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銀色の翼  作者: 市ノ川 梓
第零章 プロローグ
14/43

第十三翼 鬼気の翼

――AM3:30 第5番隊長室内にて――

まだ眠い…。それはまだ朝の三時半であるのであるのだから。いや、どちらかと言うとまだ夜なのか?宇宙での暮らしに慣れたせいかあまり昼とか夜ということにあまり興味を示さなくなった。まだ寝てて良い時間だ。廊下からは早朝出勤の隊員の声が聞こえてくる。全く良い迷惑だ。折角の貴重な睡眠時間を邪魔してくれる。佑助がまた寝ようとすると、すぐ枕元の通信端末に連絡がはいった。佑助は眠気声で返事をする。何だって言うんだ…。電話の向こうの声の主はすぐに分かった。

「おう、佑助か?夜遅くにすまんな。」

電話の向こうも少し眠そうだ。

「…?(はじめ)か?どーした?」

一…第一番隊隊長小野一。一番隊は主に戦闘兵の訓練や管理を行っている。正規の軍員は既に戦闘、教育課程を修了しているためあまり一番隊とは関わりをもたなくなる。佑助も例外ではなく一番隊に知り合いは少ないが自分が宇宙警察入所当初、世話になった一とは多少の交友があった。

「いや、なんかなぁ…副隊長がノーバのメンバーに様があるらしいんだよ。」

一番隊の副隊長と言えば…嫌な記憶しかない。GC内では軽い有名人だ。…鬼教官としてであるが。

「えっ…おっ鬼越副隊長が?」

佑助は全身から汗が吹き出てきた。そうとうなトラウマが有るらしい。

「まぁな…行かないともっと酷いことになるだろうよ。」

一もあまり鬼教官が好みではないらしい。

「うっ…。」

…どうやら行かなくてはいけないようだ。確かに行かなかったら、何をされるか分かったもんじゃない。佑助は了承の意を伝えて通信切った。なんでも4時半にエントランス集合らしい。今から急いで準備しなくては間に合わない。戦闘出撃時以外は普段そんな重装備をして出掛けないが、相手は鬼教官である。いつ、何時でも装備に気を抜かないのが基本である限り佑助は基本を忠実になった。

服装の乱れもなくし、装備は完璧。準備に余念がない。部隊長の証であるキャップを深く被り部屋をでた。見た目は宛ら、新入兵だ。こんなにきちんとした服装で外にでるのは久しい。佑助がエントランスに着く頃には他のメンバーは既に集まっていた。まだ時刻は4:20…時間前行動も基本中の基本。もっともこんなに早く来る必要はないが。メンバーの服装もやはり、きちんとした正装だ。大和に関しては継ぎ接ぎ白衣以外の服装を見たのがもう数年ぶりに感じる。エントランスには俺たち以外の兵はいない。静かなものだ。すると守が佑助に気づいて近付いてきた。こいつ、普段は遅刻の常連なのに今日に限っては俺より早い。守も装備に余念がなく、完璧な軍服の着こなし。

「よお、佑助。今日は最悪の一日になりそうだな…。」

守も鬼教官にしごかれた身だ。その反応は平常である。

「だな…。」

佑助はあくまで鬼教官への恐怖の念を表に出さなかった。

「…気づいたか?軌跡…、余裕だぜ?」

軌跡が…?何だと言うのか。佑助は壁際で外の防衛ラインの様子を見ている軌跡の方向に視線を向けた。

「!!マジかよ…。流石だな…。」

佑助の目線の先に居た軌跡はいつもと同じ制服をちょっと着崩したラフな格好だった。全く、正装する気など感じさせない表情。

「まぁ、確かに軌跡には手を出せないわな…。」

守は羨ましそうに軌跡を見ていた。まさか鬼教官の前でその格好とは…。佑助は改めて軌跡の強さを感じた。

しかしそれもそうだった。軌跡は唯一、鬼教官に勝利した卒業生なのだから。

第1部隊の戦闘課程を修了時に鬼教官と本気の組み手をすると言う恒例行事がある。いくら正規の隊員になったとは言え、相手は鬼教官。圧倒的な差で負けるのが普通であり、後に暗殺部隊に所属となるメンバーだって当然負け越していた。

元々は鬼教官への日頃の鬱憤(うっぷん)を晴らすために始まった行事だったが今や鬼教官の一方的な暴力を受けるだけのものとなっていた。ほぼ確実に負傷すると言う恐怖の行事。しかし軌跡はその行事において鬼教官に絶対的敗北を味わせたのだ。教官は全治半年と言う大怪我。噂に寄れば軌跡はなんの躊躇(ためら)いもなく教官の腕をぶった切ったらしい。それは伝説となり今も軌跡は最強の戦士として名を馳せている…。考えれば軌跡の伝説はあそこから始まったのかもしれない。軌跡の代以降素手のみとなったのは有名な話。そんな敗北を記した鬼教官も軌跡には口出しが出来ないのだろう…。軌跡もそれを分かってやっているのだ。

