プロローグ:【インストール・デスティニー】 「……なんだこれ?」
深夜、バイト帰りの駅のホーム。仁は手元のスマホに、見慣れないアイコンがあることに気づいた。
漆黒の背景に、鮮血を思わせる深紅の剣が突き刺さった意匠。その下にはたった一言、アプリの名前が記されている。
『バトルワールド』
「……バグか? それとも新作の強制広告か……」
消去しようと長押しするが、反応がない。それどころか、まるで心臓の鼓動のようにアイコンが淡く明滅し始めた。
吸い寄せられるように、仁の指が画面に触れる。
『――適合者を確認。魂の同期を開始します。』
無機質な電子音声が耳元で囁いた。
スマホの画面から溢れ出した眩い光が、仁の視界を真っ白に染め上げる。
「う、わあああああっ!?」
周囲の喧騒が消えた。
ホームの床の硬い感触が消え、代わりに感じたのは、冷たく乾いたアスファルトの匂い。
目を開けると、そこは「駅」ではなかった。
空は赤黒く濁り、立ち並ぶビルはどれも中ほどからへし折れている。静寂が支配する、死に絶えた東京。
「な、んだよ……ここ……」
震える手でスマホを見ると、画面には新たな文字が浮かんでいた。
【クエスト:最初の試練】
内容:迫りくる『スカベンジャー』を撃破せよ。
報酬:初期武装の解放
「クエスト? スカベンジャー……? 冗談だろ……」
その時、瓦礫の山が崩れる音が響いた。
路地の奥から、四足歩行の異形――金属の皮膚を持った巨大な狼のような何かが、赤い眼をぎらつかせて姿を現した。
仁のスマホが激しく振動する。
『バトル・レディ。――武器を選択してください。』




