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21話

俺はあの後、寝室へと逃げ込み布団に潜った。ナビの『お疲れ様。よく頑張ったね。』と言う言葉を最後に記憶が無い。

頭がショートして寝てしまったんだろう。ちょっと気不味い気がしながら、寝室の扉を開ける。


『おはようございます。貴方が寝てしまったので、私が物資の回収の指示をだしたんですよ。まったく。目録の確認だけでもしてください。』


「あ、あぁ。申し訳ない。」


『寝起きで目ヤニとか凄いので、シャワーを浴びてくると良いですよ。あと寝癖も酷いです。』


「マジで?大人しくシャワー浴びてきます。」


『素直でよろしいですね。』


ナビなりの優しさを嬉しく思いながら、俺はシャワーを浴び、キッチンへと向かう。その時、リビングの隅に布団に蹲ってる者を見付けた。ハウゲンの妹さんだ。

俺はコテツとコハクを手招きして、呼び寄せる。


「あの…すまん。疲れて寝ちゃった。あれから妹さんはどうだった?」


俺の問いにコハクが答えてくれた。


「実は妹さん、シャワー室でそのまま寝ちゃったのです。ウチとアラクネ先輩とで体を拭いて、服を着せてから布団に運んだのですが…それから目覚めることなく寝続けてます。呼吸音は聞こえるので生きてはいるのです。」


聞いてますよのアピールなのか、コハクの虎耳がピクピク動く。ケモミミとかあまり興味なかったけどこれは凄く可愛い気がする。

だが平常心を心掛け、コテツとコハクにお礼を言いつつ頭を撫でてやる。2人は嬉しそうに目を細めると尻尾の先だけフリフリ動かしていた。虎人族ってことはネコ科。なるほど。

キッチンで歯を磨きながら、今後の事を色々と考える。一先ずは、兵器達を労ってからエルフ達を里近くまで運び始めるか。その道中で妹さん用の個室を作って…そのついでに兵器達の部屋という名の格納庫と、予定よりかなり早まるが双子の部屋を作るか。もうそのついでに色々と自宅内の本格カスタマイズしよう。あぁ、それと回収品の目録も確認しなきゃな。艦長って多忙だ。やっぱりご奉仕家庭用兵器メイド型欲しいな。一覧にないけど。


歯磨きが終えた頃、玄関からアラクネが入ってきた。


「おはようアラクネ。昨日は色々とありがとう。助かったよ。」


『イエ、マスターノオ役ニ立ツノガ私ノ存在意義デス。朝カラ申シ訳ゴザイマセンガ、先程、ハウゲンガマスタート、話ガシタイト言ッテマシタ』


「了解。司令室に戻ったら話してみるよ。あっ、あと10分後に兵器達に司令室に集まるように伝えてくれる?昨日の礼を伝えたいから。」


『礼ナド、身ニ余ル、光栄デス。必ズ、皆ニ伝エマス。』


「そんな大層なもんじゃ無いから気にしないでくれよ。それじゃまたあとで。」


俺は司令室に戻り受話器を取る。正直、気が重い。だけどここで話さねばなるまいて。直接は無理だし。


「ハウゲンさん、話ってなんですか?」


「む?マコトか。忙しい所すまぬな。妹の様子はどうだろうか?」


「昨日、シャワーを浴びてから寝続けてますね。このまま自然と起きるまで寝かしておこうかと思っています。」


「そうか。…辛い思いをさせてしまったからな。…いや、辛気臭くさせてすまぬ。私が伝えたかったのは、出発するのであれば魔法を使う故に声を掛けろと言いたかっただけだ。」


