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74、月光鈴蘭

 骸骨との身長差があるせいで見通しが悪い。大群に接近すると尚更だ。文字通り骸骨スケルトン仕様だから、向こう側が透けて見えてはいるが、如何せん数が多い。狂乱の騎士はこの大群にあって騎乗している分一際大きいので目立ちはするが。

「くそぅ、数が多いな・・・。あいつに近付くだけでも一苦労だな。」

 近くの骸骨共を手間ではあるが、一体づつ撃破しながらぼやく。

「強くはないんやけど、あの核みたいなやつを攻撃せなあかんから、えらい手間やな。」

 クロトは器用にアイテムボックスから手甲を取り出して装備をしながら目の前の骸骨を殴り倒している。やはりそうなるよな。この状況なら武器の仕様は当然の選択か。なんとかまとめて倒す方法はないものか・・・。

「クロト、さっきの爆発の法術で数を減らせないのか。」

「爆炎弾か・・・。あれはわいの力では一日に一回位しか使えんのや。すまん。」

 特徴が似ているのはなんとなく分かってはいたが、それにしてもな気もするが。

「だから飛ばし過ぎるなって言ったのに。」

 別に本気で責めてる訳でもない。

「別に使えん訳でもないねんけど、一応念の為に必殺の一撃の分を温存してはあるんや。」

 当然の判断だな。元はと言えば電影弾を提案したのは俺だし、この大群に喧嘩を売ろうと提案したのも俺だ。この状況を作ったのは俺って事だ。という事は、此処は俺がなんとかやるしかないか。さて、どうするかな・・・。

「そうか、じゃあ・・・少し離れててくれ。近くにいると巻き込まれるぞ。」

 頭の後でアイテムボックスに両手を突っ込みお目当てのものを掴む。

「何するつもりや。」

「向こうも使ってるから、俺も武器を使おうと思ってな。ちょっと広範囲になるから危ないぞっ・・・。」

 左右の手にそれぞれに鎖を掴み、勢いよく引き抜く。

「確かにこれは危なそうや・・・。頼んだ。」

「電影弾で大分蹴散らして貰ったからな、今度は俺がやろう。」

 引き抜いた鎖が骸骨達の頭上から骸骨達と共に大地を叩く。今の一撃で十数体の骸骨を叩き伏せる事はできたが、核を突き無に還す事が出来たのは五六体か。

「なんやっ・・・。鎖か、なるほど。そうきたか。こら、任せた。」

「距離を取ってくれ、クロト。あんまり近いと巻き込まれるぞ。」

「分かった。様子を見さしてもろて。適当に離れた所で参戦させて貰うわ。」

 俺が何をしようとしているのかは正確には分からないだろうが、なんとなく察しはついているのだろう。後方へ大きく一飛びして離れる。それを確認しながら鎖を程良く腕に巻き付けて長さを調節する。

「白兎流格闘術・影技・乱気流。」

 二本の鎖を闇雲に振り回しながら骸骨の大群の中へと進んで行く。次々と骨が鎖に巻き込まれ飛び散っていく。此方から進行してしてはいるが、骸骨達の方から頼んでもいないのに自ずから俺の乱気流に巻き込まれにきている。どうやら意思や知性は存在していないのは確からしい。ただ生命力の様なものに反応して、それを狙い続けているのだろう。そこに生前の宿主の魂の様なものが囚われていなかったとしてもこの光景はあまりに不憫に思える。


 百数十体・・・この一団のおよそ半分、いや、五分の二程を蹴散らした。だがそれは骨を砕いただけに過ぎず、完全に消滅させるに至った個体の数はもっと少ない。形を残し大地の上で藻掻いている個体が散乱している。放っておいてもあまり邪魔にはならないとは思うが、目的は完全に消滅させて数を減らす事。俺は法術の類は得意ではないが、それでもクロトの放った爆炎弾なる法術と同等の威力のものを使えない事もない。この旅に出るまでに、俺だって幾らか練習してきたつもりだ。その成果は実戦でしか確認する事は出来ない。右の掌を突き出して狙いを定める。

