狂喜の晩餐
謎の女剣士と少女を
連れていくつもりは無いが着いてきた。
俺は材料を台車で運んでいた。特に話すこともなければ顔を見ることもなかった。
「大丈夫?その痣とても痛そう」
「………………イヤ」
「…………………………。」
俺はだが…
痣だらけの少女は女剣士が、その後も頻繁に近づいて頭を撫でながら喋り続けるため逃げるようにラマンの腕へと掴まる。そして悪魔のような囁き……
「アイツ殺しちゃってよ……」
「…………………。」
「何があったのかしら?お姉さんなら相談に乗るよ!何でもするからね♪」
「じゃあ死んで……」
「うっ…!!それはちょっと無理かな~」
「さっき何でもするからねって言った。死んで……」
「家族と上手く出来なかったの?お姉さんが悪いヤツ倒しちゃうから言ってみなさいな!」
「……………………。」
その後も女剣士は喋り続けた。
街が見えてきた。そしてラマンは、そこに吸血鬼の姿がないことに直ぐに気づいた。
「やはりか……」
そこに残るのは不自然な足跡と大きな穴であった。足跡の大きさと数からアラクネのもので間違いなかった。
アラクネがいない、モーガンもいない。糸に貼り付けられていた女達もいない。
ラマンの勘は当たっていた。
「名を名乗れ剣士とやら」
「貴方こそ、名前は何です?」
「そんなものない」
「欲しくて付けてもらった訳でもない名前をです」
「この身体の持ち主から付けられたラマンという名がある」
「それが貴方の呪縛ですか?」
「そうかもしれないな」
「では名乗りましょう。私はヴラトリア」
「アラクネかモーガンにでも付けられたか?」
「少し正しい、けど……少し違う」
「そうか……」
「思い出した……それが正しいでしょう」
その顔は悲しげな表情だった。
「私は迷っている」
魔剣を構えた剣士は、目を閉じる。
その構えは、何かを捨てなければならない運命にあるんだと思わせる。それに今まで逃げてきた。それを後悔して再び向き合う覚悟のある構えであった。
「貴方を倒すことが出来そうにない。でもそれは迷う理由じゃない……私は…」
「長いな、俺より話の長いヤツは不愉快だな」
「私は貴方が好きになってしまった」
「…………………。」
「受け入れてくれるはずもないことは分かっています。どうか私の愛を注いだ剣を受け取ってください……」
女剣士は膝をつき魔剣を差し出した。
ラマンは魔剣を受け取りヴラトリアの肩に剣先を当てた。
「お前の愛は薄っぺらい、俺はあまり思い出せないのだからな……だが薄っぺらい愛がゴミと同じでも全く同じゴミが存在しないようにお前の愛もまた他とは違う腐り方だろう。そのどうしようもない呪縛を気にするお前は気高き騎士だ。誰も救えない、そして誰もお前を救わないだろうな……」
ラマンは肩に乗せていた剣先を戻して勢い良く…
「あぐっ!!」
「共に壊そう……」
ヴラトリアの心臓を刺した。
剣を伝ってラマンの闇がヴラトリアの身体へ注がれる。
ラマンは台車から女の肉片を引きちぎりヴラトリアの口へ当てる。そのままヴラトリアの身体は後ろへ倒れ、ラマンも魔剣を深く入れながらヴラトリアの口を抑え倒れる。
「んっ?!ぼぉ……ごぼぉ……んぐぅ」
「お前のもう一つの名を何故か知らないはずなのに俺は知っている。知らないはずなのに俺はそれを思い出した。」
脳裏に浮かぶその名前は同時に復活の儀式を創造する。次々と知らないはずの情報が浮かび上がる。それを無意識にラマンは儀式として行う。点と点が結ばれ答えが出る。
「お前のもう一つ名……」
「あぁ……うあああああああああっ!!」
「ジレス」
黒き波動が溢れ出した。ヴラトリアの身体は形を変えて真の姿となった。互いに見つめ合い微笑む。
「我が命、ラマン様のために……」
「ようこそ狂喜の晩餐へ」
「ふふふ……」
痣だらけの少女も二人を見て笑う。




