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014 越境キャラバン隊 2日目

新たな登場人物等

 ダイセル:小さな商隊の主。イケメン20代の男性、銀髪、銀瞳の普通の背格好の商人。シンシア達と王都から西の町ウルエボまで一緒だった。

 ※雑魚キャラ名無しから、ランクアップしました。w




014 越境キャラバン隊 2日目




小鳥の囀りで、シンシアは目を覚ました。

彼女は眼を大きく開くが一面の暗闇。なぜなら盲目の少女の瞳に光が宿る事は無いのだ。

シンシアは、昨日眠った時のことを思い出していた。


(そうだわ。私は草原で横になって・・・それからどうしたのかしら。)


シンシアは、横になってすぐに眠ったことは忘れていた。

アルミナは、シンシアが起きたことに気付いて挨拶をする。


「あっ。シンシア。おはようございます。」


シンシアはアルミナに挨拶を返そうとしたが、馭者たちが連れた馬たちが水場から戻ってきていることに気付いて少し焦っていた。


「アルミナ。おはよう。少し寝坊したかしら。今日も頑張りましょうね。

 早く朝食を摂らないと置いていかれそうですわ。」

「まだ大丈夫ですよ。馬に起きがけの水を飲ませただけだと思います。

 これから馬たちも草原の朝食でしょうから私たちも朝食にしましょう。」


シンシアは、アルミナの説明に納得して、アルミナとともに朝食の準備を始めた。


(よ、よかったー。これならゆっくり朝食が出来そうですわ。たぶん。)




シンシアとアルミナは、朝食を摂ったあと別にすることもなかったので馬達の様子を眺めていた。


(馬達を見てるといつまでも飽きませんわ。)


シンシアがそんなことを思っていると、突然チェスの大声が響く。


「出発準備!」


続いて『海の支配者』メンバーから次々に「出発準備!」の声が響く。

越境キャラバン隊は、さっきまでのんびりしていた雰囲気が無くなり、少し緊張した雰囲気に変わった。

朝食途中だった者は、咥えれるだけ口に掻っ込んでいる。

火を起こしていた者は、土をかけて素早く消した。


チェスは、少し落ち着いたのを見計らって、次の指示を出す。


「隊列準備!」


やはり『海の支配者』メンバーから次々に「隊列準備!」の声が響く。

馭者が馬を引っ張って、隊列を整えていく。

しばらくすると越境キャラバン隊の準備も整って、隊長の一言を待っていた。


チェスが叫ぶ  「隊列確認!」

ナターシャが叫ぶ「隊列確認!」

ママリーの声は聞こえない。

リンドーが叫ぶ 「隊列確認!」

昨日と同じように時計回りに指示が伝達され帰ってくる。リンドーまで特に異常の報告はない。


チェスが叫ぶ  「越境キャラバン隊出発 微速前進、前に倣え!」

ナターシャが叫ぶ「微速前進、前に倣え!」

ママリーの声は聞こえない。

リンドーが叫ぶ 「微速前進、前に倣え!」


今日の越境キャラバン隊は、国境にある湖まで進む予定だ。

ヒルデンブルグ王国とリベルナ王国を繋ぐ街道はいくつかあるが、今回シンシア達が使っている街道がもっとも旅には適していた。

馬車での旅は、馬に与える水を確保するのが大変なのだが、この街道では水場に困ることはない。

ちょうど国境にある湖は、ヒルデンブルグ王国とリベルナ王国の両国に流れる川の源泉になっていたため、

どちらの国から越境するにしても、その源流添いに進むことで水場に困ることがないのだ。




越境キャラバン隊は、順調に進んで午前中の休憩ポイントまで来ていた。

シンシアとアルミナは、今日も馬車に乗せてもらっているので楽ちんなのだが、馬車は座っているだけでも結構疲れる。

アルミナは、少し離れたところで剣を振っていた。一緒にいるのはチェス。彼女は、チェスから剣の手解きを受けているようだ。

シンシアは、馬車から降りて屈伸や背伸びをしていた。


(座ったままでは、エコノミー症候群にかかりますわ。たぶん。)