「白兎流魔法術・重圧領域エリア・プレッシャー。」


ーー《白兎流魔法術・重圧領域エリア・プレッシャー》ーー


 魔法の名前を呟くと同時に手首だけを動かし掌を下に向ける。この仕草におそらく意味は殆どない。ただ俺が狙いを定め易い、範囲を指定し易いだけだ。

 練習の甲斐もあって、なんとか小学校の体育館位の大きさまで有効範囲を広げる事が出来るようになった。重圧領域が俺の前方に展開し範囲内の骸骨達を押し潰す。大地に倒れている個体も無傷の個体もまとめて沈む。狂乱の首無騎士も範囲に捉えようとも思ったが、ここからでは届きそうもなかったので、ここは潔く諦めた。

「そのまま潰れてくれ・・・。」

 想定していたより消耗が激しい。実戦で使うと、調整が難しいのか・・・。違うな、本能的に確実に決めようと力を込めたのだろう。此処でできる限り確実に仕留めたい。これで核を攻撃できれば良いのだが。

 重力の圧力に押し潰され骨の砕ける音が響く。徐々にだが大地に貼り付けられた骸骨達が少しづつではあるが、灰になって消えている。良かった、どうやら効果はあるみたいだ。これが効果がなかったら・・・それこそかなり骨だった。・・・。

「ぐぐっ・・・おいしょぉっ。」

 骸骨達の上に落とした重圧の塊を大地へと振り抜くつもりで右腕に力を込めて振り降ろす。

「そら・・・魔法か。」

 距離を取って別の場所で奮戦していたクロトが一段落したのを見極めて近付いて来た。

「そうだ。そんなに多くは使えないけどな。」

 重力魔法と鎖の召喚魔法を片手では少し足りない位だが。

「わいは一個も使えん。」

「それは・・・ちょっと条件が難しいからな。後で教える。」

 魔法の存在自体は認識しているのか。そりゃそうだよな、猫の魔王様が同行しているんだもんな。魔法を取得する為にはまず魔界獣に出会う必要があるからな。

「頼むわ。そんなら早いとこ用事を済まさんとな。」

「これで・・・半分ってとこかな。」

 重圧領域とクロトが倒した数を合計すると、この一団の数を半分程は削れたと思われる。簡単に目視した感じではあるが。だが問題の首無騎士は健在だ。さて、あれはどうしたものかと首無騎士に視線を向ける。

「・・・嘘だろ。」

「なんや、どないしてん。」

 相手は首無騎士のはずなのだが・・・。本来ならそんな事は絶対にないはずなのだが。

「あいつと目が合った・・・。」

 実際にと言うより、感覚的にそう確信した。

「そんな阿呆な。」

 そう思われても仕方がない。だが嘘ではない。そしてそれの意味する所は・・・あいつに見つかったって事だ。

「俺もそう思いたいが・・・。」

 残りの骸骨達の集団の中にいた首無騎士がゆっくりと身体を此方に向けるのが見える。勿論騎乗しているロシナンテと一緒に。実際はロシナンテは馬ではなく驢馬なのだが。ここから見ていてもわかる。あいつは馬。つまりあれは十中八九ロシナンテではなさそうだ。って事は名前だけ・・・なら助かるんだが。名は体をを表すって言うからなぁ。淡い期待だろうな。

「こらあかんわ。わいも目が合ってしもうた。」

「・・・来るぞ、クロト。」

 狂乱の首無騎士が此方に向かって歩みを進め始める。徐々に速度を上げる。右手に持った騎士槍を闇雲に振り回しながら。予想通り自身の周りにいる骸骨達を蹴散らしながら・・・。

「ほんまに敵も味方も関係なしやないか。」

 名前から推察される特徴は見事に的中してしまった。骸骨達が頼んでもいないのに飛び散っていく。ロシナンテ(仮)に弾き飛ばされたり、踏み潰されたりしている個体もいる。少し哀れな光景だな。

