異質な元素
夜景を眺めながらラマンは静かに魔法の検証を続ける。
「やはり変だな…」
彼は友人が書き記していた漆黒の魔法書を思い出しながら様々な元素を生み出していた。火と水の感覚を掴みそうなところで問題点が出てきた。
左右に異なるイメージで同じ火を生み出し重ねようとした際に消えてしまうのだ。右には赤を、左には黒をイメージしたのだ。別に何も変わらない同じ火が出たはずなのに互いに接触すると消えてしまうのだ。
同じように水でも行ったが結果は同じく互いに消える。この二つの異なるイメージから生み出した元素は性質が異なるのかもしれない。ただモーガンに相談しても、そのような事例は無いらしい…
ダムに溜まった水で交互に検証してみたところ、黒をイメージして生み出した元素は、接触すると同じ量だけ消えた。
「まさか……打ち消した?」
ラマンが黒をイメージして生み出した水の塊はダムの水に落ちると、落ちた箇所を生み出した量だけ消してしまい、窪んだ水面に波が押し寄せ元の平行な水面へ戻る。
「このダムに溜まった水はアラクネとモーガンが生み出したもの……そして俺が黒をイメージして生み出した元素には消えてしまう……この黒をイメージすることで何か性質が変化しているのか?」
自然に生み出された雨や水とも混ざっているアラクネとモーガンの水に対して同じ水のはずなのに異質な水となる。ラマンの特定のイメージを追加した場合に何故か出てくる。その異質な元素は、彼を悩ませた。
「漆黒の魔法書にこんなもの記されていなかったぞ……魔術難度とやらは、確かあったが……」
魔術難度に無効化や反射などはあったが、打ち消し合う生成された異質な魔法は記されていない。となると、彼の知っているファンタジーですらない異世界となる。
謎は深まるばかりとなっていた。水に水を当てていたが、今度は火を当てた。すると同じように互いに消える現象となった。
「おいおいおいおい……なんだこれ?属性が違っても結果が同じときたか」
ラマンは、しばらく考え込んだ。通常、水を火で熱した場合はお湯や熱湯や水蒸気になるのが一般的。しかもラマンが放つ火の大きさはダムの大きさに対して物凄く小さいのだ。この場合は直ぐに火が消えて終わるはずなのだが、互いに消えるのだ。それも蒸発した様子もなく、火の大きさと均等に消えた。しばらく考え込んだラマンは何か閃いた。
「相殺……相対性?まさかだよな…」
閃いたが、信じ難い理論だったため考えるのを一時、止めようとした。だが、そうでなければ納得できない部分しかなかった。
「やはり未知だな……」
ラマンは自分の左手を見つめて夜が明けるのをひたすら待った。




