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事件にならない事件  作者: 七海
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楽しかった頃

祖父母の元にいた頃が、1番楽しかったように思う。


田舎ではあるけれど、山や川、海など自然に恵まれていて毎日日が暮れるまで遊んでいた。


山に入ってアケビや木苺を食べ、川で鮎やカニを捕まえて食べ、海で魚を釣ってきては食べる。


セミの羽化を見守り、クワガタやオニヤンマを捕まえ、蛍を追いかけ、澄んだ空気のおかげで満天の星を見上げながら笑顔で過ごしていた。

満点の星空の中に動く星があって、叔父は「あれは人工衛星だよ」と教えてくれた。


遊園地も公園もないけど、自然は十分過ぎるほどの遊び場だった。

その頃は今よりももっと近所付き合いが濃く当たり前の時代。

どこで遊んでいても全部把握されているのは面倒だったけれど…


他所の家の子供たちと、他所の家の庭に入り他所の家の人に声を掛けるなんてことが日常だった。


とは言っても、近所に子供は3人しかいなかった。


お年寄りだらけの小さな村なこともあり、子供らは村全体で可愛がられていたという感じだった。


他人の家の庭で友達と人形で遊んだり、ままごとをしたりするのも普通の世界。


けれど子供らは甘えて守られるだけじゃなく、畑の草むしりや祭りの手伝い、買物で重いものを持っているのを見かけた時は家まで運び、おつかいを頼まれれば笑顔でやる。


そんなことを当たり前にやっていた。


少し離れた家でも、大人も子供も顔を見るだけでどこの誰だというのが分かるような、そんな近所付き合い。

だから誰かがいなくなったりすると気付くのも早く、みんなが探しに出る。


山に入って奥に行き過ぎて迷子になった時は総出で探してくれた。

近所の人たちも優しいだけじゃなくダメなことをちゃんと叱ってくれた。


もちろん叱られるのは怖いけど、それ以上に大切にしてくれていると感じていたし大好きだった。


良い時代というよりは、土地柄もあったんだろうと今では思う。

本当に毎日が充実していた、毎日が笑顔だった。


あの日の夜に母からの電話が来るまでの四年間は。

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