向日葵の光の下で
暑い最中に町の少し外れを歩いていると、子ども達のはしゃぐ声が聞こえてきた。
ホイッスルの音。
そして、「どぼん」「バシャバシャ」といった水の音。
どうやらプールの授業があっているらしい。
君との思い出は、プール無しでは語れない。
なぜなら僕たちは水泳部だったから。
いわゆる「強い部活」ではなかったけど、それでも二人で練習メニューを考え、部員をまとめ、みんなで大会に行くための準備をして。結構大変ではあったけれど、楽しかった。
もちろん、二人で話しながらわざとゆっくり歩いたり、遠回りして帰った日々も。
大人になってからも、君とはその頃の話ばかりしていた。それもそのはず、二人で共通の時間を過ごしたのは、その頃しかないのだから。
それにしても「『私が水泳部だった証拠を見せてあげる!』って娘に言って背泳ぎを始めたら、全然浮かばなくて沈んでく動画撮られちゃって恥ずかしかった〜」って言うのは、笑えたよね。
もうその頃は、入退院を繰り返していたはずなのに、なんか君らしい。ショックだったと言う割には、コロコロと笑っている君が、またさらに。
そんな事を考えながら歩いていると、フェンス越しに水が飛んで来て、少しだけ濡れてしまった。
直前に大きな水しぶきの音が聞こえたから、多分勢いをつけて飛び込んだんだろう。その証拠に、ホイッスルでの警告と先生の怒る声が聞こえる。
でも、今の僕にはちょうどいい。
少し頭を冷やさなきゃと思ってたところなんだ。
僕はまだ、君に会いに行っていない。
忙しいから、なんて当たり障りのない事を言うのは、君に対して誠実な答えではないよね。
まだ信じられないから。
まだ信じたくないから。
そして、現実を受け入れる事が、怖いから。
向日葵がグラウンドの片隅で揺れている。
君の笑顔は、暑い最中でも大きく咲き誇る向日葵のようだった。




