主要な役割を果たした者には王から褒賞が与えられるはずです。それなのに、領主がなんの恩賞も与えていなかったというのは良くないのです」
「ステラはうれしいのです!」
「わかったわ。でも、何かめんどくさいことに縛られるのは嫌よ?」
「そういうことはないと思いますよ。名誉騎士自体はそう珍しいものではありませんし。エリスさんも王宮騎士ですから、一代騎士爵のはずですよ」
「そうなの?」
「うん。従士から騎士に昇格するときになったよ。十人長は一代男爵、騎士団長は一代子爵。だけど、カイン団長は侯爵家の嫡男だから、いずれは侯爵さまかな」
「ならいいか」
みんなにステータスカードと報酬の入った革袋を渡して、余った分はバックパックに入れる。
「それじゃあ、城に行ってくるわね。どうせ、『ブラックフェニックス』とゲラール騎士の取り分を預けに行くつもりだったし」
席を立とうとすると、お姉さんが何か思い出したように慌てて引き留める。
「あ、待って。まだ用件がありました。ローザンヌ大公が皆さんを招待したいと仰っていますが、どうします? 今は貴族街に逗留されています」
「城にいるんじゃないの?」
「今は領主のリトアールさんが不在で、この前の一件から同族や係累以外を滞在させるのは怖いそうです。そこで、大公一家以外にも騎士や使用人の避難者が大勢いますので、別邸を使うことにしたようです」
「報酬をもらった以上、会わないわけにもいかないか。ゲラールで会ってもいいし、モント=レヴァンでもいいわ。できれば堅苦しくない方が助かるんだけど」
「じゃあセッティングはギルドの方でやりますね。詳細が決まりましたら女神の館に連絡します」
用件が済み、冒険者ギルドをあとにする。馬に乗せてもらうのに小恥ずかしい思いをして、会釈しながらゲラール城へと向かった。
城はすぐそこだし群衆は解散していたが、それでも人通りはまだ多めだった。
内城門では門番の騎士に誰何されるどころか讃えられて通された。特にステラは以前から人気者だ。可愛らしいから仕方がない。
馬は彼らが厩舎に連れていってくれるらしい。短い間だったがお別れだ。首を撫でてあげる。
「お馬さん、ありがとうね」
それと、荷馬車に積まれていた荷物を女神の館に届けてくれるとのことで、貴重品以外の戦利品を預けることにした。
特にインビジブルスタッフは誰にも触らせてはいけない。完全に姿を消せる魔道具があると知れたら怖がられるし、万が一にも他人の手に渡ってしまえば大変なことになるかもしれない。今だけメーベルに持っていてもらう。館に持ち帰ったあとは厳重に保管され、基本的には死蔵品、お蔵入りになる。
遠巻きに熱い視線を感じる。私は彼らの顔を覚えていないが、彼らの中には白竜騎士団を皆殺しにした私たちの大立ち回りを憶えている者もいるだろう。
本館のホールにある席に案内され、しばらく待っていると子爵夫人が現われた。
応接室に呼ばれるのかと思っていたが、ここで爵位の授与式を行なうようだ。こんなにいたのかという程、人が集まってくる。
かなり長いお褒めの言葉が続いた後、首に名誉騎士を表すメダリオンがついたゴルゲットがかけられた。
その後、領主の家族や騎士たちと一緒に軽食を食べながら談笑し、ギルドからの報酬金と、ジョゼットに宛てたクレアの伝言を託すと、女神の館へと戻った。
◇ ◇
女神の館の門に近づいてくると、マリエルさんが詰所から出てきた。いつも私たちの帰りを待ってくれているが、大丈夫なのだろうか。
「あらあら、お帰りなさい~ まあまあ! ステラちゃんが2人に増えたわぁ⁉」
オリビエは館にはいなかった。この騒ぎで冒険者が減ったせいか迷宮の魔獣が増えているらしく、ジョゼットと一緒に調査に向かったそうだ。
メイドさんたちにフローネガルデを紹介してから地下の試着室で鎧を除装し、修理やメンテナンスのためマリエルさんとメーベルに装備を預けた。
それと、ステラとエリス、私の3人で注文していた新しい鎧が完成していた。一部が板金のハーフプレートアーマーだ。修理中だったガイのブリガンダイン、セルディックとグロリアのスケイルアーマーも、綺麗になって並べられている。
3人分の新しい鎧はサイズが異なり、腕鎧のデザインが個別仕様になっている。それぞれが持つ特殊な盾を流用するためだ。
また、余剰のミスリルを使って色々な武具が作られたようで、試着室のあちこちに展示されている。