「助かります。後30分程で出発しましょう。今回は急ぐ訳ではないので、魔力供給は無しで行きましょう。他のエルフの方々に要らぬ誤解を与えるのも避けたいですし。」


「確かに、アラクネ殿に魔力を供給されている姿は、穏便なものではないからな。わかった。ではまた、出発の時に。」


「はい。よろしくお願いします。」


俺は受話器を置いて、それなりに出来たことで一安心した。以前とは少し違う空気は仕方ない事だろう。


時間通りに兵器達は司令室へと集まってきた。いつもの通り円盤は以下略。


「昨日は色々と迷惑を掛けてすまなかった。」


開口一番に謝罪をして、頭を下げる。兵器達は慌てて俺を擁護する。


『これはマコトに必要な事なんです。皆、素直に受け取りましょう。』


ナビの一言に兵器達は静かになり、代表してアラクネが謝罪を受け入れたことを伝えてきた。


「いつもお前達に助けられるな。ありがとう。それと本来は昨日言うべきだったんだが、昨日は作戦を成功に導いてくれてありがとう。そしてこれからもよろしく。」


俺が再び頭を下げると、再び兵器達はアタフタする。


『貴方、その頭を下げる癖はどうにかしましょう?人として魅力だとは思いますが、今はこの自宅艦の艦長ですので、艦長らしい振る舞いと言うのも必要になってきます。』


「む!?それもそうか。なら胸を張ってみよう!」


『その前に猫背を直しましょう。』


「こ、骨格猫背だから直らないだよ!」


『そんな骨格聞いた事ありません。直しましょう。』


「ぐぬぬ。…そうだ!スライム君、昨日はご苦労様!凄い活躍だったったらしいな!さすが俺が選んだ兵器だ!俺達の味方になってくれて嬉しい限りだよ!これからもよろしくな!」


勝ち目がない戦はせずに、戦略的話題逸らしを敢行した。これは艦長の英断と言っても良いくらいだろう。えっへん。


『おほめにあずかりこうえいです!これからもがんばってなかまのやくにたつようがんばります!』


スライム君は嬉しそうにピョンピョン跳ねている。癒される光景だ。


「アラクネ、昨日はご苦労様。俺のワガママのフォローや、物資の回収も現場で的確な指示で、効率よく回収してくれたらしいな。これからもよろしく頼むよ。」


『勿体無キ御言葉。日々精進シ、今後モマスターノ要望ニオ応エスベク邁進シテ参リマス。』


下半身蜘蛛なんだけどその佇まいはまるで女騎士の様な凜とした空気を纏っていた。


「蜘蛛型戦隊、昨日はご苦労様。お前達がいの一番に危険な偵察任務をこなし、信頼できる情報を持ち帰ってくれる事で、作戦の成功率は上がっている。これからも頼りにしているよ」


蜘蛛型戦隊は洗練された動きで敬礼をする。そして俺はそれに対して返礼をした。


「ルンバ君達、昨日はご苦労様。お前達が常に俺らの自宅を目を光らせ守ってくれているからこそ俺たちは作戦に集中できる。これからも俺たちの盾であってくれ。あと、日々の掃除ありがとう。お陰で自宅内はいつも綺麗だ!」


『『『ピピッ』』』


ルンバ君達は足を上げ、気にするなと言っているような動作をした。昔から愛らしい奴らだ。


「カラス君達、昨日はご苦労様。いつも俺らの目となり、耳となり、目的地を目標を探してきてくれるから俺たちは迷う事なく真っ直ぐ進めている。これからも俺たちが進む道標の様に羽ばたいてくれ。」


『『クワッ。』』


少し微笑む様な仕草をして、カラス君は何事もなかった様に振る舞う。こいつノリが良い上に最近ダンディだな。


円盤にも感謝の言葉を伝えたいが、今は任務中だ。あとでメールを送っておこう。


「あとはエルフ達を無事に里に送り届ければこの作戦は全て完了する。あと少しだけど踏ん張ってくれ。それが終わったら、少しの間休息して英気を養おう!」


『『『オー!!』』』


「“自宅”発進!!」


俺がこの世界に来てから激動の一週間が過ぎた。ゴブリンの里壊滅から奴隷商館崩壊、そして盗賊アジト強襲とヒキニートにして自宅警備員だった当時の俺からは予想もしない激動の日々だろう。


そんな中で俺は実感した。




俺はどうやら、





『自宅警備員から自宅艦艦長になったようだ』





自宅艦は新しい異世界の道を進んでいく。

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