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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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278:ラス・イコメク-4-3

「ーーーーー!!」

「むっ……」

 ラス・イコメクにニグロム・ローザを突き刺した回数が百回を超えた頃。

 唐突にラス・イコメクが叫び声を上げる。

 同時に私に向ける目がそれまでの自信に満ちたものではなく、何かに怯える様な表情に変わる。

 これは……私の精神か魂に対して何かを仕掛けたが、私の信仰心によって弾き返されたか?

 なんにせよ、ここが勝負の別れどころか。


「手が空いているのは全員……」

「『バンデス・フレイム・エネミ=セブン・ボムランス・ツェーン』!」

「『サンライ・シャイン・ワン・レイ・ツェーン』!」

「『ルナリド・シャドウ・ワン・スライス・ツェーン』!」

 一斉攻撃を仕掛けるように、と、言おうとしたが、サロメたちが行動を起こす方が遥かに早かった。

 ラス・イコメクから生まれたモンスターたちへの対応をしつつ、手が空いているメンバーによる攻撃が次々とラス・イコメクへと降り注いでいく。


「ああぁぁ……おのれええぇぇ!母を……あああぁぁぁ!?」

 当然、攻撃をすればしただけラス・イコメクからモンスターが生み出される。

 サロメたちの攻撃によって飛び散った肉片や血からは様々な種類のモンスターが出現する。

 だが、ラス・イコメク自身の精神状態が不安定であるためだろう。

 現れたモンスターたちはそれまでに生み出されたモンスターに比べると遥かに弱々しく、ものによっては生み出されてから数秒もしない内に自壊して消滅してしまう者も居た。


「なんだっ!?この痛みは!?妾が削られ……あああぁぁぁ!?」

 そして、精神状態が不安定と言う事は、ニグロム・ローザが纏うメンシオスの黒い霧に対する抵抗力が弱まると言う事でもある。

 これまでは確固たる精神と言う強固な防壁によって僅かにしか浸食できずに煩わしさを与えるのが関の山だったが、今ここでメンシオスの黒い霧はラス・イコメクの心身に明確なダメージを生じさせるほどになっている。


「こんな……こんなところで終わってたまるかああぁぁ!」

「っつ!?」

 だが、この程度で終わるほどラス・イコメクと言う存在は甘くはなかった。

 ラス・イコメクの体が崩れ落ちる……否、灰と化して、私の茨による拘束を抜けてくる。


「妾は!妾は万産界・皆産みの魔鬼王ラス・イコメク!この世を生み直す者であるぞ!貴様のような母の意を無碍にするものなぞに負けはせぬ!!」

「ぐっ!?」

 そして半分霊体と化した体で私の肩に噛みついてきて、苦痛を与えると共に、私の精神と魂を浸食しようとしてくる。


「『ルナリド・シャドウ・フロト・バスト・ツェーン』」

「むご……ああああぁぁぁぁ!?」

「ルナッ!」

 しかし、それよりも早くに蘇芳色の爆発が生じて、ラス・イコメクは私の体から引き剥がされる。

 魔法を放ったのは……遂にクレセートから到着した『巡礼枢機卿』カミア・ルナだった。

 で、ルナが到着したと言う事はだ。


「『サクルメンテ・カオス・ウィ=バフ・エハンス・ツェーン』、『サクルメンテ・ボイド・ワン=デバフ・エクステ・ツェーン』」

「ーーーーー!?」

 当然タイホーさんもいる。

 そして、タイホーさんが放った魔法によって、私たち全員にかかっているバフはその効果が大幅に増幅され、ラス・イコメクにかかっていたデバフは効果時間が数倍に延長された。


「あ、当然僕も来てますよ。裏方ですが」

「ヤマカガシ」

 と、いつの間にか、私の耳の辺りに土の蛇が絡まっていて、ヤマカガシが囁いてくる。

 まあ、ヤマカガシがこの場に居れないのはしょうがない。

 ドレインフィールドは健在……ん?


「あああぁぁぁ!?妾の、妾の力が抜けて!?」

「と言う訳で、裏方らしく、ちょっと舞台の方を弄って、一時的にですがドレインフィールドを無効化させてもらいました。本体が来ないと発動できないんですけど、準備しておいてよかったです」

「ボスの領域魔法の無効化とは、随分とエグイ魔法じゃない……」

「そこは便利と言っておいてください」

 気が付けばラス・イコメクのドレインフィールドは解除されており、ドレインフィールドに対抗するためにかけられていた自動回復魔法によって生き残っている面々の傷は跡形もなくなっていた。

 口振りからしてヤマカガシが何かをしたのだろうが……とんでもない魔法を使われた気がする。


「まあ、なんにせよ。ありがたい話ね」

 私の眼下ではルナの指示の下、灰と霊体が入り混じったラス・イコメクに対する一斉攻撃が行われている。

 色々とやっているのだろう、もはやラス・イコメクの体から新たなモンスターが生まれることは無く、レギオンを遥かに超える数による暴力の前では身じろぎ一つ取る余裕もない。


「まだだ……まだ終わらないっ!」

 だがそれでもラス・イコメクの目からは戦意は失われていない。

 だから私は油断なくニグロム・ローザを構えて、トドメの一撃を叩き込む準備をする。


「せめて貴様だけは……エオナ!貴様だけは道連れにしてくれる!!」

「なっ……!?」

「はやっ……!?」

「馬鹿なっ……!?」

 ラス・イコメクの最後の一撃は残された己の命をそのままスピードに変換したような一撃だった。

 全身をバネのようにして跳び、大きく口を開いて噛みつき、先程噛みついた場所に再度歯を突き立てた。

 物理的にはただ茨を組んだだけの体であり、幾ら損傷したところで問題は無い。

 だからこそラス・イコメクは私の精神と魂に噛みつき、腕の感覚を奪い取っていき……その直後に殺到した攻撃によって全身を焼かれ、首を断たれ、心臓を止められ、完全に息絶えた。

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