最終話:【書き換えられた世界――そして、新しい日常(アバター)へ】
「ありえない……! 僕が作った、僕だけの箱庭が……っ!」
管理者の絶叫と共に、白亜の電脳空間がガラス細工のように砕け散る。
仁が放った「絆の連撃」は、運営の支配権を粉砕し、この『バトルワールド』というシステムの根源――マザーコンピュータの最深部まで到達していた。
『――全権限の譲渡を確認。管理者「仁」を選出。』
『リブート・シーケンスをキャンセル。……新しい世界の設定を入力してください。』
脳内に響く無機質な声。
今、仁が願えば、自分を神にすることも、すべてを無に帰すこともできる。
だが、仁はただ、背後に寄り添う彼女たちの温もりを感じながら、静かに目を閉じた。
「……誰も死なない。誰も戦わなくていい。……そして、こいつらが『道具』として扱われない世界だ」
【再構築】
眩い光が、崩壊する東京を包み込む。
赤黒かった空は透き通るような青へ、へし折れたビル群は緑豊かな公園や清潔な街並みへと姿を変えていく。
そして、仁のスマホに一通の通知が届いた。
【アップデート完了】
『バトルワールド』は、現実世界と融合した次世代SNS『ピースフル・ワールド』へ移行しました。
数ヶ月後:【日常という名の奇跡】
「仁! 遅いってば! せっかくの食べ歩きフェス、限定スイーツ売り切れちゃうじゃない!」
賑やかな原宿の竹下通り。
ポニーテールを揺らし、不機嫌そうに頬を膨らませるのはライカだった。彼女は今、ホログラムではなく、肉体を持った一人の少女としてこの世界を謳歌している。
「悪い悪い。……ほら、ピピたちが道端の鳩と喧嘩しててさ」
仁の左右には、小さな双子の少女――ピピが「ひゃっほー!」と騒ぎながら鳩を追いかけ回している。
「マスター、お疲れ様です。お茶の用意はできておりますよ?」
人混みの中でも優雅さを失わないアイリスが、保冷バッグから冷えたお茶を取り出す。
そして、仁のすぐ隣で、遠慮がちにそっと服の裾を掴んでいるのはシェルだ。
「……マスター。今日も、心音が……とっても穏やかで、嬉しいです」
「ああ。……イヴは、またあそこか?」
仁が視線を向けた先。クレープ屋の行列の先頭で、誰よりも真剣な顔でメニューを睨みつけているクールな美少女――イヴがいた。
彼女はかつての伝説のプレイヤーとしての面影もなく、今は「地球の甘味」をすべて制覇するという新たな野望に燃えている。
「仁、これよ。チョコバナナカスタード……これがこの世界の『最強の武装』に違いないわ」
「はいはい、わかったから」
【エピローグ】
仁はふと、自分のスマホを取り出した。
画面には、かつての禍々しいアイコンではなく、六人の少女たちが笑顔で並んでいる写真が壁紙になっている。
結局、管理者は一般ユーザーの一人として「一般人」にリセットされ、どこかで汗水を垂らして働いているらしい。
ゼクスは「平和すぎて退屈だ」と文句を言いながらも、自警団のような活動を始めて、SNSで密かに人気を集めている。
「……全部選んで、正解だったな」
仁が呟くと、彼女たちが一斉にこちらを振り返り、花が咲くような笑顔を見せた。
理不尽なゲームは終わった。
けれど、仁と「全部の武器娘」たちの物語は、この新しく自由な世界で、どこまでも続いていく――。
【バトルワールド:全武装の救世主】―― 完




