第二十翼 最初の愛
舞は佑助と別れてからいまいち仕事に身が入らなくなっていた。あれ以来佑助とは連絡をとっていない。それは佑助なりのけじめの付け方なのだろうし、舞もそう理解していた。しかし舞は佑助を愛しているのだ。考えずにはいられない…。実質、5、6年も付き合っていたのに急に友達に戻ることなんて出来るわけがない…。
舞にとっても佑助は特別な存在である。佑助が問題を抱えたら常に二人でぶつかってきた。佑助の全てとは言えないが自分は佑助に一番近い存在だと言う自負の念も多少どこかにあったのかも知れない。
しかし実際は違っていた。佑助にとって岩島舞と言う存在はあくまで親友だったのだ。愛し合うことなど…。今の佑助が抱えている問題は私の力ではどうする事もできなかった。
「舞ぃ~どしたん?」
隣でオペレートしていた友人が話し掛けてきた。そろそろ休憩の時間だ。
「えっ?あっ…何でもないよ。それより…休憩、入ろっか?」
「?うん…。」
元カレの事が頭から離れないの…なんて相談するのは恥ずかしい。それにこんなご時世、恋人を作る人もあんまりいなかった…友達が言うには心配事を増やしたくないからだそうだ…。確かに家族や友達の安否とか常に心配しているけど…よくたかが一人彼氏が増えることがそんなに負担になるだろうか?私はそんなにさばさば生きられない…。それは幼馴染みが生きていること…がやっぱり大きいからなのだろうか?
舞達はGC内のオペレーター専用の食堂にきた。GCは単体で生産活動、消費が行える基地であるため食事に不自由する事なく生活出来るのだ。舞はいつもの食券を買ってカウンターのオバサンに渡した。札を渡されて席に着くとまた溜め息をつく。…今日何回目だろう?もう溜め息しかでない…。友人が戻ってきた。手に紙パックの飲み物とパンの袋を2、3個持っている…知佳ったら…また…。
「よっ!…あんたまたカツカレー?…よく食えるわよねぇ…。」
今は一人にして欲しかった。
「あんただって…いつものパンとコーヒーじゃない…。」
知佳はニヤリと笑った。
「ちっちっちっ…。甘いなぁ、舞…今日は焼そばパンじゃなくてメロンパンなのだ!」
とメロンパンを自慢してきた。ただのパンだ…。知佳は私の気持ちを分かってこんな事をしてるのか…無理して笑顔作っているのがばればれだ…。
知佳の父親が帰還命令が出た日に帰らなくなってから今日で一ヶ月。知佳は父親大好きっ子だったから心配で堪らないだろうに…。私が暫く元気ないことに気づいて励ましてくれている…しかし時にはその笑顔が凶器になって心を傷付けることもある。
舞は自分の脆さに情けなくなって涙が出そうなのを我慢して奥歯を食いしばった。
『受付番号1021様…食事の準備ができました…3番カウンターにお越しください…』
自分の札を見ると1021…取りにいかなくては。舞が立ち上がると知佳がパンを口に含みながら聞いてきた。
「呼ばれた?」
私は静かに頭をたてに振った。ゆっくりカウンターに向かう…もうあれから何もかもどうでも良くなってきた。
「舞っ!!ファイトだよ!!」
席から大分離れているのに知佳の声がはっきり聞き取れる…。舞が気になって後ろを見ると満面の笑みでこっちに向かって手を振っている。みんなも何事かとこちらを見ていて恥ずかしくて爆発しそうだ…。私達の休憩時間が普通より少し遅れていて良かったと初めて思った。もし昼食時ど真ん中だったらもっと多くの人に見られていただろう…。
もう昼時は過ぎているため人はちらほらとしかいない…。新人は昼休みが遅い。今時珍しい年功序列型というやつらしいが、舞はあまり学力が優れているわけではないため難しい言葉の意味が分からない。こんなんでよくオペレーターが勤まるものだ。
「あの…1021です。カツカレーを…。」
受付のオバサンが気付いた。
「あぁ!!やっぱり舞ちゃん?今時カツカレー頼むの舞ちゃん位だからねぇ…。」
なんでこの人、私の名前知ってるんだろ…
ふと舞は胸元の名札を見た。これか…。
「ちょっとした有名人よ…舞ちゃん!はい、カツカレーね!」
「どうも…。」
舞は札をカウンターにおいて、カツカレーの乗ったお盆を掴んだ。知佳のところまで戻らなくては…
その時だった…舞は目眩を感じた。
次の瞬間身体中の力が抜けその場に倒れてしまった。お盆の中身を回りにぶちまちゃった…。遠くに悲鳴が聞こえる…受付のオバサンの声も…何かが近づいてくる…知佳かな…。
知佳の顔が視界に入ったとたん意識失った。
次に舞が意識を取り戻した時、舞に見えた光景は想像を絶するものだった…。
これで銀色の翼プロローグは終わりました。予定ではもう少し短かったんですけど…舞がでしゃばっちゃって…。
佑助が神の力を使うようになってからがこの話の本編です(笑)
主人公は一応、佑助ですがここからは舞の物語も並行して進みます。
今までのサブタイトルは「○○の翼」でまとめられていましたが、それは佑助目線で進む物語。
サブタイトルが「○○の愛」となっている話は舞目線で書かれた物語と思って読んでください。
割合としては翼:愛が7:3くらいで進みます。あんまり互いに関与しませんが話の中盤で舞の存在がとても大事なものとなってきますので愛の話でも飛ばさず読んでくれると嬉しいです。(佑助の話だけ読んでも一応話は繋がります。)
しかし舞の話は佑助の話の様に戦うシーンがちょっと少なく、どちらかと言うとラブコメのような感じに…なっちゃうかもです。戦闘シーンもあるにはあるんですが。
この話は18禁どころか15禁にもしていません。最初は血生臭いシーンもあるので15禁にはしようかと思っていたのですが、私の表現力ではそんなシーンにもならないような気がしたのでしませんでした(笑)
…だから18禁的なシーンは一切ないと思ってくれて結構です。純粋なSFと恋愛を書きたいと思っていますから。
2012.1.6 市野川 梓