「おい…集まれ。」

どこからともなく地を這うような声が聞こえる。そして感じる圧倒的な殺気…。間違いない…鬼教官だ。エントランス奥の廊下からゆっくりとこちらに向かってくる。身長は2m近くあり、体つきはまるでゴリラのよう。メンバーの間に緊張が走った。…軌跡を覗いて。やがてエントランスにやってくると軌跡を横目でチラリと見て軽い舌打ちをした。軌跡は余裕の表情、流石だ。

「…こい。」


鬼教官が連れてきたのは、第4戦闘場。GC内でもっとも広い空間であろう。昨日行った遊園地の5倍はある。そこに着くなり教官はすぐに壁にモニターをだした。

「この前、お前らがゼアール星に行った時の報告を小野隊長から聞いた…。」

すごい殺気だ。軌跡とそう変わらない。

「たるんでんじゃねーのかぁ?…俺が考えた結果、お前らにはこれから殺し合いをしてもらおうと思う。…マジのな。」

一行は一瞬戸惑いを見せた。意味が分からん。

「勝ち抜き方式でワンマンでの殺し合い。んで勝ち残った奴が俺と殺る。」

…こいつ、バカか?そんな事したら軌跡が勝ち残るに決まっている。そんなの軌跡の勝利は目に見えている…。…いや、それが目的なのか?

「流石にお前らが本気で殺し合いをすると死者がでるので、相手に一滴でも血を流させた方の勝ちとする。…良いな。」

佑助は鬼教官が何を考えこんな事を行うのか見当がつかなかった。なにか策でも有るのか?…しかしここを卒業してからさらに俺達は強くなっている。それも暗殺部隊だぞ?…悪策も良いところだ。

守も大和も黙りをきめている。軌跡に関しては既に話にすら入ってきてない。

「…では、一回戦…。藤咲対…武蔵っ!!」

軌跡と大和は戦闘室に残り、残りは隣のモニタールームに行った。このモニタールームから戦闘室に設置されたカメラの映像を観ることが出来る。カメラに映った二人の顔は真剣そのものだ。軌跡は背中に長剣を一本のみ。それに対して大和は重装備だ。

「やっぱり…軌跡の勝ちかな?」

守が話し掛けてきた。…まぁそうだろうな。いくら俺達が暗殺部隊だとしても軌跡はその中でも別格なのだ。

「しかし、良い勝負になるんじゃないか?」

戦闘室はバーチャルシステムを採用さているため周りの環境をすぐに変更する事が出来る。カメラの向こうは猛吹雪が吹いているのだ。佑助たちには見えないが。

「では、始めよう。」

鬼教官がマイクに向かってコールした。途端に二人の姿は消えてしまった。暗殺部隊に所属している限り殺しは人にバレてはいけない。そのため身を隠す技術に長けているのだ。どこに身を潜めているかカメラから見ても分からないのだから吹雪の中では尚更だろう。

軌跡は基本的に長剣以外の武器を持ち歩かない。それは動きやすさからだと言うがどうやらそれ以外の理由があるらしい。どう見ても暗殺に向く道具ではないが軌跡ぐらいの技量になると別に長剣だけで対処出来るのかもしれない。

それに比べて大和は飛び道具を多用する。特にクナイや手裏剣などの古風なものが多い。普通、それ単体ならそれほど殺傷力はないがアイツは薬物に精通してるため、勿論道具には毒薬、もとい劇薬が刷り込まれている。そのためちょっとした傷も大和によるものであれば命を落とすこととなる。

どちらも怪我では済まされないと思うのだが。カメラの映像が切り替わるとそこでは二人の戦闘が行われていた。しかし普通の武器のぶつかり合う戦闘ではなく一撃、二撃攻撃したらまた暗闇に消えて相手の出方を見ると言うなんともビビりな戦闘である。

しかしこれも俺達が暗殺部隊である由縁。ムダな戦闘は避けるのだ。なるべく一撃で殺せるように常に相手の動きを追って一瞬の隙をつく。相手に姿を見せているようではまだまだだ。


大和と軌跡の戦闘は続く。

あけましておめでとうございます。

今年も銀色の翼をよろしくお願いいたします。

…って言ってもまだ十四話ですけど…。


…すいませんちょっと予定を変更してもう少し暗殺部隊の戦い方について掘り下げようと思います。暗殺部隊なのに中々暗殺していなかったので…。


本格的な戦争シーンはもう少し先になりそうです。もう少し、話が進んだらあと書きかなんかで登場人物の紹介でもしようかと考えてます。


ではこれからもよろしくお願いします。


2012.1.1

市野川 梓

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