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15話 少女と人形の隠れんぼ


 今日はリリカちゃんとのデートでは無く、夢見鳥という自我を持った人形を含めた三人で過ごす事になり、私達はさっそく話を始めました。

 

「ねぇねぇ、三人で何するの?」

「そうですねぇ……やはり折角ならここにある人形を全て見学したいので、もしよければ夢見鳥が案内をしてくれないでしょうか」

「いいよ、じゃあまずは向こうに――」

「――ちょっと待つデスヨ」

「どうしましたリリカちゃん?」


 リリカちゃんが待ったをかけます。そして何やら顔をニヤつかせています。これは何か良からぬ事を考えている雰囲気です。


「フフッ、ただ見て回るのはツマラナイデスネ、だからカクレンボするデスヨ」

「隠れんぼ……ですか。いったいどうしてですか?」

「えーと、ほらっ、外からの見た目に対してここの会場の中身は思った以上にとても広いデスネ」

「ふむ、言われてみれば確かに(……とはいえ外の外観と建物の中の面積が釣り合っていない気がするのですが……まぁ、目の錯覚でしょう)」

「あとは……アレデスネ、せっかく会場にいるのは私たちだけデスヨ、ダカラ非日常を味わうために人の目を気にせず騒ぎたいデスネ……アハハハ、ハハッ……ダメ、デスカ?」


 うーん……なんだか理由に無理がありすぎるきがしますねぇ。全くリリカちゃんは企み事をするのが下手です。ここは意見を却下してしまいましょう。


「却下――」

「いいねそれ、夢見鳥かくれんぼする!」

「――えっ!?」

「――えっ!? マジなのデスカ」

「うん」

「そ、そうデスカ、これでやることは決まりましたデスヨ」


 まさかこんな何か企んでいることが丸わかりの提案に夢見鳥が乗るなんて、おかげで提案したリリカちゃんまで驚いてその後ガッツポーズまでする始末です。


「じゃあ、最初は繭氏がオニをするデスヨ」

「嫌です」

「ちょ、ちょっと繭氏!?」

「えぇ~、繭にオニをして貰って人形の中に紛れて隠れてる夢見鳥を見つけてほしいのにぃ」

「ほっ、ホラ夢見鳥もああ言ってるデスネ」

「じーっ……そうは言ってもさっきから言動が怪しいリリカちゃんに決められた役なんてしたくないです。あと夢見鳥、かくれんぼをする前に自分の隠れる場所をオニに言っちゃいけませんよ」

「あっ、そういえばそうだったね。夢見鳥ってばいつもこんな風にドジをふんじゃう残念な子なの、グスっ」

「――!! (やっぱり思った通りこの人形(夢見鳥)オツムが弱いデスネ。だとしたらコイツをうまく利用してやるデスネ)」

「……(リリカちゃんったら懲りずにまた何か企んでますね)」


 その後、かくれんぼをすることがほぼ決定し、ここは公平にじゃんけんでオニ役を決めることになりました。


「よーし、私はグーでも出すデスかね(棒)」


 リリカちゃんはじゃんけんに心理戦を仕掛けてきましたね。それにしても棒読みがひどいです。あとはは……。


「プークスクス、リリカったら自分で何を出すか言ってるぅ、だったら夢見鳥はじゃんけんで何を出したらリリカに勝てるかわかっちゃったもんね」


 ……はぁ、頭が痛くなりそうです。夢見鳥はリリカちゃんの心理戦の意味が理解できていません。恐らくほぼ百パーセントの確率で夢見鳥はじゃんけんのパーを素直に繰り出してしまうでしょう。ここはリリカちゃんが夢見鳥に勝つ為にチョキを出すと仮定して私の方はグーを出して今回のターンを相子で終わらせましょう。そのあとにちゃんとした公平なじゃんけんの再開です。


 じゃん、けん、ほーい!


 パー

 パー

 グー


 なっ!? なんですって。まさか私がグーをだして負けるとは……。


「あーっ! リリカ、グーを出すって言ったのにパーを出した。嘘つき!」

「なんの事デスネ……それより当初の予定通り繭氏がオニで決定デスネ」

「くっ……しょうがありません、負けた以上文句は言いません(リリカちゃんは策士ですね、恐らく私の考えも見抜いていたんでしょう)」


 ……。


 こうしてかくれんぼが始まりました。それでおにぎり役の私はみんなが隠れるまでの間に十まで数字を数えます。しかしここでもリリカちゃんの策略はまだまだ続いたのでした。


「……九……十、もういいですか」

「良いデスヨ」

「……あの、リリカちゃん、なぜ隠れていないのですか?」

「あっちゃー、繭氏の後ろに隠れてたら見つかったデスネ(棒)」

「……それは隠れたと言わないのでは?」

「いいからいいいから、見つかっちまったもんはショウガナイデスネ」

「はぁ、もう何も言いません……それで、これからどうするつもりですか?」

「勿論、オニの繭氏が夢見鳥を見つけるのを一緒に手伝ってあげるデスヨ、但しずっと見つからないかもデスネ」

「はぁ……要するに最初から夢見鳥をどこかへ行かせるためにかくれんぼするなんて言い出したんですね」

「その通りデスヨ」

「なるほど、ずいぶんと手の込んだことをした癖にここは素直に認めるんですね」

「そうデスヨ。だって繭氏と二人きりで一日過ごせる今日という日をどれほど私が楽しみにしていたと思ってるデスカ、それをあんな訳の分からない人形に邪魔されたくなかったんデスヨ」

