Recollection-40 「鬼」
ザザザザ、ザザザ!
「こっちだ!陣形を思い出せ、囲むんだ!」
「背後に回れ!コルメウムの四神の伝説が本当なら相当な手練れだ。気を抜くなよ!」
敵兵3人1組とし、その数約90名が1人の大男を追い詰めようとする。
朱雀のゴウは後退りしつつ、敵兵が視界に可能な限り捉えられる様動く。
そして木々の生茂る森へ入った。
「、、、気を付けろ!コーポリス兵はどうやら土地勘、、いやそれ以上の地理戦略を使う様だ。不用意には攻めるな、先ずは囲め!」
こう叫んだ少し頭の切れる敵兵小隊長のバニアと言う男。
考えを口に出して相手にワザと聴かせている。陽動作戦で攻撃方法を限定しようとしていた。
「貴様の思惑は分かっているぞ!木々を盾や身を隠す為の道具として使い戦うのだろう⁉︎我々は伝説の男を倒す為には手段は選ばない、1対多で確実に貴様の首を討ち取る!」
バニアはこの人数で遠慮なく攻撃するつもりだ。
「光栄に思うがいい!貴様の戦い方如何によっては、これだけの相手に善戦したと言う伝説は我々が後世に残してやる。」
どうやら朱雀のゴウを囲み終えた様だ。
木々の隙間からジリジリと間合いを詰め、一斉に攻撃しようとしている。
(敵さんも中々考えてきたな、、でも、それでは詰めが甘いのでは?)
朱雀のゴウは、どしりと腰を落とした構えをとる。
バニアが指揮する鯱の陣はほぼ準備完了した。そして叫ぶ。
「、、かかれぃ!!!」
しかしその瞬間、彼はふと、疑問を持つ。
(この四神の1人は、森の中へ自ら入った。
あの巨大な戦斧をもって。
あの木々の中で、アレを振り回して戦うつもりなのか?いや無理だ、上段からの攻撃だけでは四方八方から来る『鯱の陣』は崩せない、、、。
いや、俺ならしない、、戦斧、、大きな斧、、、斧⁉︎、、何をする?斧でする事、、
まさか、、、⁉︎
まさか!!)
時既に遅し。
ブゥヴォンッ!
ガガガッガッガガッ!!
ギギギギギィイッッ!!!
ズドオオオォォンン、、、
朱雀のゴウは戦斧を横薙ぎに一周し、木を何本も切り倒したのだ。唯の一振りによって。
通常、斧で木を切り落とすのは大変な労力が必要となる。削り取る様に切り込む角度を変え、何度も打ち込み倒れる方向を調節する。
しかし、朱雀のゴウの一撃は違った。それは「圧力」が圧倒的に違うのだ。戦斧の刃が木に当たった瞬間、腕の膂力のみで圧し切った。斧で木を叩き切るのとは大きく異なる、それはまるで「草刈り」の様な、、。
「ぐおお!脚が木に挟まって動けねぇ⁉︎助けてくれ!」
そう叫ぶ者もいた。
頭に倒れてきて直撃し、頸椎骨折で死亡した者もいた。
敵兵22人がこの一振りにより多種多様な怪我や死因で戦闘不能になった。
「森の中に逃げたのではない、、誘い込まれたのだ!逃げ道を塞ぐ為に⁉︎」
バニアが気付いた時には手遅れだった。
ブゥヴォオンッ!
ガガッガッガガガガッ!!
ギギギギギィイッッ!!!
ズドオオオォォンン、、、
朱雀のゴウはまだ止まらない。二振り、三振りと木々を薙ぎ倒してゆく。
形を変えてゆく森の中から無様な悲鳴と助けを呼ぶ声が秋夜に響く。
58名の敵兵が、十数分足らずで戦闘不能となり、残りの約30名は戦意喪失する。
「鯱の陣が、、全く機能しない⁉︎、、な、何なんだ⁉︎、、俺たちは今、何を相手に戦おうとしているのだ、、、⁉︎」
バニアはあまりの出来事に躊躇逡巡としていた。
ドンッ!
倒れた木々の中から不自然な大きな音がした。
ズンッ!
と同時に、バニアの前に朱雀のゴウが足元に砂煙を巻き上げ現れた。
ここまで跳ねたのだ。
「ふぅ、流石に疲れたね、、さて、伝説として何が起きたのか語れる様に、早く逃げた方が得策では?」
ゴウはバニアに尋ねた。
(戦斧一振りで木々を斬るだと⁉︎そんな、そんな馬鹿げた事が⁉︎、もし、、、もしその木々が「兵士」だとしたら、、!!)
「、ぅ、お、鬼だ、、、いや、鬼神だァッ!!」
バニアは自軍の方へ逃げ帰ってしまう。それを見た残りの兵も雲霞の如く後ろも振り返らずに逃げ惑う。
「鬼神とはまた大袈裟では?まあ伝説はどうあれ、これで敵さんが引き下がってくれれば助かる、な。」
朱雀のゴウは一仕事を終えると、総隊長の命に従い、北へ向かう。
ここまで読んで頂きまして本当にありがとうございます!
まだ1/4ではありますが、何卒気長に楽しんで頂ければ幸いです。
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