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第二十二環 初めての試食

ダイクさんとタベレル環へ行った日から数日後、俺は野菜を持って再びタベレル環を訪れようとしていた。

・・・ハカリも誘って。


「まさかジンの方から一緒にご飯に行こうって連絡来るなんて思わなかったなぁ!」


今日は珍しく、ハカリは休日だったようだ。

集合場所にいつもの白衣とは違い、私服で現れたハカリに、俺は少し驚いたものだ。

そして、あれからひそかに練習していたのか、今日の髪型はしっかりしたお団子だった。


「ダイクさんの娘さん・・・クッキンちゃんがシェフなんだ」

「それで、うまかったから誘った」

「そうなんだぁ、楽しみだなぁ!」


タベレル環に着くと、ちょっと昼にはだいぶ早い時間だからか、環内には人がまばらにいるくらいだった。

奥へ行って厨房を見ると、クッキンちゃんと丁度目が合った。

俺に気付いた瞬間、クッキンちゃんはパッと笑顔になった。


「あ!ジンさん!いらっしゃいませぇ!」


クッキンちゃんはわざわざ厨房から出てきてくれた。

それから少し不思議そうに俺の隣のハカリを見た。


「えっと、そちらの方は・・・?」

「俺の同僚のハカリだ」

「そうなんですね!初めまして!クッキンです!気軽にクッキンちゃんって呼んでくださいねぇ!」

「ハカリだよ。よろしくね」


2人は軽く挨拶をし、それから俺は早速本題に入った。


「クッキンちゃん、これ持ってきたんだけど・・・」


俺はそう言いながら、クッキンちゃんに持ってきた野菜が入った箱を見せた。

それを見てクッキンちゃんはより笑みを深くした。


「あぁ!お野菜!こんなに早く持ってきていただけるなんて嬉しいです!」

「早速買い取らせて頂いてもいいですか!?」

「あぁ、そうしてもらえると助かる」

「わぁ!ありがとうございます!じゃあ買い取り担当の方をお呼びしますね!」

「ドーリアさん!買い取りの方お願いできますかー!」


クッキンちゃんは厨房にいた店員のような人を呼んだ。

ドーリアさんという人が、どうやら買い取りなど会計担当のようだ。

俺はドーリアさんに野菜を渡した。

すると、クッキンちゃんが声をかけてきた。


「じゃあ早速これで何かお作りしますね!」

「あ!試食なのでその分のお金はいらないですから!」

「いいですよね!ドーリアさん!」

「ええ、試食分ならいいですよ」

「ありがとうございます!では少し待っててくださーい!」


ダイクさんのようにガ―――ッと話したクッキンちゃんは、風のように厨房に去っていった。

口をはさむ暇もなかった。

唖然と見送ったが、ドーリアさんに少し笑いながら声をかけられた。


「フフ、すみません、そういうことですので少々お待ちいただけますか?」

「あ、はい。ありがとうございます・・・」

「さすがというか、クッキンちゃん、ダイクさんに似てるねぇ」


ハカリが少し笑いながら言った。

たしかに色々似ているなと思いながら、俺たちは適当な席に座って待った。


少しして、先にドーリアさんから、買い取りの代金をもらった。

それを受け取って、ハカリとしばらく話していると、ゴロゴロとクッキンちゃんがワゴンを押して戻って来た。


「お待たせしましたー!ジンさんのお野菜メニューですぅ!」

「試食ですので少しですが、お楽しみいただけると嬉しいです!」


そう言いながら、クッキンちゃんは俺たちの前に小皿を次々に置いていった。

小皿ではあったが、料理がまあまあぎっちりと乗せられていたものもあった。


「わぁ!どれもおいしそうだね!」

「ああ、見ているだけで腹が減るな・・・」

「えへへ、ありがとうございます!」

「こちらから、ナス入りチーズドリア、かぼちゃのポタージュ、大学芋、ポテトサラダです!」

「ポテトサラダはジンさんのイチオシ魔力野菜で作らせていただきました!」


クッキンちゃんが指し示しながら、料理を説明してくれた。

ポテトサラダ!?

それは俺が作ったポテトサラダとは見た目から全然違った。


「ジン、これがプロのポテトサラダだよ!」

「そういえば、あれから作った?」

「・・・いや」


そういえばマヨネーズも買っていなかった。

いや、それよりもう食べよう!


「まあ、いいじゃないか・・・いただきます!」

「なんか誤魔化してない?・・・まあいいか、いただきまーす!」

「どうぞー!」


まずはポタージュ、何というかまろやかで・・・クリーミ―・・・。

そしてかぼちゃの甘みがふんわり広がってうまい!

次にチーズドリア、熱そうなので少し、フーッと冷まして口に入れる。

チーズの濃厚さと、トマトソースの酸味がしっかりマッチしている。

たまに口に当たる香ばしいナスがアクセントになってうまい!

大学芋もパクリと口に放り込む、カリッとした部分の甘みと、その後に来る芋の甘さがお互いを引き立て合っててうまい!

そして最後に、ポテトサラダ。

俺が作ったものと全然違う、ポテトサラダ!

なんか玉ねぎが入ってるし、きゅうりもある!

ハムもあるし・・・具がいっぱい入っている!

しかもめちゃくちゃうまい!!


「おいしいねぇ!ジン、ポテトサラダどう?」

「俺のと、全然違う。これがポテトサラダか・・・うまい!」

「えへへ!よかったです!」


そのまま全部ペロリと平らげ、小皿の上は空っぽになった。


「「ごちそうさまでした!」」

「はい!美味しく食べて頂いて、ありがとうございます!」


クッキンちゃんは笑顔で俺たちにお礼を言った。

本当に今回もうまかった。

俺たちも口々にクッキンちゃんにお礼を言った。


「えへへ、これからもお野菜、楽しみにしていますね!」

「ああ、ありがとう」

「野菜をこんなにおいしくしてもらえて、俺も嬉しいよ」


俺の言葉にクッキンちゃんは満面の笑みで「はい!」と答えてくれた。

それを隣で見ていたハカリも、優しい笑みを浮かべていた。

その空気感に、俺は胸が温かくなった。


…


クッキンちゃんに改めてお礼を言い、ハカリとも別れ、俺はなんとも言えない幸福感に浸りながら小屋へと帰った。

タベレル環に野菜を持っていくようになったことで、毎回試食を出されることになった。

さすがに悪いので、クッキンちゃんと約束をし、各季節に1回、タベレル環の休環日に試食会が開催されるようになったのだった。


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