257:ラス・イコメク-2
「準備は着々って感じだな」
「ええ、今回は総力戦だもの。そして、レギオンボスが相手となれば、戦闘員だけじゃなくて非戦闘員の働きも重要になってくるわ」
私は居住区の入り口付近でゴトスと合流すると、居住区の状態を確認しつつ面会区に向かう。
エオナ=マネージとエオナ=ファームから問題が無いとは聞いているが、他人の記憶だと少しだけ思い出すのに時間がかかって緊急時には問題になるので、直接の確認は必須である。
そうでなくとも、二人とは別の視点から見る事で何かしらの問題を発見できる可能性もあるのだから、きちんと見ておくべきだろう。
「戦闘員は……やっぱり俺が中心か?」
「そうなるわ。今回は私も出るけど、たぶん、私はラス・イコメクの大規模攻撃を潰したり、『フィーデイ』に出て行かないようにする事を優先することになる。そうなると、他のメンバーに指示を出す余裕は……まず無いわ。だから、お願いね」
「分かった。連戦ってのは精神面で若干きついが、まあ、何とかなるだろ」
「あ、それと今回はサブリーダーも三人か四人ぐらいは、指示の優先順位含めて決めておいて。たぶんだけどルナたちが到着するまでは戦線の維持が限界で、場合によっては三日間ぐらいは戦い続けることになるだろうから」
「……。まあ、そうなるか」
魔鬼王ラス・イコメクとの戦闘は……ルナたちが何時到着するか次第ではあるが、三日間は戦い続けるつもりで動いたほうがいいだろう。
なので、定期的に戦闘メンバーを入れ替えて、休憩と戦闘を繰り返してもらう事になる。
で、本音を言えば1チーム当たりの連続戦闘時間は1時間以内に抑えたいところだが……人数と休憩の内容を合わせて考えると、たぶん3時間は戦ってもらう事になるか。
やはり厳しい戦いになることは避けられなさそうだ。
「ま、やるしかないな。勝てなきゃ世界が滅びる以上、逃げる選択肢なんて無いわけだしな」
「そうなるわね。悪いけど頑張ってもらうしかないわ」
ゴトスは少々考えた後に一度大きく息を吐いてから口を開く。
なお、レギオンの指示どころかレイドの指示ですら私には厳しいので、この辺りはゴトスに丸投げである。
まあ、ゴトスの表情と指の動きからして、4チームぐらいは構築できそうだが。
「さて、他の私たちは……と」
私は他の私たちが何をしているのかを確認する。
エオナ=マネージとエオナ=ファームは戦闘の準備の中でも、裏方の方を優先して整えており、糧食に装備品、薬と医療体制の構築を進めてくれている。
エオナ=トレインとエオナ=ライブラリは特別面会区の最終調整中、封印が解ける先を弄った影響かLISBが特別面会区に出現し始めているが、特に脅威にはなっていない。
エオナ=ジェイルは戦闘中に万が一が起きないように調整中で、ヨミノマガタマはミナモツキと同じレベルで封印済み。
エオナ=ロザレスは待機中。
エオナ=フェイスは……ルナリド様からの情報を送って来てから連絡が付かない、どうやら意図的に情報を封鎖しているらしい。
とりあえず前哨戦として面会区では既にLISBとの戦闘が始まっていると伝えておこう。
「問題はなさそうだな」
「ええ、今のところは順調ね」
私とゴトスは特別面会区の入り口に着く。
さて、特別面会区だが、全部で三つの層に分かれている。
「エオナ様!えーと……」
「『フィーデイ』の私よ。それで準備はどう?」
「順調です。リスポーン地点の設置に各種補給が行える拠点はもう整っています。後は状況に合わせて、居住区から持ち込んだり、中に送り込んだりという感じです」
「そう、なら大丈夫そうね」
一つ目の層は補給の為の層であり、各種物資に加えて人と武器の治療設備に、倒れたプレイヤーたちのリスポーンが出来る場所の設置もされている。
基本的には安全なエリアであり、ラス・イコメクとの戦いの場には出せないが、後方支援なら出来ると言うメンバーはだいたいこちらに集まっている。
「調子はどうだ?」
「メンバーは集まりました。仕分けも済んでます。後はゴトスさんにお任せする感じですね」
「分かった。なら、早速細かいメンバー割に情報の共有、作戦会議に移る」
「「「はい!」」」
二つ目の層は隔離の為の層であると同時に、準備の為の層でもある。
今はゴトスと共に戦うメンバーが集まっていて、早速作戦会議を始める。
ここは最終防衛ラインでもあり、一つ目の層にラス・イコメクの力が及ばないようにするための隔壁でもある。
そのため、一つ目の層に繋がる扉が開いている時は三つ目の層は開かず、その逆も同様である。
なお、二つ目の層は複数個存在していて、入れ替えをスムーズに出来るようにしてある。
「向こうの私たちは……」
『LISBについては問題なくシバキ倒してるよ』
『封印の解除についても何時でも大丈夫です。出来るだけ苦しめた上で出せますよ』
三つ目の層はラス・イコメクと戦う為の層。
広大なバトルフィールドであり、数百人単位で戦えるような広さがある。
今は私が二人に、LISBが無数に居るだけだ。
「ゴトス」
「おう、チーム分けは完了した。4チームに分けたから、順番に出していくことになる。ただ、細かい部分のすり合わせがまだだから、もう少し待ってくれ」
「分かったわ」
今回の戦闘メンバーはマミラセンシシに比べるとかなり多い。
1チームにつき15人か16人、4チーム合計で60人と少しと言うところか。
後方支援の非戦闘員まで含めれば、レギオンどころの規模ではないだろう。
尤も、それでもなお厳しいとみるべきだが。
「よし、準備完了だ。まずは俺たちだけが出る」
「では、開門」
そうして、ゴトスの言葉と共に、私とゴトスたち第一チームが三つ目の層に踏み込んだ。




