第15話 異世界リアル1
動画サイト 「異世界リアル」
通称“ビリアル“
<異世界きた>
<今年のルーキーはどうかな>
<勇者と魔法戦士、聖女の当たり年だからな>
<おっ、面白いのがいるぞ>
その中で、ひときわ目立つ一人がいた。
頭に黒い自転車用ヘルメット。
紺色ジャージ。
肘にエルボーパッド、膝にニーパッド。
足元だけ妙にしっかりしたレザーブーツ。
<なんだこの装備>
<異世界実習でその格好!?>
<めちゃくちゃ浮いてる>
<ジョブは魔法使い? 髪は白いから支援系か>
引率の先生の怒声が響く。
「お前ら! 遊びに来たんじゃないぞ!」
「まずはあいつらでレベルを上げろ! ただし、自分のパーティから離れすぎるな!」
「ダンジョンには入るな」
カメラの先、草むらにはスライムとホーンラビットが映っていた。
<実習の定番>
<最初はスライム狩りか>
<ここまでは平和>
<みんな通る道。しっかりやれ>
戦士が剣を振る。
スライムは何度かの攻撃の後、砂になった。
一撃で砂にした人も数人いた。
武闘家が飛び込む。
蹴りでスライムが弾ける。
魔法使いが炎球を放つ。
燃え上がる炎で砂になるスライム。
<みんな普通に戦えてるな>
<最初はみんなこんなもんだろ>
<今が一番いい時>
<そういえば、誰が勇者?>
<それより問題は、後ろの黒メットのジャージだろ>
ジャージの男が、意を決してスライムにダガーを振り下ろす。
ぷにっ。
<あっ>
<入ってない>
<え、通らない?>
もう一度。
突く。
斬る。
払う。
ぷに。
ぷに。
ぷに。
<全部弾かれてて草>
<これだとレベル上がらないんじゃない>
<攻撃力ゼロ? そんなことってある>
<だとしても、何のジョブ?>
その直後、スライムの体当たり。
ジャージの男がよろめく。
「ハハハ! お前、スライムに負けてんじゃねぇか!」
「ヒヒヒ! スライムに舐められてる!」
「フフフ! もう帰ったほうがいいかもね!」
<スライムにやられてる>
<こいつら酷いな。同じパーティだろ>
<でも映像的には面白すぎる>
<今回のゲートアウト1号になるか>
<ちょっと可哀想になってきた>
映像は少し飛ぶ。
今度はダンジョンの中だった。
淡く光る壁。広い通路。左右に分かれた道。
パーティは右へ進む。
<おい、おい。入るなって言われてたろ>
<問題児、四人組だな>
<ジャージ大丈夫か。ついていってるじゃん>
ひらけた空間に、二体のゴブリン。
魔法使いのファイヤーボールが一体に直撃。
戦士と武闘家が飛び込み、追撃でその一体を倒す。
だが残った一体が叫ぶ。
奥からさらに三体のゴブリンが走ってくる。
<増援きたー>
<新人あるある>
<倒しきれないとね>
<叫ばせた時点でやばい>
三人は奥の三体へ向かった。
そして、ジャージの男の前には最初の一体が残る。
ゴブリンが棍棒を振り上げる。
踏み込んでダガーを突き出す。
カシュッ。
<ん?>
<何その音>
<刺さってない?>
ゴブリンが後ろを向いた直後に、三度。
カシュ。
カシュ。
カシュ。
刃が、柄の中へ引っ込んでいる。
<びっくりナイフ!?>
<なんでダガーがそうなるんだよ>
<これが本当の歯が立たない>
ゴブリンが振り向く。
口が開く。
「ギャギャギャギャギャ……!」
<ゴブリン笑ってる>
<モンスターでも面白いんだ>
<申し訳ないけど、面白い>
さらに二体、奥から追加。
三体のゴブリンがジャージの男を囲む。
<終わった>
<これは無理>
<誰か助けろ>
棍棒が振り下ろされる、その瞬間。
「ヘブシッ!!」
くしゃみ。
体が前屈みになり、棍棒が頭上を通り過ぎる。
後ろからの一撃を避けようとして転ぶ。
横から来た一体の棍棒も空振る。
<!?>
<くしゃみで回避>
<意味分からんけど、避けてる>
<もう笑うしかない>
三体の棍棒が何度も振り下ろされる。
なのに、当たらない。
滑る。転ぶ。ふらつく。
だが、全部紙一重で外れていく。
<ハハハ。すごい>
<逆に才能では?>
<本人も分かってない感>
<回避特化すぎる>
そして、挟まれたその瞬間。
どさっ。
ジャージの男が尻餅をつく。
同時に、二体のゴブリンの棍棒が互いの頭に直撃した。
<へ?>
<自滅したwww>
<なんだこの実習映像>
<コントかよ>
二体が砂になる。
残る一体が逃げようと背を向ける。
ジャージの男が棍棒を拾い、後頭部を狙って振り下ろす。
「スパーーーン!!」
軽くて大きな、ハリセンみたいな音。
<追撃のハリセン>
<音wwwww>
<棍棒で、その音出るの何>
<完全に演出入ってるだろ>
ゴブリンが前のめりに転ぶ。
その背中を――氷の槍が貫いた。
カメラが振り向く。
通路の奥。
右手を突き出したまま、銀の髪を揺らした女性が立っていた。
<助け、きたあああ>
<かわいいな>
<ここで登場は熱い>
<銀髪つよ>
<一撃で持ってった>
彼女のパーティーがこちらへ近づいてくる。
銀髪の彼女は、ジャージの男の前で足を止めた。
「夏さん、大丈夫ですか?」
<夏さん!?>
<知り合いか>
<呼び方やわらかいな>
<特定できた。羽賀登野夏、お笑い師だって>
<仕事早いな>
<お笑い師って、異世界行くんだ?>
ジャージの男は、まだ息を切らしながら頷く。
「……ああ、大丈夫」
<いや無理あるだろ>
<強がってて草>
<でも生きてるの偉い>
映像が変わり。
門の近くに、全員が集まっている。
引率の先生が一言。
「……なるほどな。とりあえず今日のところはここまでだ。全員、帰還する」
全員が順番に門へ向かう。
映像はここまでだった。
<今年の推しは?>
<俺はワインレッドの髪のモデルみたいな子>
<確かに。スタイルめちゃくちゃいい>
<身長高くて、腰の位置も高くて、足長っ>
<立ち姿が絵になりすぎる>
<細いのにちゃんと胸あるの強い>
<特定できた。真宮寺真里亞。勇者>
<えっ、あの真宮寺グループの一人娘?>
<勇者って、剣が使えて、攻撃魔法も回復魔法もできるんだろ>
<何でも持って、なんでもできるってか>
<俺は銀髪の子>
<クールビューティって感じ>
<俺も。胸元まで含めてシルエットがきれい>
<幼さが残りつつ、大人になる直前って感じ>
<線が細くて、守ってあげたくなる感じ>
<そうか? 俺はああいう子に淡々と怒られたい>
<なかなかの趣味だな>
<こっちも特定。東雲六華。魔法戦士>
<二人とも顔もスタイルも強すぎる>
<銀髪の六華ちゃんは透明感、ワインレッドの真里亞ちゃんは完成された美人って感じ>
<で、お笑い師の夏くんは、ゲートアウトしないで、いつまで持つかな?>




