第二話「入隊試験」
昨夜は悪夢を見た。思い出せないが、何かに追いかけられる夢だった気がする。兎に角今日は連盟が迎えに来る日だ。外に出たら馬車が待っていて、私以外にも何人か試練に参加する人達がいた。大した事無さそうな奴等だ。
馬車に乗ってガタガタ道を何日も駆けて行ったら大きなドーム型の要塞が見えてきた。連盟の本部なんだろう。要塞の中に大きな広場があり、、、、本当に何も無かった、何も。中央に人が一人立っている以外は・・・・・・・
「あそこに立っている人を倒せ、それが試験だ」
この試験の教官が言った。
「おいおい、あんな武器一本も持ってない手ぶらの爺さんをぶっ倒すのが試験?楽勝だな」
参加者の一人の男がそう言うと、剣を構えてこちらに背を向けている相手に斬りかかった。
「甘いッッッ!!」
広場に立っていた老人はそう言うなり振り返って拳を突き出した。瞬きするよりも速いその突きは殺人拳と言うに相応しく、腹に老人の拳を喰らったあの馬鹿な噛ませ犬は惨めったらしく後ろに吹っ飛んでいった。
「まあ、そう甘くは無いよね」
あの老人、想像よりも遥かに強い・・・・・・!!
しかし、私は何としても突破しなければならない、、、、、、、、
教官から剣を受け取るとしっかりと構えて老人に向けた。
「なんだ?掛かってこんのか?じゃあワシから行くぞい!!」
そう言うと老人は驚異的な跳躍力で飛び掛かって来た。
私は間一髪でそれを避けたが次に繰り出された蹴りをかわすことはできなかった。
「グッッッ!!」
身体に重い一撃が来る、駄目なやつだ、これぇっっ・・・・!!しかし、気合いで耐えるッッッ!!
そして無理矢理残った体力で剣を突き出す!!だが、老人はそれを当然の如くかわした。
「あまり、、、、、舐めんなよッッ!!」
根性で剣を構えると、私は老人を睨んだ。
「ほう、耐えるか小娘ぇっっっ!!!」
そう言うと再び老人はこちらに向かって来る、目にも止まらぬスピードで。
刹那すらも置き去りにするその速度は視覚情報が脳に伝わる速度すらも圧倒的に上回っていた!!!
「死ねぇぃっっ!!!」
完全必殺の一撃、喰らったら確実にお釈迦になっちまうと魂が叫ぶ、この攻撃を攻略する方法はッッッ!!
私は足を前に踏み出した
私の腹を拳が貫通する。しかし、その時に隙ができる。その隙を逃さず私は剣を振り下ろしたッッ・・・・
ザクッッッ!!
老人は真っ二つに割れた、それと同時に私は意識を失った。
私は真っ暗な空間にいた・・・・・・
そんな私の目の前に暗闇を切り裂く一筋の光が差し込む。私はその光を手を伸ばして掴んだ・・・・・
「目覚めたか?小娘が大したもんだ、まさか殺しちまうとは」
試験場にいた教官がこちらを覗き込んで言った。
「腹に空いた穴は残念ながらまだ完全に塞がってはいない、しばらく休んでろ。それと、貴様の魔物討伐連盟への参加を許可する、とのことだ。」
多少の怪我を負ったが、無事参加できたようだ。穴の空いたお腹は包帯でぐるぐる巻きにされていて、動くと少し、いやかなり痛んだ。しばらく戦闘に参加できないようだ。
しかし、おそらく私は長い間寝ていたのだろう。私はひどく血に飢えていた。誰かをぶっ殺したい衝動に駆られていた。なので痛みは気にならない。私はベッドから起き上がると、そばに立てかけてあった剣を取った。
「おい、死ぬぞ?」
教官がそう言うも私の内に秘めたる欲望は抑え切れない。
「いえ、これくらいの傷はどうってことありません。戦わせて下さい!」
「マジかこの女、イカれてやがる・・・・・、じゃあ準備を整えてやるからせめてそれまではベッドに横になってろ!」
教官はそう言うと部屋から出て行った。
兎にも角にもこの世界で生きる目処は立った。これからじゃんじゃんダンジョンをぶっ潰して、お金をがっぽり稼いでやる!これからの生活に心を躍らせながらベッドに横になって私は再び眠りについた。