39話 護衛依頼は先行き不安です?
街へ戻ると、ちょうどユウトの調整が終わったようで門に入ってすぐに合流できた。
「どうだった?」
「スイなら問題ない。セキトバは俺には難しいな」
ユウトとの一件で出来ないことは出来ないと言えるようになったナストは正直に答える。その答えにユウトは首を傾げるが、ヒメカも苦笑しながら頷いていたのでそれ以上は聞かないことにした。
「とにかく、セキトバはお前ら専用にした方がいい」
念押しするナストに、現場を見ていないユウトは不思議そうだが、とりあえず頷いておいた。
夕方、指定の時間より少し早くギルドへと向かうと、会議室に案内され、ここで待っておくように言われる。まだ他のパーティや依頼主は来ていないようだ。
「うわ、まじかよ……」
「何が」
「護衛依頼は依頼人が商人の時は早めに集まった方がいいんだよ。出来れば配置の打ち合わせまで済ませておければベスト。特に今回みたいにランクに差がない場合は話し合いが長引くことも多いし。……つーか分かってたから早く来たわけじゃねーのな」
時間前に到着するのは普通だと思っていた姉弟は首を傾げる。
「依頼人の話を聞く前に決めていいのか?」
二度手間じゃないか? という顔をするユウト。
「そりゃ、変更はあるだろうけど冒険者が事前準備を怠ってどうするよ。護衛は連携が肝だぞ」
「「おお……」」
まさかナストからそんな言葉が出るとは、とありありと顔に書いている。バカにするわけではないが、3年以上冒険者をしてきたパーティ最年長らしい所を初めて見たのだから仕方がない。
「ミランダさんが聞いたら感動して涙するかも……」
「それだけはやめてくれ……!」
ナストが反論する前にヒメカが呟き、その光景が浮かんだのか、ナストは頭を抱えたのだった。
3人が談笑(?)しながら他のパーティを待っていると、2つのパーティはどちらもほんとうに時間ギリギリにやってきた。外で打ち合わせをした様子もないところを見るに、先行き不安である。
しかし、挨拶は大事。ということで臨時リーダーのナストが挨拶に向かい、姉弟も後を着いて行く。
「はじめまして、だよな。俺は『ヴェルメリオ』のリーダーのナストだ。こいつらはメンバーのヒメカとユウト」
「……ランクは?」
「(ピクッ)……俺がB、こいつらはCランクだ」
ナストの表情が引きつったのを姉弟は見逃さない。名乗られたら名乗り返せよ、と思っているのが筒抜けである。しかし、正面にいる奴らには通じていないようだ。
ナストに話し掛けられた剣士風の男は、Bと聞いた時に若干居心地悪そうにしたが、すぐ後ろに控えていたヒメカを見て嘲るような視線に変わった。
「へぇ……お荷物抱えて大変だな。だが俺達に迷惑かけんなよ」
「は?」
言われたナストは、いきなりのことにポカンとする。ユウトは不快そうにするが、ヒメカがさりげなく制止している。3人の中で一番冷静なのはヒメカのようだ。
「そうさせていただきますね。ナストさん、もう一組に挨拶に行きませんか?」
「あ、ああ……(いいのか?)」
「(いいんです)では行きましょう」
結局、男3人組のパーティの名前すら分からないまま、ヒメカに促されて次のパーティに向かった。
「『ヴェルメリオ』のリーダーのナストだ。こいつらはメンバーのヒメカとユウトだ。よろしく頼む」
「……『深紅のはばたき』のボスウェル・ライト。メンバーのジェム、キャトラ、ヴィヴィ」
「悪いがこっちはよろしくするつもりはない」
「この依頼で専属に抜擢されるかもしれないもの」
「お互いライバルってやつぅ?」
先ほどと同じようにナストが挨拶をすると、今度は明らかに敵視するような視線を向けられる。男3人の方は女性蔑視が強かったが、このパーティは男女2人ずつの4人パーティで協調性はパーティ内にしかない、といった雰囲気である。いや、パーティ内でもあやしいかもしれない。
一応、不遜ながらも挨拶を返したので先ほどよりマシと言えるかもしれない。
とりあえず把握できたのは、キャトラと名乗った女性が魔法士っぽい、位である。後の情報は鑑定でしか分からないが、この場では口にしない。後でナストと情報共有する時にでも大雑把に伝える程度だろう。
(すでに先行き不安すぎる……)
(頑張ってください、ナストさん)
(少し前のナストより酷いな)
さらりと比較対象に挙げられたナストは、かつての自分を外から見たらこうだったのかと改めて実感し、恥ずかしく思うのだった。