シンシアは、休憩中だったが探索魔法で周りを警戒していると、誰かがシンシアに手を振りながら近づいてきているのが解った。

シンシアは見えないので誰かまでは分からないが、相手にはシンシアが分かっているらしい。

シンシアが向き直ったのが見えたのか、男は少し小走りになって彼女のところまで来ると自ら名乗った。


「嬢ちゃん。ダイセルだよ。ダ。イ。セ。ル。

 冷たいなー。もう忘れちまったのかい。」


ダイセルは、イケメン20代の男性、銀髪、銀瞳の普通の背格好の商人だ。

シンシア達が王都から脱出する手段を探していたときに、たまたま便乗させる乗客をハンターギルド前で募っていた商隊がいた。

シンシア達は渡りに船とばかりにすぐに申し込み、なんとかその商隊に便乗させてもらった。

その時の商隊の主が、ダイセルだった。


「あっ、ダイセルさんでしたか、その節はお世話になりました。

 先にリベルナへ向かわれたと思っていました。ご一緒だったんですね。」

「あのあと、ハンターギルドで護衛を頼もうとしたら、商業ギルドの音頭で越境キャラバン隊が出ると聞いたんだ。

 ウルエボでの滞在日数は伸びるが、単独で護衛を頼むより安く済むからな。

 それに、ヒルデンブルグの特産品を目利きする時間も出来たので、一石二鳥だったって訳さ。」


シンシアは、ダイセルの商隊は先に行っていると思っていたが、実は違っていたようだ。

ダイセルは、この越境キャラバン隊に参加した理由も教えてくれた。


「そうだったんですね。」

「昨日、嬢ちゃんを見たときにはびっくりしたよ。一丁前のハンターの姿だったからな。

 別人かとも考えてたんだ。そのせいでちょっと話しづらくて昨日は声を掛けれなかったんだ。

 今日良かったら昼飯時に、またいろいろと話そう。いろいろ聞きたいこともあるしな。

 あっ、もちろんアルミナも一緒にな。

 昼飯は出すから気軽に来てくれ、じゃ、後でな。」


ダイセルは笑顔でシンシアに昼飯の誘いをすると、足早にキャラバン隊の後ろの方に戻って行った。




越境キャラバン隊は、さらに順調に進んで昼食ポイントまで来ていた。

シンシアとアルミナは、約束どおりにキャラバン隊後方にいるダイセルのところに昼食に行った。


「お招きありがとうございます。」

「あ、あ、よく来たな。ろくなもんは無いが、まあ楽にしてくれ。」


シンシア達が挨拶をすると、ダイセルは楽にするようにと言う。

シンシア達とダイセルは、昼食を摂りながらお互いのウルエボでの3日間の出来事を話した。

シンシア達は、ウルエボでアルミナが攫われたことを話した。

ダイセルは、神妙に聞いていたが一瞬のシンシアの困り顔を見逃さなかった。

シンシアは、ダイセルから睨まれてお金をほぼ使い切ったことを正直に話した。

ダイセルは、それを聞いて何かを考えていたようだったが、結局その話はそこで終わった。

ダイセルは、ウルエボで仕入れた商品の話が中心だったが、ヒルデンブルグ王国の王都の状況も話してくれた。


「俺たちが王都を離れた翌日の夕方に、王都の貴族街の外側つまりシンシアの知っている緑地公園に獣人解放軍が陣を構えて、貴族街ごと取り囲んだ。

 獣人解放軍は、無血開城を求めて王と交渉してくれたので、しばらくは戦闘はなかった。

 しかし数日後、獣人解放軍に取り囲まれて満身創痍となった王が、たまらず戦火を切って戦闘に入った。

 今は『王率いる近衛騎士団を中心とした戦力では、そう長くは持たんだろう』というのがもっぱらの噂だ。

 まあ獣人解放軍が勝つのは間違いないし、これから数年混乱するのも間違いない。と俺は思っている。」


シンシアの両親は、魔道士として闘わされているのに違いなかった。

シンシアは、ダイセルの話を聞いて戦闘が早く終わって欲しいと思っていた。

