6話 女心
「珍しいですね、ナイアさん。外まで大声が聞こえてました」
黒い女は少しだけ驚いたかのような口調だった。顔は相変わらず無表情だったが。
「嬉しくて嬉しくてね。もうたまらなくって少しだけはしゃいじゃったんだよ。すまないね、詩音」
少しだけ平静を取り戻した女は相変わらず話し続けている。そして、俺の腕をまるで恋人がデートでもするかのように両腕で強く抱え込んでいた。ちなみに服は全て脱いだままだった。
何も覆うもののない解放されたおっぱいは非常に柔らかい。この分だとFカップくらいはあるかもしれない。柔らかい。ありがとうございます。ありがとうございます。生きててよかった。
いかん、おっぱいに負けるな。これは呪われたおっぱいだ。手を出したら死ぬ。明らかに地雷だ。触った瞬間俺はベッドに連れ込まれて全身を尻の穴まで舐め回されたり、股間が一ヶ月くらいなにをしても勃たなくなるくらい絞られそうだ。
この女は怖い。黒い女も怖いがこっちも相当怖い。今のところまだ殺されたりはしてないがひたすら怖い。人前で全裸でニコニコしてる時点でやばい。どうして俺はおっぱいに触れているのにこんなに生きてる気がしないんだ。おっぱいはもっと良いもののはずだおっぱお。
おっぱいをね、触るときは静かに触りたい。
静かに集中して触らなければいけないんだよ。
おっぱいを触るときは救われないといけない時間なんだよ。
詩人 両手におっぱい
いかん、混乱している。気づけば脳内で謎の詩人が謎の詩を詠んでいた。とりあえずこの坊主頭の全裸アイマスク装備女と距離を取りたい。だが、迂闊なことを言うと死にそうな気もする。
「ナイアさんとおっしゃるんですね。少し・・・腕を離して頂けたら」
「なんだいその名前は?僕の名前はロマだよ。夫には本名で読んでほしい。出来れば愛と情熱を込めて名前を呼んで欲しい」
グイグイ来る。すごくグイグイ来る。そしておっぱいを押し付けてくる。ありがとうございます。柔らかい。柔軟剤は何を使っているのだろうか。
駄目だ、おっぱいに流されるな。とりあえずこの女の興味が失せるようなことを言おう。
「実は私・・・筋金入りのロリ魂なんですよ。ははは、近所の保育園通いが趣味なんです。たまに地方にも遠征します」
「任せてくれたまえ、なんとかしよう」
だめだった。良くわからないがなんとかしてくれるらしい。ロリに変身とか出来たりするのだろうか?まさかな・・・
「実は私・・・そこにいる魔法少女が好きなんです。今回の旅で告白する予定でした。だからあなたの気持ちには答えられないかなーって」
困ったときの魔法少女頼みだ。さすがにこの手は効くだろう。俺にも自爆ダメージは来るが仕方ない。
「構わないよ、私は浮気を許そう。君が誰に手を出しても出されても構わない。最後はどうせ私のもとに帰ってくる。だから、どんどん誰とでも好きにしてくれ。なんなら全員でまぐわおう。色んな体液にまみれよう。私は色んな体液にまみれ汚れたあなたの姿も愛そう。夫婦なんだからあなたの全てを受け入れる。愛する夫の我儘くらい聞くさ。包容力の塊なんだよ私は・・・いい女だろう?」
だめだった。思っていたよりも遥かに愛が深い。前世で実は夫婦だったのか?くらいグイグイ来る。そしておっぱいが柔らかい。ふと魔法少女の方を見ると少しだけ頬を染めていた。どうやら思っていたよりも大きな自爆ダメージが来たようだ。
違う、そうじゃない。この女を遠ざけたいから言ったんだ。それくらい気付け。あと、コスプレした変態爺の頬を染めた姿ははっきり言ってキモいからきつい。
色々どうでも良くなりつつある俺は一発くらいやってもいい気がしていた。もうどうでも良くなりつつあったんだ。ついつい魔が差した。
よく考えればこの全裸でアイマスクをつけている坊主頭の女は組織のトップなのだ。つまりなんだ・・・この組織を宗教じみた組織と考えればその組織のトップはある意味聖女と言えなくはない。多分そうだろう。つまりこの女は俺が夢にまで見た聖女であり性女だ。
やべえ、よく見ると魔性だわこの女。
坊主頭とアイマスクで一瞬うわぁってゲンナリするけど、よく見ると顔立ち整ってるし相変わらずアイマスクつけてるけど唇がエロい。何かチロチロと舌を出して唇を舐めている。ひたすらエロい。明らかに誘っていた。
聖女は誰かの手で開発され既に性女になっていた。だがそれも悪くない。悪くないと思う。
俺はフラフラと誘いにのり聖女の生おっぱいを揉みしだいた。聖女は無抵抗に嬉しそうにしていた。
「なんだい?したくなったのかい?」
いかん、このままでは結婚してしまう。女の興味を削がないと。
「いやあ、実は嘘なんですよね。さっきの」
「さっきのって?」
「実は死ねないって言ったことです。ごめんなさい。どんな反応帰ってくるかなーって単なる興味だったんです。申し訳ない」
・・・・・・・
女の動きが止まった。
「・・・本当かい?」
「ええ、本当です」
「嘘じゃないのかい?」
「ええ、本当に申し訳ない」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「そっか」
女は笑った。力ない笑いだった。
ヒュッ
ドサッ
「本当だ。再生しないね」
身体のバランスが崩れた。
気付けば倒れていた。
ふと目の前を見ると首のない誰かの胴体が見えた。
俺はそのまま意識を喪った。




