銀髪の少女と滅びゆく世界
世界の外から来た少女
世界は一つではありません。
空の向こうにも。
時の彼方にも。
まだ誰も知らない世界が存在しています。
そのどこかで。
今日も誰かが苦しみ。
誰かが助けを求めています。
白き賢医タクトは誓いました。
「患者がいる限り、どんな世界へでも行く」
その誓いは、ついに世界の壁を越えることになります。
銀色の髪を持つ少女。
ルミナ・アステル。
彼女は何を失い。
何を守るために、この世界へやって来たのでしょうか。
そして、彼女を蝕む未知の病とは――。
新たな診療が、今始まります。
第二部 第二話
「銀髪の少女と滅びゆく世界」
朝。
レーヴェン診療所の病室。
銀髪の少女はゆっくりと目を開けた。
「……ここは?」
タクトは優しく微笑む。
「安心して」
「ここは新王都フェルディア・ノヴァだ」
「僕は医師、タクト・フォン・レーヴェン」
少女は周囲を見回した。
見慣れない景色。
見慣れない人々。
そして、初めて見る優しい笑顔。
「私は……」
「ルミナ」
「ルミナ・アステルです」
フィリアは温かいスープを差し出した。
「まずは食べましょう」
「ありがとうございます……」
ルミナは涙ぐみながら小さく頷いた。
◇◇◇
診察室。
エドガーは診察結果を見て顔をしかめた。
「原因が分からない」
タクトも静かにうなずく。
「熱もある」
「でも感染症とは違う」
ミレイアはルミナの身体から漂う魔力を感じ取る。
「この子の命そのものが少しずつ消えている……」
アイオニアも首を振る。
「この世界の病ではありません」
「私も見たことがない病です」
◇◇◇
しばらくして。
ルミナは静かに話し始めた。
「私の故郷は……」
「星界よりさらに遠い世界」
「アステリアという国です」
誰もその名を知らなかった。
ルミナは続ける。
「空には七つの月があり」
「大地には光る森が広がっています」
「そこでは医術も魔法も発達していました」
「でも……」
その表情が曇る。
「黒い霧が現れたんです」
「黒い霧?」
ゼロスが立ち上がる。
「まさか……」
ルミナは震えながらうなずいた。
「その霧に触れた人は」
「原因不明の病に侵され」
「少しずつ命を失います」
「薬も」
「魔法も」
「効きません」
タクトは真剣な眼差しで言った。
「だから君は助けを求めて来たんだね」
「……はい」
◇◇◇
その夜。
ルミナの容体が急変する。
「先生!」
エマが駆け込んできた。
「ルミナお姉ちゃんが!」
タクトは病室へ走る。
ルミナは苦しそうに息をしていた。
「苦しい……」
エドガーが叫ぶ。
「酸素が足りない!」
タクトは落ち着いて指示を出す。
「気道を確保!」
「脈を確認!」
「絶対に助ける!」
フィリアはルミナの手を握る。
「大丈夫」
「あなたは一人じゃない」
ルミナは涙を流した。
「ありがとう……」
「先生……」
「助けてください……」
◇◇◇
その瞬間。
診療所の外に黒い霧が現れた。
空が暗く染まる。
ゼロスが剣を抜く。
「来たか」
ミレイアも杖を構える。
「この霧が病の原因なの?」
アイオニアは険しい表情で答えた。
「違う」
「あれは病ではない」
「世界を蝕む災厄そのものです」
タクトはルミナを見つめる。
「病でも災厄でも関係ない」
「目の前に患者がいる」
「僕は必ず助ける」
その言葉に、仲間たちは力強くうなずいた。
そして、新たな世界の運命を懸けた診療が始まる。
第二部 第三話「黒い霧と世界を蝕む病」へ続く――。
医師の使命
第二部 第二話「銀髪の少女と滅びゆく世界」をお読みいただき、ありがとうございました。
ルミナとの出会いは、タクトたちに新たな試練をもたらしました。
相手は、この世界の医学でも。
魔法でも。
神々の力でも解明できない未知の病。
しかし、タクトは迷いません。
「患者がいる」
その事実だけで十分だからです。
世界が違っても。
文化が違っても。
種族が違っても。
苦しむ命を救いたいという医師の想いは変わりません。
一方で、ルミナの故郷には「黒い霧」という謎の災厄が広がり続けています。
それは病なのか。
それとも、誰かの意思によって生み出された災いなのか。
タクトたちは、その真実へと足を踏み入れることになります。
次回――
第二部 第三話
「黒い霧と世界を蝕む病」
世界を滅ぼす黒い霧。
未知の病に挑む白き賢医。
そして、ルミナが隠してきた最大の秘密が明かされる――。




