ガンダムで、一番やばいのはセイラ・マス
ガンダムには「やばい」人物がたくさん出てくる。
シャアは言うまでもないし、アムロも十分おかしい。
思想がやばい人、行動がやばい人、戦闘力がやばい人。
いくらでもいる。
でも冷静に考えて、一番やばいのは誰か。
私は迷わず、セイラ・マスだと思っている。
当たり前のように物語にいるけれど、
設定だけ書き出すと、これはもう危険人物の塊だ。
セイラ・マスは、シャア・アズナブルの妹。
そして、ジオン・ダイクンの娘。
一年戦争という世界において、
この血筋は「爆弾」そのものだ。
兄はジオン側の象徴的エース。
父はジオン思想の創始者。
その娘が、連邦軍のホワイトベースに乗って、
普通に兵士をやっている。
現実の戦争だったら、
こんな存在は絶対に放置されない。
利用されるか、隔離されるか、消されるか。
どれかしかない。
でもセイラは、何も起こさない。
名乗らない。
主張しない。
血を振りかざさない。
ここが一番やばい。
彼女は、
・ジオンの象徴になれた
・シャアの切り札になれた
・戦争を政治的に揺さぶれた
全部できる立場にいる。
それでもやらない。
シャアが「血と名前」に縛られ続けたのに対して、
セイラはその血を、意識的に捨てている。
これは勇気とか優しさの話じゃない。
もっと冷たい判断だ。
自分が名乗れば、
誰かが利用し、誰かが死ぬ。
だから名乗らない。
英雄にもならず、
復讐者にもならず、
思想の旗にもならない。
ただの兵士として戦う。
これ、ニュータイプの覚醒よりも、
よほど異常な選択だと思う。
ガンダムは戦争の物語だけど、
セイラ・マスは、
「戦争で一番危険なものは何か」を
静かに体現している。
それは、
力でも、才能でも、思想でもない。
血縁と立場だ。
それを持ってしまった人間が、
それを使わない選択をする。
その異常さが、
彼女を物語の外縁に追いやり、
同時に、いちばん現実的な存在にしている。
シャアは目立つ。
アムロは語られる。
でもセイラは、語られにくい。
なぜなら、
彼女が動かなかったから。
ガンダムで一番やばいのは、
暴れた人間じゃない。
暴れる資格を持ちながら、
何もしなかった人間だ。
セイラ・マスは、
その代表だと思っている。