「くそぅ。どうするかな。」

 駆け寄って来る首無騎士との距離を測りつつ対策を練る。クロトと共闘するにしても、どうしたものかな。とにかくあの手に持っている槍と盾をなんとかしないとな。特にあの槍。間合いが広い。あれを躱して懐に飛び込むとなると相当厄介だな。あの馬に乗っているのも厄介だ。

「近くで見ると思ったよりかなりでかいな。」

 全くだ。馬に乗った騎士となると俺達兎から見れば規模感が何処ぞの傾奇者だな。

「こらぁ殆ど世紀末覇王やないかい。」

 おっと。そっちだったか。漫画家は同じ。・・・そんな事を言っている場合じゃない。

「取り敢えず、あの盾を何とかする。援護を頼めるか。」

 アイテムボックスに鎖を放り込み、替わりに違う武器を引っ張り出す。

「そらかまへんけど。援護って言うても・・・。」

 言い出した俺が言うのもなんだが、援護ってどうしたら良いのだろうか。先程引っ張り出した大槌を肩に担いで飛び回る。身体に不釣り合いな大きさの大槌ではあるが、俺にとっては特に問題はない。ロックの錬金術の練習で制作した試作品だ。極めて軽くしてある訳ではない。本来の性能通り、かなりの重量ではある。規格としては俺達が使用出来るように作ってはある。それでも普通に使用しようとすれば俺でも重く感じる。だが俺には重力を操る魔法がある。これはあまり力を消費しない。だから特に問題はない。

「あいつの左側に周りたい。」

「なるほど。それならなんとかなるかもしれん。・・・やってみるわ。」

 クロトもアイテムボックスに手を突っ込み何かを探している。その姿を横目に首無騎士の左側に周り込む為に移動を開始する。まだ充分に距離は保てている。

「よし・・・。それじゃぁ、始めようか。」


 あの首無騎士が乗ってる馬も問題だ。出来ることなら先に排除してしまいたいが・・・。無論あの馬も不死者で骸骨だ。とするならば、どこかに他の骸骨と同じ様に核があるはずだ。それは・・・たぶん人間の骸骨と同じ箇所だろうと思う。あの馬の骸骨は鎧を着てるからそれを確認出来ない。それはその上の首無騎士も同じだが。

「ほないくでぇ・・・。そら。」

 そう言って先程取り出したであろう何かを首無騎士に向かい放り投げた。それは縦回転をしながら首無騎士に向かって一直線に飛んでいく。おそらく手斧の類だろう。無軌道に振り回している槍に激突し鈍い金属音が白黒の世界に響く。

「本体を狙ってんけどな。ま、上出来やな。」

 投射物が一度舞い上がり大地に落ちて突き刺さる。手斧で正解のようだ。クロトの思惑通り、首無騎士の注意がそちらへ向く。進行方向が変わる。ありがたい。これで周り込むのが楽になった。目だけで感謝を伝える。クロトも右手の親指を立て答える。無言でのやり取りだが骸骨相手に意味があるかはわからんが。音に反応をしているのだろうか。少なくとも視認はしていない。音に反応するならもう少し距離が離れていても反応しそうなものだと思うんだけど・・・。それも個体差はありそうではあるが。実際この首無騎士はかなり距離が合ったにも関わらず俺達の存在に気が付いたからな。

 首無騎士の注意がクロトに向いているうちに技能を総動員して極力気配を消す。不死者に効果があるのかは不明だが、やるだけやってみる。元々兎なので足音をする方ではないが、それも消音機能を使用する。

 一団から突出してくれたおかげで取り巻きがいないのは助かる。手こずる程の相手ではないが、こう数が多いと気が散って集中出来ないからな。

「良し。この辺りか・・・。」

 立ち止まり機会を伺えう。黒い兎を追いかけ回して移動する首無騎士を一定の距離を保ちながら追いかける。くそう、休みなく暴れ回るからなかなか狙いが定まらない。一瞬でも良いから、その動きを止めてくれないだろうか。不死者が故に体力という概念がないからな。効果範囲まで近付いて捕縛系の法術でも使ってみるか・・・。本当は動きを止めてから近付きたいが、それは難しそうだしな。

