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第一環 はじまり

これは、何者かになりたい・何かを成したい俺が

この世界で、この街と、街の人々と共に成長していく物語



2032年、大地震をきっかけに湧き出した温泉があった。

水質調査中の温泉に飛び込んだおばちゃんがいたようで

そこから調査員の前でおばちゃんの身体が、みるみるうちに若返っていったことをきっかけに、研究・調査が開始された。

そして研究が進み、その温泉には『魔力』が含まれていることが分かった。

これが世界初の『魔力』の発見である。

魔力を発見した研究者は一躍時の人となり、今では教科書に載っているお馴染みの人だ。

そこから魔力科学分野ができ、地球上のすべての生命には魔力の器『うつ環』があることがわかった。

『うつ環』の由来は、魔力を発見したことで、世界を取り巻く環境が大きく変わるだろう、ということからつけられたと俺は聞いている。

『うつ環』や『魔力』のことについては、いまだに多くのことは解明されていない。

そして2048年の今、俺はある目的のために山を登っている。

後ろからはミレル環の・・・まあミレル環っていうのは所謂研究所だ。

そこの俺の同僚のハカリと共にこの山にある、とある場所へと向かっているのだった。

「こんな山の中にあるなんて・・・ゼェ・・・」

「事故を起こしたのは、確かに僕たちミレル環だけど・・・ハァ・・・」

「こんなところで新しい試みの牧場なんて・・・ハァ・・・ジンは大丈夫なの?・・・ゼェ・・・」

と、苦しそうにハカリが言っている。

ハカリは俺より少し年上の男だ。

いつもはミレル環のデスクに籠ってるようなやつだからこの山道はキツイだろうな。

「しょうがないよ、俺たちがやっちゃったんだし」

「まさかこの山の麓でやった、あんな小さな魔力実験で、この山の魔力が不安定になるなんて」

「誰も・・・わからなかっただろ・・・」

ハカリも、俺も、ちょっと俯いてしまう。

でも、俺は、それでも俺は少し・・・少しだけ違う。

「俺、ここで牧場を始めるの、結構楽しみ、だと思ってる・・・」

「俺にも・・・何かできるかもしれないしな」

そう、俺は今少し前向きな気持ちでいる・・・。

俺の両親は有名な魔力科学者だ。

俺は両親の研究している姿を見て、俺もいつか魔力科学者として何かを成したいと思っていた。

でも・・・今の俺は、何の成果も出せていない。

「そっか・・・ゼェ・・・」

「ああ!見えてきた!あそこだよ!」

ハカリが指差す先を見る。

生い茂る木々の先に、少し開けたところが見えた、そしてその先に・・・

酷く古い小屋がある・・・

その手前には、小さな菜園

「俺の始まりには、ちょうどいいかもな」

俺は少し笑った。

ここから俺の最初の一歩が生まれるかもしれない。

そんな前向きな気持ちに、今はなっている。

「よし、ハカリ!土地の魔力を調べようか!」

俺は背中にある大きな鞄から荷物を取り出す。

「そんな重いもの持って登っても、息切れもしないなんて・・・」

「君は、本当にフィールドワーク向きだね」

ハカリが笑いながら俺に言ってきた。

「昔から体力だけはあったからな」

「ほら、ハカリの得意分野だぞ」

俺は荷物から魔力測定器をハカリに渡す。

ハカリは名前の通り、計測が得意なヤツだ。

少し待っていると・・・

「ここすごいよジン!」

「今は緑の季節なのに、他の魔力色も観測できる!」

「これは・・・どうやら地中から色々出てきているみたいだ!」

ハカリが驚いたように言う。

それもそうだ、魔力が発見されてから、春・夏・秋・冬は緑・赤・黄・青の季節と名称が変わった。

その季節に空気中に漂う魔力の色、通称『魔力色』が多い色に合わせて変更された。

「この土地には主要魔力色がすべて漂ってる!」

「ここではもしかしたら、何を植えても季節を問わずに育つ可能性が・・・いや・・・」

「それはこれから、ジンの研究でわかるだろうね!」

ハカリが少し興奮気味に言った。

空気中の魔力色は大抵1色か多くて3色だ。

しかしここは主要魔力色である緑・赤・黄・青・紫・白・黒・橙・・・の8種がすべて漂っているようだ。

魔力色は本来もっと多いのだが、一般的にも覚えやすいようにと、国でこの8種が正式に決定された。

「そういえばジン・・・種とか・・・持ってきてる?」

「・・・すっかり忘れてたな・・・」

「イチバ環・・・オロシ姉さんのところに行ってくるよ」

俺は鞄を背負いなおした。

「わかった、僕はまだ計測中だから、オロシさんによろしくね」

そういうハカリに俺は手を軽く上げ、街へと向かった。


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