エリスのアークエンジェルソードは量産されることになったそうで、他の剣に混じって壁に掛けられ、盾もテーブルの上に並んでいた。
マリエルさんは『町の存亡の危機だから』とか『装備が壊れるのを見越して』とか言っていた。だが、いくら腕利きの鍛冶師だといっても、これだけの数を1日では作れないだろう。絶対にこの騒ぎに便乗してごまかす気だ。
みんなは早速新しい鎧を着けはじめているが、私はどっと気疲れが出て、椅子に腰をかけて足をブラブラさせていた。
「はぁ。なんていうか、町に帰ってからのほうが疲れたわ」
「ミーナ。鋼鉄製で注文したはずの鎧がミスリル製になってるのです」
「もう、マリエルさん、またやらかしたわね…… まあいいわ。ステラが良ければ、試着し終わったらその鎧をフローネガルデに貸してあげて。彼女の鎧は不味いわ」
今のフローネガルデは平服姿で、ステラと同じ顔を隠すために、館にあった適当な黒いサングラスを着けてもらっている。認識阻害のおかげで城では騒ぎにならなかったが、マリエルさんには通じなかったようだ。他にも気づく人がいたら問題だ。
もうどうあってもステラの鎧が傷つくことは考えられないし、予備の鎧はおしゃれ用にしかならない自信がある。それならフローネガルデの素性を隠すのに使ったほうがトラブルにならずに済む。
「はいなのです。盾も問題なくついたので、ご先祖様でも大丈夫なのです」
「あ~ ちょっと~ ご先祖様はちょっと傷つきます~ 永遠に17歳なんですよ~」
「でもご先祖様なのですし。おばあちゃんと呼んだ方がいいのです?」
「やめて~! それだけはやめてください~!」
「そうね。子どもみたいな見た目なのに、おばあちゃんは可哀想でしょ。そうね…… フローネ…… フロウ…… うん。フラウと呼びましょ」
フラウはご婦人という意味でもある。既婚女性に対して使うが、少なくともステラという子孫を遺しているのだから問題ないだろう。
「ぜひ! ぜひそれでお願いします!」
ほんの1日足らずの間に彼女はすっかり私たちに打ち解けている。親しみがあって良い感じだ。私の気を紛らわそうとしてくれていたのかもしれない。
気分が楽になった私は、ようやく自分用の新しい鎧を手に取る気になった。
動きやすそうな黒色の竜鱗の各部を頑丈そうな深緑色の板金が覆っているハーフプレートアーマーだ。メーベルの鎧とお揃いのドレスのような深緑色のサーコートもある。真っ白なエプロンが眩しい。
ドレスは赤い方が良かったが、赤いエプロンドレスはマリエルさん専用らしい。
確かに材質がミスリルに変わっている。それにメーベルは+7までの出来栄えの武具しか作れないが、この鎧に刻印されているのは+9だ。
メーベルも忙しかったので、マリエルさんに引き継いだのかもしれない。その過程でいつもの『やっちゃった』が発生したのだろう。
鎧と一緒にヴァルキリーシールドも持っていかれたが、ガントレットから外せるように改良してくれるらしい。すでにフレームは完成していて、コアとなる魔石を載せ替えるだけだそうだ。
◇ ◇
全員が鎧を着け終わり、輪になって互いに見せあう。
深緑色の鎧で統一された女性陣の姿は給仕隊に加わったメイドのような出で立ちで、可愛らしく姦しい感じになった。
ガイはあのキラキラ鎧を普段鎧にできないのだろうか。あれは格好良かったが、このジャスティスアーマーはどうもバッタモンの偽物臭がプンプンしている。しかも本物のジャスティスウォーリアーはマフラーを巻いていなかった驚愕の事実。彼は気に入っているそうだが……
「盾をどうする? 色々作ってくれたみたいだけど。自由に使っていいそうよ。Aランクの魔石が手に入ったらフォースシールドに変更しようと思ってるから、そのつもりでいてね」
そう言えばマリエルさんたちはクランホールに出るバルトの店と契約したんだった。メーベルの鎧もその試作品だったから、これらの盾もそうなのかもしれない。
「僕はこれにしようかな」
「あ、あたしも! スモールシールドはもう修理が難しいみたいです」
「俺もいいのかな」
「ガイはもう遠慮しなくていいんじゃない? 仲間なんだし。一蓮托生ってやつよ」
みんなが選んだのはラウンドシールド。
「やっぱりラウンドシールドが一番人気だよね」
私のヴァルキリーシールドもラウンドシールド形状だ。
「ステラはカイトシールド、いいと思うのですが……」