シンシアとアルミナは、昼食のお礼を言って、キャラバン隊の前方に戻った。




シンシアとアルミナが先頭馬車まで戻ると、チェスに呼び止められた。


「シンシア、

 さっき報告があって、森の中で人影を見たって奴がいるんだ。

 出発の時に探索魔法の使い手がいることは公表したので、敵も前方から斥候をよこすようなへまはしないだろう。

 昼食どきに森の中で大きく回り込んで、こちらの偵察でもしていたのかもしれん。

 嫌な予感がするんだ。任務中の俺の感はよく当たる。

 今日の夕方あたりで襲撃に会うかもしれん。

 ・・・

 そこでだ。シンシアには、またちょっと手を貸して欲しいんだ。

 いや。シンシアには簡単なことだ。

 できればこの前のあれ、デモンストレーションしてくれないか?」

「いいですけど『聖女の盾』は出来ませんよ。

 あれは、勝手にそうなっただけで、やり方知りませんので。」


(私に求めているのは水蒸気爆発の大きいのだよね。たぶん。)


「あ、あ、それで良い。

 Aランク級の攻撃魔法の使い手がいることを知れば、おいそれとは攻撃してこないだろうと思うんだ。

 つくづくわるいが頼んだぞ。」


チェスは、シンシアに攻撃魔法のデモンストレーションの依頼を行い、シンシアも了承した。

チェスは、この昼休憩の後に攻撃魔法のデモンストレーションを行うことにした。


昼休憩は終わり、みんなが出発のため持ち場に戻り始めた時、チェスの大声が響く。


「班長集合!」


『海の支配者』のメンバーに、チームリーダーのチェスから攻撃魔法のデモンストレーションを行うことを告げる。


愉快な仲間達で決めたデモンストレーションの内容は以下のとおり。

 越境キャラバン隊の隊列が整ってから行う。

 さっきまで昼食で使っていたキャラバン隊の左側の草原で行う。

 馬車越しに Aランク級の攻撃魔法 を見てもらうが、危ないと思ったときは自己判断で馬車に隠れてもらう。

 シンシアは全力で行う。派手な方が尚よし。

 その他はシンシアの判断で良い。


『海の支配者』のメンバーは、各班の中でこれから行うことを事前に知らせておくようだ。

各班の状況を見ながらタイミングを見て、チェスの大声が響く。


チェスが叫ぶ  「隊列確認!」

ナターシャが叫ぶ「隊列確認!」

ママリーの声は聞こえない。

リンドーが叫ぶ 「隊列確認!」

時計回りに指示が伝達され帰ってくる。リンドーまで特に異常の報告はない。


さらに、チェスの大声が響く。

チェスが叫ぶ  「これより Aランク級 攻撃魔法 威力確認!」

ナターシャが叫ぶ「攻撃魔法 威力確認!」

ママリーの声は聞こえない。

リンドーが叫ぶ 「攻撃魔法 威力確認!」




シンシアは、キャラバン隊の左側のほぼ中央にいた。

アルミナは、シンシアのすぐ側で一歩下がった位置に付いている。


「あの娘がするのか?」「探索魔法もあの娘だろ?」


(何これ。ちょっと恥ずかしい。失敗しないよね。たぶん。)


キャラバン隊の参加者でもあるシンシアの魔法の見学者たちは、馬車の右側に回り込んで馬車越しに見学する。

招かれてはいない盗賊団の斥候は、森の中から見学するようだ。

見学者たちの両目は、小さな少女の動きを見逃さないように見つめていた。

シンシアは、デモンストレーションを始める。


(あ、そうだ。かっこよくやるには見せ方も重要よね。たぶん。)


「それでは行きます。」




シンシアは、杖を振りながら、大きな声で詠唱を始めた。




続きが読みたくなったよね。たぶん。

ブックマーク、評価☆☆☆☆☆など押したくなったよね。たぶん。


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