「そ、そうですか……リリカちゃんは随分と私の事が好きなんですね」

「ふぇっ!? あ、あのデスネ、好きは好きでも私の好きはですねぇ――」

「――さてと、夢見鳥を探しに向かいましょうか」


 リリカちゃんの話はあとにしましょう。とりあえず行動を共にしながら、おそらく展示物の人形の中に紛れ込んで隠れてる夢見鳥を見つけましょう。


 こうして一体一体じっくりと人形を観察して歩きます。そうするとあることに気が付きました。


「リリカちゃん、ここに展示されてる人形はすべてヨーロッパ伝統の球体関節人形のはずですよね」

「そうデスヨ、因みに私がここに繭氏を誘った理由はデスネ、私の故郷のドイツとヨーロッパの伝統の雰囲気を感じてほしかったからデスヨ」

「そうだったんですね、確かにここならヨーロッパの衣装に身を包んだ人形たちであふれているんでその雰囲気は十分に感じ取れます……けれどその中で彼女はおかしくないですか?」

「おかしい彼女って一体……――あっ、もしかして夢見鳥の事デスカ!?」

「そうです、彼女だけ私の国0――日本の伝統衣装着物をまとっていたんです、これは変です、これでは彼女だけ唯一ここで浮いた存在になります」

「言われてみれば確かに。一体何なんデスカあの夢見鳥とかいう人形は……」


『夢見鳥の事……知り…たい?』


 急にどこからともなく、途切れ途切れの少女の声が私たちに対して反応を示します。そして私とリリカちゃんはその声に驚ながら顔を向けました。するとそこには何かが布にすっぽりと覆いかぶされて展示されていました。


『――展示不可――』


 ふむ、そうですか……。けど、どうでしょう。こういう風にあからさまに見てはいけないとされていると逆に見てみたい気がしますね。


「ちょっと繭氏、何やってるデスカ、不味いデスヨ!」


 リリカちゃんがあわてて静止するのを無視して私は展示不可の物体にかけられている布をはぎ取ります。するとその下からは夢見鳥と同じように自我を持ち、顔にはガスマスクと、体には拘束具のベルトをきつく締められて身動きができない球体関節人形が存在していました。


「そう……こうして布をどけてくれたということは夢見鳥のこと知りたいのね。だったら教えてあげるわ……シュコー、シュコー」

「あなたは誰なの?」

「私の名前は……ガマズミ。一番始めの人形で何でも知ってる……シュコー、シュコー」


 ガマズミと名乗る人形はガスマスクを装着しているので呼吸音がとてもよく聞こえてきます。そしてなんだか息が苦しそうです。なのでその顔に装着しているマスクを外すわけにはいかないのでしょうか。また、そもそもよく考えてみると人形というのは呼吸が必要なのでしょうか。考えれば考えるほどこのガマズミという人形には疑問が付いてきます。


「私は……()()()()と比べると体が特殊。体内に()()()()()()()が搭載されている……。だから呼吸が必要……シュコー、シュコー」

「疑似的な肺機能を持つ人形……一体どうしてあなたはそんな物を?」

「……ハッ、分かりましたデスヨ、きっとコイツは人口呼吸訓練用人形だからデスネ!」


 人口呼吸訓練用人形? えーとそれはつまり応急処置で使用するあの息を吹き込んで心臓マッサージの練習をする人形の事でしょうか……なるほど! 確かに合点しました。確かにそれだとガマズミちゃんの中に疑似的な肺が搭載されているのにも納得ですけれど、だとしても随分彼女の身体は華奢なので肺を押せば壊れてしまいそうですね――っ、少し話が逸れそうです。もちろんガマズミちゃんの事も気になりますが、まずは当初の疑問を解決しましょう。


「お願いですガマズミちゃん、私に夢見鳥の事を教えてください」


 私のお願いにガマズミちゃんは勿論と頷きます。しかしなぜ彼女は私たちに協力的なのでしょう。その答えは残念ながらガスマスク越しの表情からは読み取れません。しかしここは疑うことより素直に彼女が教えてくれる事を信じてみましょう――。


 こうして私達はガスマスクを装着した不思議な人形――ガマズミちゃんと出会い、色々と話を聞くのでした――。

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