しょぼんとしたステラを気遣ってか、セルディックがカイトシールドを手に取る。
「じゃあ僕はカイトシールドにしてみようかな。まずは持ち手の位置と傾きを調整しないと」
「ステラが教えてあげるのです!」
「あっ、じゃあお姉さんのアークエンジェルソードもまだ残ってるから使っていいよ!」
ブロードソード型の武器はブレードが重く、納める鞘も大きい。体格的に見てまだ早そうに思えたが、セルディックはエリスから剣を受け取った。
「あ、この盾、バックパックのフックに直接掛けられるようになってるのね」
並べられた盾の裏にはどれもリングがついていた。フックに引っかけるだけの単純な物だが効果絶大だ。盾は重いし左手が自由にならない。だから普段は背中に背負っている冒険者も多いのだ。
「僕はハルバードも使いたいので、盾を使わないときは便利かもしれませんね」
「バックパックを背負ったままの脱着はできないことはないけど、誰かに手伝ってもらわないと難しそうね。ペアでお互い交換して背負うのもありかな?」
「俺はトラップ解除もするから身軽な方がいいし、今までどおりゴーレム台車に駆けるよ」
「あれ? 姉さんのステータス、装備が中破のままだよ。クロススタッフかな?」
「あまり壊れていないように見えるけど、やってみるか」
≪鑑定≫したところ、どうやら聖木が傷んでいるようだ。手をかざし、【リーンカーネイト】のスペルを唱えた。
レア魔法は習熟すると無詠唱で唱えられる。【ディテクトエネミー】同様、周りには魔法を使ったことすら気づかれなくなるだろう。危険を伴うが、そこまでは訓練した方が良いだろうか?
痛みがひどかった柄だけが新品の状態に戻った。
(おお~ 一部だけでもできるんだ。それに今回は記憶も確かだ)
直す難易度によって悪影響の程度が変わるのかもしれない。
「これで大丈夫よ」
「ありがとうございます! これ、大切にしていたので!」
グロリアがうれしそうに杖を撫でながら、ペコペコと頭を下げた。
そうこうしているうちに、本物のメイドさんがやってきて、オリビエの帰宅を告げられた。夕食の準備も整ったそうなので、みんなで食堂に向かった。
◇ ◇
「どうも迷宮の魔獣が強くなってきているみたいなんだ」
夕食を食べながら、オリビエの話を聞いている。
「もしかして装備? ミスリルの鎧を着けたオーク=コマンダーがいたわね」
「確かに着けている鎧がばらけてきた。それに知恵もついてきたような感じだよ」
「アレの影響を受けているのかもしれません」
「フラウ、アレって?」
「禁則事項です……」
ゲラールの迷宮はフローネガルデが聖杯を持ち帰った迷宮ではないかと噂があったようだ。邪竜イオルムガンデを封印した迷宮だったという説もある。
「思わせぶりなこと言って気になるぅ!」
「エリス、茶化さない。今は外に出ている冒険者も多そうだから、迷宮の魔獣が討伐されなくて残っているって理由もあるんじゃない? 迷宮が公開されてからは冒険者のほうが多くて再配置待ちばかりだったから」
「そうそう。最初の頃はあちこちで警告の笛が鳴ってたもんね」
「コボルド=エンペラーが再配置されてるはずだし、明日は迷宮に行ってみましょ」
「わ、私もついていっていいですか? 今、1人ぼっちなので……」
ジョゼットだ。金髪でキュートなおさげがふたつ肩に乗っている。黒色のローブ姿で、メイジスタッフを椅子に立て掛けている。典型的な魔導師の出で立ちである。
騎士ばかりの『ブラックフェニックス』を支援するために、王都にいるカインが派遣した魔導師だ。ローザンヌ街道に連絡係として残したはずが、結果的に取り残された形になってしまった。クレアは戻ってくるつもりなので、あくまでも一時的ではあるが……
「せっかく王都からやってきたのにね。いいわ。じゃあ、彼女たちが帰ってくるまで一緒にやりましょ。でも私たちが攻略するのは地下4階以降だから、危険は覚悟してね」
「わ、わかりました! これでもCランク冒険者なんですよ」
「あっ、冒険者だったのね。てっきり宮廷魔導師だと思ってたわ、ごめん。ヒュドラ討伐の指名依頼があとで入ったみたいで、ギルドポイントがもらえたのよ」
完了済の依頼書を取り出して見せた。
「そうだったんですね。でも、これだと私たちは傭兵扱いだったかもしれないので、微妙ですね。私としてはポイントよりも報酬金が凄く見えます。羨ましいな~」
