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32話 Cランク昇格試験です。

 ナストとの勉強会も終わり、ユウト達の装備も整った。いざ昇格試験、と、3人はギルドの前に来ていた。

「じゃあ、俺は行くわ」

「ああ。頑張れ」

「頑張ってください」

 ナストは筆記試験の為にギルドの会議室へ、姉弟は随行員付きで依頼を受けることになっているため、受付へと歩を進める。

「お前たちが昇格試験を受ける冒険者だな」

 事前に申込をしていたので、受付嬢に昇格試験を受けにきた旨を伝えるとスムーズに案内された。受付嬢が一人の男に声を掛けると、姉弟に随行員を紹介して仕事に戻ってしまった。

「「はい」」

「俺はこのギルドで教官をしているイーサンだ。まあ、普通に依頼をこなしてくれりゃ合格だから安心しろや」

「「よろしくお願いします」」

 昇格試験の概要は申込の際に聞いていた。

 Cランク昇格試験は、ギルドの指定した依頼を受理し、完了出来れば合格なのだそうだ。依頼はCランクの中からランダムに選ばれるため、難しい時もあれば簡単な時もある。今回、姉弟が受けるのは『ウォーリアウルフの討伐 5体』。湧きで戦っていた平原に生息するCランクの魔物である。1体1体はそこまで強いわけではないが、群れる習性があり、仲間を傷つけられると脅威度が増す面倒な魔物でもある。

「俺はあくまで随行員だからな。一切手を出さない」

「「わかりました」」

 素直な返事は新人らしい可愛げがあると思っていたイーサンも、ひとたび外へ出れば、すぐにその考えを改めた。



 平原へ出ると、他の冒険者もちらほらと姿が見えるが、湧きの時に比べると断然人数は少なかった。

「……3体」

「了解」

 ヒメカの魔法ですぐさま目標を捕捉。最低限の言葉で意思疎通を図ると、他の冒険者も近くにいないのですぐさま目標へ向かって行った。

(噂以上の2人だな……)

 まず気配の消し方が上手い。平原だけあって見晴らしが良いが、注視しているイーサンでさえ、少しでも気を抜けば2人を見失ってしまいそうなほどに存在感が薄い。薄いというより、溶け込んでいると言った方が正しいだろうか。それを極々自然に行っていた。冒険者に必須な技能ではないが、一つの強さの指標にはなる。

 次に足音。いくら気配を消しても音を立てては意味がない。その点、2人は非の打ちどころがない。

 そして『消臭』。無詠唱での発動もそうだが、ウルフ系対策としても有用な魔法である。きちんと魔物の知識もあることが伺える。

 姉弟はさくっと3体を討伐し、討伐証明を回収。その他も、一緒にマジックポーチに収納した。

(明らかにランクに見合ってないな……)

「教官、移動しようと思うのですが」

「ん? ああ、すまん」

 ふいに目の前まで戻って来ていた2人に声を掛けられるまで気付かなかったが、動揺を顔に出さないようにして、移動する2人の後について行った。

 迷いなく進む2人は、すぐさまウォーリアウルフを見つけ、またもさくっと討伐して試験は終了。まだ移動時間も含め、試験が始まって1時間も経っていない。

「じゃあ後はギルドに戻って手続きをすれば終了だな」

「教官、『地点移動』を使って戻ってもいいですか?」

「ああ。いいぞ。だが俺は使えんから一緒に頼む」

「勿論です」

 帰りは魔法でさっさと街へと戻った。



「はい。ではCランクに昇格ですね。おめでとうございます」

「文句なしの昇格だ。教官しててこんなにあっさり合格されたのはあいつ以来初めてだ」

「あいつ?」

「この国のSランク冒険者の一人、カイだ。あいつもこの街出身でな。俺も教官になってすぐ位にアイツの試験官したんだよ」

 昔を思い出すかのようにそう語る。

「そうなんですか。カイさんってどんな方なんですか?」

「いまは知らんが、その時のあいつはそれはもう生意気だったな。パーティを組むこともしなかった。だから一度パーティを組んでみるように言ったことがあるんだが、邪魔だからいらん、だと」

「うわぁ……凄い人ですね」

「それでも実力はあるからさっさと昇級しやがったけどな」

 自慢したいが当時を思い出すと……、と、微妙な顔のイーサン。そのカイという冒険者は問題児だったのだろうか。

「カイさんといえば、ギルド長と喧嘩したこともありましたよね」

「ギルド長と?」

 手続きをしてくれた受付嬢も、懐かしむように会話に入ってきた。

「あれは……何だったか? 理由は思い出せないがカイのやつ、1ヶ月くらい依頼を受けなかったんだよな」

「たしか、土属性魔法は地味で好きじゃないってカイさんが言ったからだったと思いますよ」

「あー。何かそんな感じだったな。ギルド長、魔法のことになったら絶対引かないから」

「どっちも子どもですよねー。まあ、カイさんはあの時まだ10代でしたけど」

 呆れるように、だが楽しそうに笑うイーサンと受付嬢。

(土魔法って便利なのにねー)

 アクセサリー作りや、外でご飯を作るときに簡易の釜戸を作ったり、目隠し用の壁を作ったり、草むしりや庭木の植え替えなどでもよく使う魔法である。魔物相手でも、捕獲依頼では物凄く便利な属性で、生きたまま土魔法で頑丈な檻を作って閉じ込めることもできるし、足場を悪くして行動阻害も出来るし、落とし穴も瞬時に掘れる。

 ヒメカの場合、魔法に傾注しているわけではないので怒ることはないが疑問には思う。

「それで結局どうなったんですか?」

「ギルド長の興味が別の事に移ってそのまま……って感じね。カイさんも街をでちゃったし」

「Bランクになってすぐにな。お前らもギルド長の前で……ってその心配はないか」

「そういえばギルド長がヒメカさんと一度じっくり魔法について話したいって言ってたわねー。ギルド長、話し出したら長いから気を付けてね。いざとなったら逃げるのよ」

 受付嬢に助言(?)を受けて、2人はギルドを出た。新しいギルドカードにはCの文字。こうして昇格試験は終了した。

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