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この世界の悪は、吸血鬼の小銭稼ぎにすぎない 〜無慈悲な治癒魔法と血の刃で、獲物を捕食する〜  作者: アム


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15話 仮拠点での日常と、招かれざる客

予定通り、巨大都市の近くの山奥で盗賊の住処を強襲し、3人組を難なく制圧した。

この都市の周辺に居座るだけあって装備や金回りは悪くなかったが、所詮はただの人間。私とラメの敵ではない。


戦闘後、私は適当に彼らの荷物を漁り、副産物の吟味と仕分けを始める。

その横では、ラメが仕留めたばかりの盗賊の肉でガッツリと『お食事』をしていた。

獣特有の咀嚼音が山小屋に響くが、私たち姉妹にとっては特別でも何でもない、ただのありふれた日常の光景だ。


(……しばらくここを、巨大都市の周辺を探索するための仮拠点にでもするか)


私がそんなことを考えていた時のことだ。

ふと、五十メートルほど離れた遠くの木々の間に、僅かな異変――誰かの視線のようなものを感じた。

距離があったため私自身は確信が持てなかったが、野生の感覚が鋭いラメは、食事をしながらも完全に確信していたらしい。


彼女は肉を口に運びながら、さりげなくそちらの様子を窺っていた。

そして、潜んでいた何者かが逃げる素振りを見せた瞬間。

ラメは突然、弾かれたように森の奥へと駆け出した。


私も目でそれを追う。確信はなかったが、自分が考えていた『誰かが覗いている』という推測が正解だったことはすぐにわかった。


ただ、その後の展開は少し予想外だった。

数分後、森から戻ってきたラメは、ズルズルと何かを引きずっていた。

見れば、明らかにギルドか傭兵関係の装備を身につけた、大人の女だった。気絶しており、さらに右腕が肩のあたりからスッパリと斬り落とされて出血している。逃げようとしたところを、ラメの膂力と剣で力任せに斬られたのだろう。


「持ってきたよ!」

「……えぇ……」


褒めてほしそうに尻尾を振るラメの足元に転がる、大怪我を負った見知らぬ女。

流石の私も少し驚いたが、静かに「どうしようか」と思考を巡らせる。

とりあえず、このままだと血を流しすぎて死んでしまうため、私は落ちていた右腕を拾い、回復魔法で完全に元通りに接着・修復してやった。


そのまま気を失った女を小屋の中へ運び込み、ベッドに寝かせて様子を見ることにした。

まあ、十中八九、私たちがここでやっていた行動――特にラメの『食事』の光景は、ガッツリ見られていたと考えて間違いないだろう。


女が目を覚まさないまま、半日以上の時間が経った。


遅めの昼寝すら終わってしまい、暇を持て余したラメは、気絶している女の横に座り込み、今度は少し離れた場所で本を読んでいる私に向かって、嬉々として一方的なおしゃべりを始めた。


「私ね、スラムで親が死んじゃって、お金も食べるものもなくて、ただ死ぬのを待ってるだけだったの。なんか時々、おじさんが食べ物くれたけど、それでも死ぬ人も周りにいたぐらいだし」


最近、言葉がしっかり話せるようになってきたラメの声は無邪気だ。

確かに、私が彼女を拾った時はそんな状態だった。獣人のボロボロの子供が倒れていて、その異様な姿に少し驚いた私が、興味本位で手持ちの餌を与えたのだ。

すると彼女は勝手に私についてきた。だから私は、彼女を拠点に連れ込み、ほとんど監禁・軟禁に近い状態でペット感覚で飼うことにした。最初は酷く臭くて汚れていたから、初日に無理やりお風呂へ放り込んだのを覚えている。

(……そういえば食べ物をくれた『おじさん』とやらは、なんとなくあの商人か? と一人だけ察しがついた)


「今まで地獄だったから、クロのお家はすっごく嬉しかったの!」


楽しそうに語るラメの口元から、鋭い牙が覗く。

私が衝動的に自身の血を与え続け、彼女を私と同じ『吸血鬼の眷属』に変異させてしまった時のことだ。あの時の私は、生きていて今まで『自分だけのモノ(所有物や家族)』を持ったことがなかったから、無自覚に彼女を自分と同じ化け物に染め上げてしまったのだろう。


「私、クロと一緒に行くの!」


気絶した女のすぐ近くで、ラメは心底幸せそうに、自分の過去を語り終えた。

客観的に聞けば、ただの感動的な姉妹の物語だが、その裏には異常な洗脳と依存がある。だが、本人たちが満足しているのだから何の問題もない。


ただ、ここまで無邪気に聞かされると、流石の私も彼女が純粋過ぎて、少々しんどさを覚えてしまう。

だが、絶対に離さないと決めた。


「……わかった」


私は少し微笑みながら、短く答えた。

その後は、お互い交代で寝て『女が起きたらすぐに起こす』という約束をして過ごしたのだが、結局のところ、二人ともすっかり睡眠を十分にとってしまった。

窓の外はすでに明るくなり、朝日が出始めている。

女が気絶してから、もう半日以上だ。


(……いくらなんでも、そろそろ起きて良くないか?)


私が本を閉じ、呆れたようにそう考え始めた、まさにその時。

ベッドに寝かされていた女の体が、ビクッと微かに痙攣した。どうやら、意識が浮上してきたらしい。


私は近くにあった適当な椅子を引き寄せて座り、静かに女を少し見下ろす位置へと歩み寄った。

さて、この『招かれざる客』に、どう落とし前をつけさせようか。


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