プロローグ
神様…あなたが私に与えてくれた役目をありがたくやらせてもらいます。
そう思えたのは私が再び生を得て、2度目の死に逝く瞬間だった。私は親すらも知らずに育ち、若い年齢でありながら悪い人達の下で雑用をしていた。
「クソガキ!それが終わったらトイレだ!サボらず手ぇ使って洗んだぞ!」
「っ…はい!」
怒声を浴びながら元気に返事をしてモップを掛け終わったらトイレ掃除に移った。
「うぇっ…」
何辺やっても慣れない匂い。匂いの根源となっている排泄物が無いにしても物凄い悪臭だった。
「神様は、いる。神様は、見ている。神様は与えてくれる。」
結構前にどこかで聞いたその言葉を反復しながら自分に生きる意味を見出していた。
そうやって少しの月が過ぎ、私は荷物持ちとして後ろに付きながら移動していた。私がいるこの人達は山賊だ。山賊は旅人を襲ったり村にこっそり盗みを働くなどして盗んだものを売っぱらったりして生計を立てていた。
「まっずいかも…」
口に入れたキノコは序盤は無味に近いが後半に不味さがドンヨリと押し寄せてくるような不快な味であった。私と少し離れた場所であの人達はジャーキーやらパンをむしゃむしゃと音を立てながらかぶりついていた。
「…ふぅ…もう寝よう」
まじまじとあの人達を見ていたら何を言われるか分からない、そう思いその日の夜は静かに背を向け就寝した。
その日の朝は突然だった。日が昇り始めたての頃に一つの影が寝起きの内の山賊の首をはねたのだった。
「うっ…うわあぁぁぁ!!!」
騒ぐ私に反応し山賊はその一人の男に襲いかかる。見た目は私と同じくらいの背丈なのに彼の姿を全く捉えられなかった。一人、一人と次々と血を噴き出し倒れていく。
「殺される…殺される…」
嫌だ…神様にまだ見てもらってない。神様にまだ与えてもらってない。
殺された山賊の持っている剣を拾い思いっきり横に振るう。目をつむっていた為空振る感覚が手に伝わりその後すぐに背中を深く切りつけられた。遠くなる意識の間際に山賊のリーダーすらもやられてしまったのが目に映り込んだ。
そうやって私の人生は終わった。…はずだった。
終わったはずの意識が戻り目を開けようとした。
(感覚がない…)
眼、手、足、それらが何にも感じない。五感すべてが感じることができなかった。あるのは意識のみ。暗闇のなかでただ何かが流れすぎるのを待っているのかも知れない。
どれぐらい経ったのだろう。何ヶ月、何年こうしているのだろう。あまりの時間の長さに泣きたくて泣いてしまう。心だけが泣いていてとても虚しかった。更に経つと悲しさとかも薄れてき、考えることをやめるしかなかった。
そういったある時、暗闇のなかで自分が回るような感覚に陥った。
(感じるはずが無いのに感じる…)
その感覚に俺は飲み込まれた。
「ん…んん……うぐ…」
「起きやがれクソガキャ!!」
「ぅあい!」
「とっとと起きて便所の掃除しろ!!」
「はいっ!……ん?」
流れるように行動したが今の状況に疑問符が生じた。
「なんで、えっ…」
ありえない、でも実際にそのあり得ない状況が現実に起きている。過去に戻っている。
「また、やり直せる…」
希望が出てきた。
そう思いながら何とかあの様な結末にならない様に行動していく。
「だめだ…だめだ…だめだ……」
どう行動しても同じような結果になる。あの森に行かないようにあの人達を上手く誘導しようとしても勘が鈍すぎて全く気付かない。逆に思いっきり発言をすれば暴力を振るわかねない。
もうあの森に行く事は止められない。逃げようとしても私には逃げらるような実力がない。もう止められない。明日また殺されてしまう。そう思うとこの日の夜は眠れない。あの人達は夜遅くまで酒も飲むから必然的に私が早く寝なければならない。
逃げるのならあの人達が寝静まった後こっそりと行くしかない。
「……寝たか…」
そう呟き私はこっそりと這うように動き出した。
しかし…運命は決まっている。木々から音がするのを聞き、そちらに視界を向けると見たことがある影が眠る男の一人を殺す。
「っっっ!うわぁぁぁ!」
再来する恐怖に大声を出さざる負えなかった。
「くそ…」
そう口にする男は起き上がって来る山賊たちを次々と倒していく。
「速い…」
そう思わず口に出してしまった。1回目の生で見た時は捉えられなかったが今回は更に速くなっているように感じた。劇的な感じではなく、もっと技術的な感じが…。
「音…だ…。」
あの時とは音が少ない。音が少ないから無駄が少ない。何故最初と違うのか理解した。
彼もあるのだ。私と同じように1回目の生の記憶があるため、山賊たち相手に前より更に上手く立ち回っていた。
そんな事を考えていたらその男は私に襲いかかってくる。拾い振るった剣は前と同じように空振りして再び背中を斬りつけられた。
その時私は悟りを開いたような感覚に陥った。
(そうか…神様は彼を選んだのですね…)
神様は彼を選び、彼にこの世界を託したのだと。私自身の想像だが何故この世界が巻き戻ったのか、それは破滅する未来を正せるのが彼なのだと勝手に理解した。巻き戻ったのはこの世界を正せなかったからだろう。
(恐らく私はただの糧…彼が世界を正しく導くためのただの糧なんだ)
それが私の生きる意味。神は私を見ていなかったわけではなかった。最初から私に役割を与えてくれていたのだった。崇高なる神様…あなたが託した彼が世界を正す者ならば喜んで彼の糧となりましょう。
そうして2度目の人生が終わり再び暗闇のなかで過ごすことになった。
そうやって再び過ごして3度目、4度目と巻き戻った世界で同じ様に彼の糧となり死んでいく。
しかし…7度目の生で私は崇高していた神を見放した。神が私を見定めていた筈がいつの間にか私が神を見定めていた。
そうやって神が選んだ…選ばれた彼を殺した。
皆さんに文面で分かりやすく伝えていける様に頑張りたいです。是非優しい目で見てくださると有難いです。応援お願いします。