「報酬金はクレアたちを含めて全員で等分分配してあるわよ。街道で倒した雑魚の戦利品の分もね。ゲラール子爵夫人に渡してあるから、城に戻ったら受け取ってね。白金貨4枚はあったわ、確か」
「わぁ、本当ですか! ありがとうございます!」
ジョゼットがパーティに加わった。
◇ ◇
┌────────────────┐
│名 前:ジョゼット │
│種 族:ヒューマン │
│年 齢:18 │
│職 業:冒険者 │
│クラス:魔導師 │
│レベル:18 │
│状 態:良好 │
├────────────────┤
│筋 力:164 物理攻: 324│
│耐久力:190 物理防: 568│
│敏捷性:193 回 避: 327│
│器用度:126 命 中: 244│
│知 力:401 魔法攻:1079│
│精神力:319 魔法防: 783│
├────────────────┤
│所 属:ゲラール探索者クラン │
│称 号:Cランク冒険者 │
├────────────────┤
│状態:良好 │
│右:メイジスタッフ +9│
│左:聖銀のフォースシールド +9│
│鎧:鋼鉄のチェインローブ +5│
│飾: │
│護:フォースフィールド │
├────────────────┤
│パーティ:ミーナ │
└────────────────┘
◇ ◇
「1歳年下だぁ~ ! まだギリギリお姉さん! セーフ!」
「ローブで見えないけど、中にチェインメイルを着込んでいるのね」
それに盾はフォースシールド。Aランクの魔石を使った魔道具だから、買えば相当高価なはずだ。代々の家宝か、直接作ってもらったのだろうか。
見た目は弱そうなローブの中のチェインメイルも出来が良さそうだし、なんとかなるだろうか? ローブはコボルドの短剣でボロボロにされそうな気もする。
「魔法はどんな感じ?」
「ほぼ覚えています。【フロアライト】がまだです。ミーナさんはストーム系がもう使えるんですよね? すごいです」
以前のメーベルと似たような状況のようだ。
「ミーナでいいわ。敬称は使ってないの。楽にしてね。年下の私が言うのもなんだけど」
「ミーナ。ヒュドラの魔石と首級を預かってるんだ。SSランクの魔石だよ。マリエルさんに預かってもらってる。首級は狩猟ギルドに加工を頼んだよ」
「そういえばヒュドラの分を分配してなかったわ。首は剥製にでもするのかな? 確かに高く売れるかもしれない。クレアに聞かないと決められないわね…… 魔石を分配すると金貨70枚ずつくらいかな」
SSランクの魔石は白金貨20枚の価値で、魔石を売るときは1割引かれるので18枚。26等分すると、多分そのくらいだ。
「私は白金貨まで頂くのでしたら、とてもそれ以上は受け取れませんよ!」
魔石と首級の件は、『ブラックフェニックス』が戻ってから改めて決める、ということになった。
迷宮の様子は気になったが、とりあえず今日は軽く訓練するに留めて解散することにした。明日は昼1番目の鐘の頃合にここに集合だ。
ジョゼットはゲラール城に滞在しているので、ガイと一緒に帰っていった。
◇ ◇
次の日。朝から各方面にお礼めぐりだ。
盾が外れるようになった改良版のヴァルキリーシールドを身につけて、1人で館を出発した。
まずはクランホール近くにある工兵隊の工房に行ってジョセフさんと話し、ゴーレムを出してくれたお礼として、メーベルがコツコツと貯めていた袋いっぱいの魔石を提供した。
それから探索者クランの事務所、ゲラール城、西外城門、神殿、冒険者ギルドを回る。
神殿では治療を受けていた重傷者が残っていたので、【グレーターヒール】で治療した。
総じて事態は収束に向かっているようだ。
ローザンヌ大公の招待の件は、軽くお茶会に招待ということで気を利かせてくれて、今日の昼2番目の鐘の頃合に女神の館まで迎えの馬車が来ることに決まった。迷宮に行く予定は遅らせるしかない。
最後にバルトテック武器店にやってきた。バルトはいつものようにカウンターに肘を突いて立っている。
「よう、ミーナ。昨日はすげえ騒ぎだったな」
「魔獣と戦ってる方が楽だったわ。檻の件はありがとう。おかげで貴重なサンプルを持ち帰れたわ」
バシリスクの毒は猛毒・石化・呪いが混合されたものだとわかった。石化毒の研究はあまり進んでいないらしく、生け捕りとなったバシリスクは神殿で厳重に管理しながら治療薬の研究のために使うそうだ。
