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銀色の翼  作者: 市ノ川 梓
第零章 プロローグ
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第十九翼 聖女の翼

佑助が総隊長が居る場所に戻るとそこには巨大な身体の黒い龍が一匹存在しているだけだった。あんなに大量に居た機械兵は一体も動いておらず、道端にあったのと同じように黒焦げになって倒れていた。ゴードンは血まみれになって倒れている…。

いったい何があったんだ?佑助は困惑した。取り敢えず総隊長を探さなくては…。しかし佑助が探すと間もなく倒れている総隊長を見付けることが出来た。しかし得体の知れない龍が周りを徘徊しており無闇やたらに動けない。佑助は船から持っていた軌跡の長剣を鞘から引き抜いた。幸いまだ龍は佑助の存在に気付いていない様だ。徐々に総隊長に近付ていく…。

がその時だった。辺りを飛んでいた龍が突然総隊長の身体に吸い込まれていったのだ。佑助は唖然とそれを傍観する事しか出来なかった。龍と眼が合ったとき…それは俺が死す瞬間だ。構えた剣のに力が入る。

暫く変化がなく佑助が総隊長に近付こうとしたら突然それまでぐったりしていた身体がむくっと起き上がった。

すると総隊長の身体がバキバキと音をたてて変態していった。背中からは黒い翼が生え、口からは大きな牙が見える…爪もそれとは呼べない程巨大なものになっている。髪の毛は赤く染まり背丈ほどになる角を生やしていた。それは元が人間と分からなくなる程変わり果ててしまった。佑助はそれを目の当たりにして怯え、恐怖戦おののいていた。それはまるで…そう終末の獣だった。

佑助がゆっくり後退りしていると、獣は佑助に気付いた。真っ赤な眼を見るとそれが総隊長であったことを忘れてしまいそうだ。

「コの…狂気ノ中で…イキテ居るナンテ…ナ!!」

その声は脳に直接話し掛けるようだ…少なくとも耳からは聴こえていない。

佑助は恐怖で動くことが出来なかった。未だかつてこんなに恐怖したことは無かった。それは真の恐怖そのもの…脚がすくむとかそう言うレベルではなかった。まるで同じ空間に居ることが許されないような感じ…。

「キサマハ…ヒカリの…センシ…末裔カ…」

上手く聞き取れなく何を言っているのか分からない。そして頭が割れそうな痛み。あまりの痛みで自我を失いそうだ…。

「ギギ…ッコロス…コロス…コロス…!!!」

いきなり獣は佑助に襲い掛かった。どうする事も出来ないのだ。自我を保つことで精一杯…死が…こわい。

こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい…死ぬのが…こわい。

佑助は身体中に激痛を感じた。しかし一瞬だけ…死ぬ痛みは一瞬だと聞いたことがあるがその通りだ…。あとは意識が飛んでいくだけ…もう自分は生きていないのだ。


眼を開くとそこには何も無かった。目の前に居た恐ろしい化け物や、沢山の機械兵の死体…自分の身体すら無い。ここには空間だけが存在しているのか。

ふわふわしていて何とも不思議な感じだ。意識だけが自分の存在を証明しているようだ。暫くして佑助は自分に感情も無いことに気付いた。嬉しくも悲しくも楽しくも怒りも沸かない…この気持ちは?

「生きたいですか?」

突然、どこからか女の人の声が聞こえたが驚きはしなかった。まるで前からここに居たような…女の正体を知っているような。

「…。」

佑助はもう生きたいと言う感情も産まれなかった。もうあんな恐怖と戦いたくない。

「いや…貴方は生きなければならない。…貴方はこれからの世界において重要な歯車なのだ。」

意味は分からなかったが女の言っていることが間違いにも思えない。

「生きる…生きてください…どんなことがあっても…まだ間に合う…私の力を貴方に託します…いつか私を助け…て…。」

声が聞こえなくなると周りが光に包まれた…徐々に佑助に身体と感情の感覚が戻ってくる…この感情は…

佑助に身体が戻ると目の前に光輝く一本の剣が現れた。刀身は鏡のように佑助を映し、神々しさはこの世の物ではない。

またどこからか声がする。

「それは仮の姿…時に私は貴方の腕となり、盾となり時には貴方になります。さぁ…手に取りなさい…世界を…恐怖…から…。」

佑助の手は意識とは別に勝手に剣をとった。そのとたん身体が翼のように軽くなり、無限に勇気が湧いてきた。恐怖を微塵も感じさせない力…人の身を離れ孤高のモノとなった。佑助は眼を閉じた…勇気を身体にしまい込むように。


次に眼を開いた時、終末の獣が目の前にいた。もうあの時の恐怖を感じない。その心に秘めるは無限の力と勇気。

「ヤハリ…お前ガ…ダがモウ関係ない…シネ!!」

佑助は獣の攻撃を一瞬でかわした。もう獣の攻撃を一切受けることは無かった。佑助の手にはいつの間にか聖剣が握られていた。それを一振りすると獣はとたんに黒血を吐き出した。ダメージを与えたようだ。

「ヴグアァアアァ!!!」

獣は頭を押さえだした。

「コレハ…残留イシ!?ギャアアア!!」

どこからか総隊長の声が聞こえた…

「佑助!!私をコロセ!!私を早く!意識のあるうちに…私の心配をするな!ヤレ!」

佑助は躊躇った。

「早くシナイト完全に取り込まれる…ソウナったら手遅れにナルゾ!!早く、トドメヲ!!」

佑助は頷いて剣を振ったが、獣は間一髪攻撃をかわした。

「クソッこのケガデは…ココハ一旦ヒクシかナイ…。」

と言って宇宙の暗闇に消えてしまった…佑助はそれを見て内心安心していた。自分は総隊長を殺そうとした…。俺は何のために暗殺部隊に…。

佑助は剣を手放して、その場に倒れてしまった。痛みと疲れで気を失いそうだ…

「軌跡…すまない…。」

また佑助の意識が遠のいていった。

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