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30話 孤児院訪問しました。

「受け取りは3日後だけど、それまでどうする?」

「俺はポーションの補充をしたいから冒険者業は休みにしようかな。姉さんは?」

「うーん。今まで通り街中の依頼をこなそうかな」

 採寸を済ませて防具屋を出た2人。滅多に手に入らない高ランク素材を持ち込みで、しかもそれが街の英雄、ということで、姉弟の防具製作を優先して仕立ててもらうことになった。

 直近の目標だった昇格試験の受験資格も手に入ったことだし、万全の状態で試験を受けよう、ということで、それぞれ行動を決めた。

「あ、そうだ。悠、今から孤児院行こう」

「え、何? いきなり」

「もう今日は何も用事がないでしょう? 市場で食べ物を買い込んでから行きましょう」

 すでに決定事項のようで、ヒメカに促されるままに連行されるのだった。



「こんにちはー」

「あーヒメカだ!」「お姉ちゃんだー」「知らない兄ちゃんもいるぞ!」「また美味しい物くれるのか?」

 少し寂れた建物の中へ入ると、たくさんの子ども達がヒメカ目掛けて飛びついてきた。ヒメカも分かっていたのか、体勢を崩すことなく子ども達のタックルを受け止める。

「皆お昼ご飯は食べた?」

「まだー」「今先生が作ってるー」「お腹へった」

「じゃあ、私も手伝ってくるわ。悠、子ども達をお願いね」

「わかった」

 ヒメカの指示に素直に頷き、ユウトは子ども達と遊ぶことに。子どもの世話は年の離れた従弟がいるため、比較的慣れている。

「さて、何して待とうか」

「ご本読んで―」「えー外がいいー」「おみせやさんごっこがいい」「ゆうしゃごっこー」

 てんでバラバラの声があちこちから上がるため、収拾がつかない。結局、ユウトが読み聞かせをすることに決めた。

「皆、昼食の用意が出来ましたよ」

『はーい!』

 颯爽と駆けていく子どもに、ユウトは本を片付けてから後を追う。

 テーブル一杯に並べられた食事に子ども達は釘づけになり、椅子に座りながらも今か今かとソワソワして待っている。

「今日はヒメカさん達から差し入れがあったので豪華ですよ。ありがたく頂きましょう」

『ありがとー! いただきまーす!』

 この孤児院の院長らしき年配の女性の合図で食べ始めた。

「悠、私達はこっち」

 子供用のテーブルはさすがに低すぎるので、ユウト達は別テーブルで食べることに。

「姉さんはここにはよく来るの?」

「まだ3回目よ。ここの子が迷子になっていたから送り届けたのが最初ね。持っていたお菓子をあげたら懐かれた」

 2度目の訪問の時、料理に飢えていたヒメカが手伝いを申し出たら快諾してくれたので、今日もやってきたらしい。機微には敏感なヒメカなので、孤児院にとっても問題ないのだろう。

「そんなに料理したかったの……?」

「そういうわけでもないけど、どうせなら美味しい物が食べたいじゃない?」

「あー……」

「食材も使わなかった分は寄付ってことで」

「それで日持ちする物を中心に買ってたのか」

「ふふふ。お2人が来てくださってとても助かりました」

 話していると、院長が会話に混ざる。子ども達の方はいいのかと目を向けると、年上の子達が下の子達の世話をしていた。

「挨拶が遅れて申し訳ありません。ユウト・ホウライといいます」

「ご丁寧にどうも。私はここの院長をしております、ミランダと申します」

 互いに挨拶を交わすと、ミランダも昼食を食べ始める。

「お2人は冒険者だとか?」

「はい。少し前まで王都にいたんですが色々な場所を見て回ろうと思って、まずはこの街に、と」

「あら、そうだったんですね。それはありがたいことです。……ところでお2人は此度の湧きで英雄と呼ばれるようになった冒険者がいるのはご存知かしら?」

「え……ええ、まあ」

 まさが本人ですとはいえず、苦笑する。

「うふふ。実はこの孤児院出身の子がそう呼ばれてましてね。本当に小さい頃から冒険者になる、と言っていた子だったので嬉しくて嬉しくて」

「へぇ……それは良かったですね」

 自分達のことではなかったために少しだけホッとする2人。出来ればこのまま気付かないでもらいたい。

「ナストっていうんですけど……」

「え」

「あら」

「おーい。院長せんせー……って、なんでお前がここにいるんだ!?」

 どこまでもナストと縁のあるユウトだった。



「なんでと言われても、姉さんに連れて来られただけだ」

「あら、知り合いだったの?」

 首を傾げるミランダに、ナストが冒険者仲間だと端的に答える。

「うふふ。ちょうど今あなたの話をしていたところなのよ? あのやんちゃだったあなたが英雄だなんて嬉しいじゃない。自慢しちゃったわ」

「いや、せんせー。そいつらも英雄だから。というかむしろそいつらが?」

「え! あらやだ。そうだったの? ごめんなさいね。そうとも知らずに私ったら……」

「いえ。お構いなく」

「そうですよ。私達、英雄なんて大層な呼び名で呼ばれるような人間じゃないので」

「そうそう。それよりナストはどうしてここに?」

 話を逸らそうとユウトがナストに振る。すると、ナストが少し言い辛そうにしながらも、答える。

「先生にべんきょー教えてもらおうと思って……」

「勉強……って昇級試験のか?」

「悪いかよ」

「何も言ってないけど」

 ふてくされるナスト。手には、ギルドで購入できる筆記試験対策問題集。

「……」

「……」

「……何とか言えよ」

「いや……予想通り過ぎて言葉が見つからない」

「だーもう! 悪かったな! どうせ頭悪ぃよ!!」

「そんな気はしてた」

「何だと!!」

 言い合いを始めるナスト達に、ミランダとヒメカは生温い視線を送る。どう見ても可愛い喧嘩である。

「悠、ナストさんの勉強見てあげたら?」

「あら、それはいいわね。ナスト、彼に教えてもらったらいいんじゃないかしら?」

「「え」」

 何故かそういうことになった。

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