「いいってことよ。今日はなんだ?」
「お礼を言わなきゃと思って。それと、どうしても気になることがあって」
「なんだい?」
「ステラの鎧よ。最初に買った」
「ああ、あれか」
「どこかの貴族の子弟が使っていた鎧って聞いたけど、とんでもない、あれは『勇者』の武具よ。それに私の剣。セイントソードだって言われて買ったけど、エルフに見せたら『竜殺しの剣』だって」
「ああ、そうだな。『特別だから』渡したのさ。武器もお前さんたちもな。親父から伝え聞いた話じゃあ、この店はとある勇者の従者をしていたゴーレム技師が開いた店で、あの鎧はその時からずっと倉庫の片隅にあったんだって話さ」
「そうなんだ。もうゴーレムは置いてないみたいだけど」
「元はといえば、ゴーレムやそいつが使う装備を扱う『戦闘機械技術武器店』が由来だったんだがな、廃れて変わっちまった。それでも当時の縁で、色んな武具が集まってくるのさ」
「『特別だから』ってことは、じゃあ、最初から私たちは目をつけられていたの?」
「まさか。ただ、ステラは持ってたカイトシールドを見た瞬間、こいつはもしかしてとは思ったな。ミスリルならともかく、ただの鋼鉄の盾を3年も使って壊さねえなんてあり得ねえからよ。聞いてねえが、そん時に持ってた鋼鉄の剣もそうだったんだろ?」
「ええ、盾のあとに買ったけど、ずっとあのロングソードを使ってたわね」
「それに多分あのメイドのねーちゃんたちも俺と同類だと思うぜ。今まで直接の接点はなかったけどな。まあ、武具に関しちゃ俺たちがサポートするからよ。頑張れよ」
「ありがとう。これからもよろしくね」
話が済んだところで、弓やモーニングスターのホルダーなどの備品を新しく買い揃えた。
「あと、これも」
ステラが使っているのと同じ帯剣ベルトとバックパック。大袋などの備品。着替えのギャンベゾンをいくつか。下着類はもう途中で立ち寄った雑貨店で買ってある。サイズはバッチリ把握済。
フラウにプレゼントしようと思う。
昨日着替えさせてわかったことだ。実は私の想像力が足りなかったせいか、彼女は鎧しか身につけていなかったのだ。着替えも持っていない。
人ではないので必要ないと言っていたが、ちゃんと女の子として扱ってあげたかった。
フラウだけにプレゼントするとステラが拗ねるかもしれないので、着替えは多めに買っておいた。
「毎度あり! また来てくれよ!」
支払いを済ませて山のような『戦利品』を担ぎ、店を出た。
帰路につきながら今後の事を呟きながら考える。
「まずは地下4階を踏破したいな。その先がどうなってるかだけど」
フラウの言ってた『アレ』が気になる。すでにトロールに遭遇しているし、もっと深い階層にはドラゴンとかそういう類の敵がいそうだ。
「『巨人』が使えればいいんだけど。もう少し小さくできないのかな。大きすぎて階層主の広間しか使えそうにないわ」
やがて小さな人間ではどうにもならない時が絶対に来る。だからフラウはついてきてくれたんじゃないだろうか。
「でもまあ、あのままでもステラが2人になるんだから頼もしいな。やっぱり超ジャンプするのかな」
まだフラウが戦うところを見ていない。優秀な聖騎士だったのだから、教わることも多いだろう。凄すぎて参考にできないかもしれないが。
「どっちにしても今日はお茶会か。晩餐会じゃなくて良かったと思うべきか。帰ったらみんなに伝えないと」
買い揃えた荷物は重くないが、かさ張る。背負った大袋に半分頭が埋もれながら東通りを館に向かって歩き続けた。
――第7章 完
◇ ◇
┌────────────────┐
│名 前:フローネガルデ │
│種 族:ハイエルフ │
│年 齢:17(エターナル) │
│職 業:不詳 │
│クラス:白騎士 │
│レベル:43 │
│状 態:良好 │
├────────────────┤
│筋 力:887 物理攻:2783│
│耐久力:*** 物理防:****│
│敏捷性:726 回 避:1526│
│器用度:552 命 中:1215│
│知 力:472 魔法攻:1239│
│精神力:702 魔法防:****│
├────────────────┤
│所 属:サルヴァート冒険者ギルド│
│称 号:SSランク冒険者 │
├────────────────┤
│状態:良好 │
