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事件にならない事件  作者: 七海
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それでも生きていく

生まれたときから始まった波乱万丈な、事件や心霊に虐待の中で生きていく女の子の半生

この世には、事件になっていない事件がたくさんある。


私もそのうちの一人の被害者だった。


まずは生まれたときから始まった、私の物語を話していこうか…



その女の子がこの世に誕生した時、産声を上げなかった。


緊張が走る中、死亡宣告を医師が出そうとしたその時に彼女は弱々しくも泣いた。


喜びと安堵の空気とは裏腹に、彼女の家では事件が起こっていた。


5歳だった彼女の姉が病院で暴れ回るので父親と一緒に自宅へ戻っていた。

父親の言葉を信じるならば、5歳の姉は突然なぜか無表情になり動かなくなった。

数分ほど座り込んだままだった無表情の姉は立ち上がり、まだ肌寒い3月に窓を開け、父が止める間もなく寒空の中空を飛んだ。


頭から、20m下のコンクリートに叩きつけられた姉は頭が潰れ即死だったそうだ。


そして女の子は産声を上げた。

姉は死んだ時間に生き返った。


だけれど、これだけでは終わらなかった。


私が二歳の時に母親は産院にいた。

三度目の出産のためだった。


二歳だった私はその時、肺炎を拗らせて意識を失い入院していた。

命も危ないと言われていたらしく、容態が急変して危篤になった。


その時寝ていた妹は突然断末魔のような叫び声を上げて泡を吹いて呼吸も心臓も止まった。

妹はそのまま死んでしまった。


その後、父方の祖母は私を忌み嫌った。

姉妹殺しだ忌子だと。

私には何の責任もない、そんなことは分かっていたのかもしれない。

けれど、祖母は決して姉妹の墓に私と母を近寄らせなかった。


死を理解していない幼かった私には姉妹という存在そのものの意味すら分からず、なぜ嫌われているのか分からなかった。

ただ私の目には母を虐めるお婆さんとしか映っていなかった。


父方の実家に泊まりに行っていたのだが、両親は家の中に入っていたけれど、当時幼稚園だった私は門の外に一人で朝までずっと座っていた。


でも父の事は大好きだった。

いつも遊んでくれるのは父だった。

けれど小学校に通いはじめた頃、その父との別れが突然やってきた。


父は、母にとっては仕事を辞め祖母に小遣いをもらい毎日のようにギャンブルをするだけの男に成り下がっていた。


両親が大喧嘩をした夜、父が包丁を持ち暴れ回った。

大きな音で目覚めて両親の前に現れた私を父は捕まえた。

父が泣きながら言った言葉は覚えている。


「一緒に死んでくれ!」


私の首に包丁をあてられた所から記憶にない。

気が付いたら暗い夜道を母と二人で荷物も持たずに走っていた。


ここからいなくなるんだな、という事はなんとなく私にも理解できた。


「友達にさようならって言いにいきたい」


呑気にこんなことを母に言っていた。

母は、それは無理だからと振り返らずに前だけを向いて答えた。


寒い冬の季節、どこに向かっているのかも分からなかったけれど、電車に揺られ真っ白に積もった雪を見ながら駅で買ったのであろう温かいうどんが美味しかったのを覚えている。


そのまま母方の実家の近くまで来たけれど、母は祖父母のところへは帰らなかった。


祖父母の家の近く、近所の人の好意で家畜小屋に備え付けられている畳3畳ほどの部屋を借り住むことになった。


トイレは簡易トイレを買って来た。

小さいけれど料理をする所もあった。

お風呂は小屋の持ち主の家で借りて入っていた。

狭いし、電気は裸の豆電球。

そんな暮らしだったけれど、母がいたので不安も不満もなかった。

割とすぐに新しい小学校にも通いはじめた。


その一週間後、熱を出して学校を休んでいた私に母は笑顔で言った。


「買物に行ってくるからおとなしく待っててね」


けれど、日が暮れても朝が来ても母は帰って来なかった。

次の日も帰って来ない。

ずっと一人で言いつけを守り、おとなしく布団で寝ていた。


3日ほど経った頃だったか、母が戻らない寂しさや不安、空腹と熱のせいか鼻血が止まらなくなり、死んでしまう!と怖くなってきた。


慌てた私はタオルを鼻にあて、小屋の持ち主の家に助けを求めたけれど、誰もいないようだった。

タオルが真っ赤になっていたのを覚えている。

どうしよう、という不安感でいっぱいになった私は、家畜小屋にいる2頭の牛のところへ行った。


目が覚めたとき、私の記憶も曖昧になっている部分ではあるけれど祖父が側にいた。

そして母が家出をした事を知った。


部屋を貸してくれていた人が、牛に餌を与えようと朝に小屋に来たときに2頭の牛の間に挟まっている私を見つけてくれたそうだ。

2頭の牛は座って私を挟んでくれていた。

2頭して座っているから異変を感じて覗き込み、私の手が見えて見つけれくれたそうだ。


牛達は命の恩人だ。


そのまま祖父母の家に引き取られて育ててもらうことになった。

今でもとても祖父母には感謝をしている。


そして、祖父母の土地を離れた事を今は酷く後悔している。


そんな私の生涯。


今はもう、ただ生きていて良かったと思っています。

ただ、殺意は呪いになるのだと知った。


私という人間が出来上がった要素は何だろう。

未だにわからない。


なぜか人を疑うことをしない、信じてしまう。

こんな人生を歩んできたのに。

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