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雑談三昧  作者: カトーSOS


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サブスクが文化を壊す

サブスクは便利だ。

私自身も使っているし、その恩恵を否定するつもりはない。

ただ、長く引っかかっている感覚がある。

作品は増えているのに、文化が軽くなっている気がすることだ。

この文章は、懐古でも否定でもない。

サブスクという仕組みが、文化に何をもたらしたのか。

その構造を一度、立ち止まって考えてみた記録である。

この構造に気がついている秋元康さんはすごい、という話をしたい。


AKB48のCD販売が叩かれていた頃、私はずっと思っていた。


これは音楽の話じゃない。

お金の流れの話だと。


音楽サブスクは、便利で、やさしくて、正しい。

誰でも聴ける。

すぐ聴ける。

安い。


文句のつけようがない。


でも、その裏で起きていることは、驚くほど単純だ。

1再生。

銭どころか、厘。


この数字を見た瞬間に、

「じゃあどうやって食うんだ?」

という問いが立たない人は、

たぶん事業の感覚を持っていない。


再生数は回る。

名前も知られる。

評価もされる。

それでも金が残らない。


サブスクは、

人気を測る装置としては優秀だ。


でも、生活を支える装置ではない。

AKB48は、その現実を直視していた。

だからCDだった。

CDという「物」を売り、

そこに体験を結びつける。


握手。

投票。

参加。


音楽そのものではなく、

関与に対してお金を払わせる。


これを「邪道」と言うのは簡単だ。


でも、現実から目をそらさない人間にしか、

この設計はできない。


多くの音楽人は、

「良いものを作れば、誰かが支えてくれる」

という希望を捨てきれなかった。


でも秋元康さんは、

その希望がいつか裏切られることを知っていた。


音楽は、

無料に近づいていく。

聴かれるほど、薄くなる。


広がるほど、稼げなくなる。


その未来を前提に、

先に手を打った。

CD文化を守りたかったわけじゃない。

CDを信じていたわけでもない。


金が落ちる構造を信じていた。


だからAKB48は、

音楽業界の中で異様な存在になった。

再生数ではなく、

販売数で殴り合う。

話題性ではなく、

キャッシュフローで生き残る。


結果として、

時代が追いついた。


今のアーティストたちは、

みんな別の形で同じことをしている。


ライブ。

グッズ。

ファンクラブ。

クラウドファンディング。


音楽単体では、もう食えない。


それを、みんながようやく認め始めただけだ。


AKB48は、

その答えを一足先に出していただけ。


1再生、厘。


この現実を理解した人間だけが、

文化とビジネスを同時に語れる。


だから私は、

この構造に気づいていた秋元康さんを、

素直に「すごい」と思う。


夢を壊した人ではない。


夢が壊れる前に、出口を作った人だから。


サブスクが文化を壊す、という言い方は、少し強すぎるかもしれない。

正確に言えば、

サブスクは、文化が育つために必要だった“重さ”を削ぎ落としている。

それは、善意の結果だ。

誰でも触れられるようにする。

敷居を下げる。

無駄を省く。

そのすべてが、間違っていない。

ただ、文化というものは、

無駄や不便や後悔の上にしか積み上がらない。

最後まで読んでしまったつまらない本。

高い金を払って買った合わないCD。

そういう「失敗」が、次の選択を形づくってきた。

サブスクは、それをさせてくれない。

やめられる。

飛ばせる。

忘れられる。

結果として、

体験は増えるが、記憶は残らない。

AKB48がCDを手放さなかった理由も、

今のアーティストたちが音楽以外で稼がざるを得ない理由も、

すべて同じ場所につながっている。

1再生、厘。

この数字をどう受け止めるかで、

未来の文化の形は変わる。

私は答えを持っていない。

ただ、目をそらさずに、この現実を見ていたいと思っている。

便利さの中で、

何を守り、何を失っているのか。

それを考え続けること自体が、

もしかしたら、文化を手放さないための

最後の抵抗なのかもしれない。

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