│右:F・バスタードソード │
│左:F・カイトシールド │
│鎧:エプロンアーマー +9│
│飾: │
│護:パイルバンカー【MAX】 │
├────────────────┤
│パーティ:ミーナ │
└────────────────┘
┌────────────────┐
│名 前:ミーナ │
│種 族:ヒューマン │
│年 齢:15 │
│職 業:冒険者 │
│クラス:戦巫女 │
│レベル:24 │
│状 態:良好 │
├────────────────┤
│筋 力:389 物理攻:4025│
│耐久力:432 物理防:2636│
│敏捷性:343 回 避:1037│
│器用度:265 命 中: 742│
│知 力:343 魔法攻:2437│
│精神力:409 魔法防:3241│
├────────────────┤
│所 属:ゲラール探索者クラン │
│称 号:Bランク冒険者 │
├────────────────┤
│状態:良好 │
│右:白金のセイントソード +9│
│左:ヴァルキリーシールド +9│
│鎧:ヴァルキリアーマー +9│
│飾: │
│護:フォースフィールド │
│護:プロテクション │
├────────────────┤
│パーティ:ミーナ │
└────────────────┘
┌────────────────┐
│名 前:ステラ │
│種 族:ヒューマン │
│年 齢:15 │
│職 業:冒険者 │
│クラス:聖騎士 │
│レベル:24 │
│状 態:良好 │
├────────────────┤
│筋 力:486 物理攻:2773│
│耐久力:551 物理防:2441│
│敏捷性:376 回 避: 810│
│器用度:281 命 中: 630│
│知 力:227 魔法攻: 648│
│精神力:353 魔法防:1877│
├────────────────┤
│所 属:ゲラール探索者クラン │
│称 号:Bランク冒険者 │
├────────────────┤
│状態:良好 │
│右:ステラのバスタードソード │
│左:ステラのカイトシールド │
│鎧:ステラのプレートアーマー │
│飾: │
│護:パイルバンカー【4】 │
├────────────────┤
│パーティ:ミーナ │
└────────────────┘
┌────────────────┐
│名 前:メーベル │
│種 族:ヒューマン │
│年 齢:24 │
│職 業:鍛冶師 │
│クラス:魔導師 │
│レベル:24 │
│状 態:良好 │
├────────────────┤
│筋 力:338 物理攻: 860│
│耐久力:296 物理防: 986│
│敏捷性:264 回 避: 538│
│器用度:171 命 中: 397│
│知 力:429 魔法攻: 952│
│精神力:318 魔法防:1259│
├────────────────┤
│所 属:ゲラール探索者クラン │
│称 号:Bランク冒険者 │
├────────────────┤
│状態:良好 │
│右:聖銀のポールハンマー │
│左:聖銀のラウンドシールド +9│
│鎧:聖銀のスケイルアーマー +9│
│飾:ヒールペンダント │
│護:セルフヒール │
├────────────────┤
│パーティ:ミーナ │
└────────────────┘
┌────────────────┐
│名 前:エリス │
│種 族:ヒューマン │
│年 齢:19 │
│職 業:騎士 │
│クラス:騎士 │
│レベル:24 │
│状 態:良好 │
├────────────────┤
│筋 力:414 物理攻:1961│
│耐久力:466 物理防:1522│
│敏捷性:361 回 避: 757│
│器用度:253 命 中: 559│
│知 力:120 魔法攻: 326│
│精神力:176 魔法防: 470│
├────────────────┤
│所 属:黒鳳騎士団 │
│称 号:黒鳳騎士団 団員 │
├────────────────┤
│状態:良好 │
│右:アークエンジェルソード +9│
│左:アークエンジェルソード +9│
│鎧:エプロンアーマー +9│
│飾: │
│護:フォースフィールド │
├────────────────┤
