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22話

あの日の夜、私達の里は壊滅した。

聞き慣れない音と木々が薙ぎ倒される音を聞きながら、私は家の中で震えるだけだった。

私の大好きなゴブリン。

大好きなゴブンが私達を守ってくれると信じているだけだった。


そして彼は死んだ。


彼だけじゃない。村長も防衛隊長も戦士も皆、殆どのゴブリンがあの巨大な化け物に踏み潰された。私の家もそうだった。

家に隠れたまま押し潰された。友達もいた。木の兜のことを教えてくれたお姉さんもいた。いつもガミガミ煩いおばさんも、狩りの獲物をわけてくれるおじさんも…皆……あの夜呆気なく死んだ。

何とか生き延びた私達は『連合軍』の駐屯地がある西の国境線砦を目指している。巨大な森から、軍を目指す人が集まる街デルマルチへと。


約一週間が経った。満足に眠れず、食糧も無く、森の中で狼や熊に襲われ、逃げ延びた仲間を減らしながら、ようやく街に辿り着いた。

あと少し…

あと少しで…

あの化け物に復讐できる…。


私は…リンカは…大好きなゴブンを奪った化け物を許さない。


門から駆け寄る、ゴブリンの同胞を見かけた時、安心したのか疲れが限界に達したのか、私は意識を失った。



***************



おかしい…。定期的に来ている奴隷買取出張店からの定時報告も、商品の納入もない。

出張店の店主には勉強の為に息子の中でも特に優秀な長男を派遣していた。親馬鹿だと商人仲間には馬鹿にされるが、長男は優秀で律儀な性格の男で一度も、締日を反故した事は無かった。


不安を覚えた私は信頼できる古参の従業員とお抱えの護衛に出張店の調査を命じた。


それから数日後、私の世界は固まった。


「な、何を言っているルドルフ?そんな笑えない冗談を覚えたのか?お前、らしくもない」


「代表…。残念ながら事実でございます。出張店は崩壊し、廃墟と化しておりました。そこに勤めていた者達も、死後、獣に食い荒らさ…。生存者は皆無かと…」


私は崩れるように椅子へと落ちた。


「おい、ガモン。貴様もルドルフの冗談は笑えないと言ってやれ…」


「旦那…悲しい事ですが、事実です。」


「そうか…。そうか…。」


私は手で顔を覆って、机に伏した。ルドルフとガモンは私に気を使って執務室から出て行った。私は出ない涙を心で流し、復讐の算段を進めていく。

商人は如何なる時も、常に冷静に、利益を考えろと、私は息子に教えてきた。だからこそ私は息子の誇れる親でなくてはならない。

引き出しをの鍵を開け、金貨100枚入った袋を取り出し、机の上に置く。


「ガララ、そこにいるのであろう。」


光が届かない室内の隅の陰から青白い男が姿を現した。


「それが契約だからな。」


こいつは冒険者ギルドとは違い、暗殺や略奪など裏の仕事を受ける統合軍の暗黙の了解とされる裏ギルド『毒蛇』の構成員の1人、ガララだ。見た目はただの青白い市民だがその中には無数の暗器を所持する暗殺と護衛のスペシャリストだ。


「ここに金貨100枚がある。これで出張店を潰した奴の首を持ってこい。毒蛇への依頼だ。」


「3倍だ。」


私は舌打ちをし、机の上に更に金貨袋を2つ追加した。するとガララは机の前まで歩み、金貨を確認していく。


「その依頼、毒蛇が承った。」


この世界で弱い商人はあらゆる力に喰われる。だからこそ非合法の力も付け、あらゆる力に対応しなくてはならない。

私もそうしてこの奴隷商を大きくしてきた。時には暗殺を使い、時には賄賂を渡し、暴力や権力に対応し続けて商店を成長させてきた。その商店に泥を塗った事、我が息子の命を奪った事、2つの代償はその命で償って貰うぞ。

後悔し、苦しみながら死ぬが良い。

ゴブリンと奴隷商からの視点でした。

エピローグか、プロローグかそんな感じの話だと思ってください。

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