│パーティ:ミーナ │
└────────────────┘
┌────────────────┐
│名 前:ガイ │
│種 族:ヒューマン │
│年 齢:25 │
│職 業:冒険者 │
│クラス:騎士 │
│レベル:24 │
│状 態:良好 │
├────────────────┤
│筋 力:420 物理攻:1237│
│耐久力:447 物理防:1604│
│敏捷性:343 回 避: 720│
│器用度:244 命 中: 546│
│知 力:199 魔法攻: 419│
│精神力:180 魔法防: 672│
├────────────────┤
│所 属:ゲラール探索者クラン │
│称 号:Bランク冒険者 │
├────────────────┤
│状態:良好 │
│右:ジャスティスブレード +5│
│左:聖銀のラウンドシールド +9│
│鎧:ジャスティスアーマー +9│
│飾: │
│護:ジャスティスブレード │
├────────────────┤
│パーティ:ミーナ │
└────────────────┘
┌────────────────┐
│名 前:オリビエ │
│種 族:ヒューマン │
│年 齢:30 │
│職 業:大神官 │
│クラス:大神官 │
│レベル:21 │
│状 態:良好 │
├────────────────┤
│筋 力:285 物理攻: 905│
│耐久力:353 物理防: 889│
│敏捷性:232 回 避: 504│
│器用度:171 命 中: 380│
│知 力:352 魔法攻:1455│
│精神力:409 魔法防:1955│
├────────────────┤
│所 属:創造神ギルド │
│称 号:アトネ神殿 大神官 │
├────────────────┤
│状態:良好 │
│右:聖銀のクロススタッフ +9│
│左:聖銀のスモールシールド +5│
│鎧:聖銀のプレートアーマー +5│
│飾:奇跡のゴルゲット │
│護:身代わり(1) │
├────────────────┤
│パーティ:ミーナ │
└────────────────┘
┌────────────────┐
│名 前:セルディック │
│種 族:ヒューマン │
│年 齢:12 │
│職 業:冒険者 │
│クラス:冒険者 │
│レベル:20 │
│状 態:良好 │
├────────────────┤
│筋 力:355 物理攻:1135│
│耐久力:394 物理防:1574│
│敏捷性:256 回 避: 558│
│器用度:221 命 中: 486│
│知 力:224 魔法攻: 538│
│精神力:204 魔法防: 698│
├────────────────┤
│所 属:ゲラール探索者クラン │
│称 号:Bランク冒険者 │
├────────────────┤
│状態:良好 │
│右:アークエンジェルソード +9│
│左:聖銀のカイトシールド +9│
│鎧:聖銀のスケイルアーマー +9│
│飾: │
│護: │
├────────────────┤
│パーティ:ミーナ │
└────────────────┘
┌────────────────┐
│名 前:グロリア │
│種 族:ヒューマン │
│年 齢:12 │
│職 業:冒険者 │
│クラス:神薙 │
│レベル:20 │
│状 態:良好 │
├────────────────┤
│筋 力:276 物理攻:1028│
│耐久力:320 物理防:1349│
│敏捷性:219 回 避: 471│
│器用度:221 命 中: 460│
│知 力:357 魔法攻:1418│
│精神力:355 魔法防:1701│
├────────────────┤
│所 属:ゲラール探索者クラン │
│称 号:Bランク冒険者 │
├────────────────┤
│状態:良好 │
│右:聖銀のクロススタッフ +5│
│左:聖銀のラウンドシールド +9│
│鎧:聖銀のスケイルアーマー +9│
│飾: │
│護: │
├────────────────┤
│パーティ:ミーナ │
└────────────────┘
いつも読んで下さりありがとうございます。
次話から第8章になります。舞台と登場人物が変わります。
投稿は3/5(火)の予定です。