 意味もないのに面白味のある暴言をぶつけて挑発している。仮にその言葉が届き反応していたとしても、それは音が聞こえているだけでその言葉の意味を理解できているとは思えないな。今の所一番近くにクロトがいるから追いかけているだけだろう。間合いは充分保たれているから大丈夫だとは思うが、あまり時間を掛けると他の骸骨共が近付いて来るからな。悠長にはしてはいられない。それは俺も同様だが。

 思い掛けず首無騎士が馬ごと俺に対して背中を向けた。状況としては些か周り込み過ぎではあるが、これなら正面から周り込むより安全に接近できそうだ。そう直感的に判断し反射的に走り出す。走り出した俺の姿を視界に捉えたクロトは、敢えて俺が視界に捉えられないように立ち回る。流石だよ、作戦開始前に伝えたものとは違う行動をしているのに即座に対応するとは。この援護を無駄にはしない。

「植物捕縛。」

 効果範囲にまで接近し法術を放つ。動きがほんの一瞬だけでも止まってくれれば。

「嘘だろ・・・。」

 植物捕縛が使えない。いや・・・使えないんじゃない。灰色の地面から植物の蔓が俺の身体を捕縛するにしても不充分な程しか生えて来ない。首無騎士の馬の足元で小さく踊り、その直後に大地と同じ灰色に染まり萎れて消えた。これは一体・・・。

「植物は新たには生えないって事か・・・。」

 おそらく植物だけじゃない。生命が生まれない、又は吸い取られるのか。とするなら、この植物系の法術は相性が悪すぎる。この大地に足を踏み込んだ時に俺達は特に影響を感じなかったから全く想定していなかった。クロトもこの状況に目を見開き眉間に皺を寄せていた。そんなクロトと目が合う。まだ大丈夫だと無言で合図を送る。俺の視線に気がついたクロトは普段通りの表情を取り戻し口角を上げた。適当なものを投げつけ注意を自分の方へと引き付け続けている。幸いにも俺の植物捕縛は馬の足に触れる事すら出来ずに終わった為、全く気が付かれていない御様子だ。そのまま首無騎士へ接近しながら別の技能を使う。

「連鎖捕縛。」

 俺には法術以外にも魔法が使えるんだよ。同じ様な技能にそれぞれ使い道があるとは思いもしなかったが。

 首無騎士の周りに十数個の黒い穴のようなものが出現し、そこから鎖が飛び出し首無騎士を馬ごと捉える。

「あれ・・・。思ったより鎖が多いな。」

 っと、そんな事を言っている場合ではない。捕縛時間もどれくらい持つかは分からないし、あまり長い間維持をするのも避けたい。どれ程力を消費するか分からないしな。いざという時の為に力も温存しておきたいしな。

 首無騎士との残りの距離を大槌を担いだまま盾側に周り込みながら詰める。足に力を込め、一旦首無騎士の頭上まで跳び上がる。頭は無いが・・・。大槌を両手で握り、大きく振り被る。その大槌を勢い良く振り降ろしながら重量操作の魔法を解除し、今度は重加速の魔法を己に掛け首無騎士の盾を目掛けて降下する。

「どっせいっ・・・。」


ーー《白兎流格闘術・影技・鉄塊彗星てっかいすいせい》ーー


 金属の塊同士が打つかり合う大きな音が灰色の世界に響き渡る。それと同時に連鎖捕縛を解除する。

 思いの外その衝撃は大きく、その反動も大きかった。俺自身の身体も反動で弾き飛ばされるかと思われたが、その前に大槌の方が耐え切れず柄の方が砕け散った。だがそれと引き換えに当初の目的通り、首無騎士の盾をその腕ごと大地に叩き付けた。腕は肩から外れ、盾は俺の大槌同様砕けていた。残るは槍の方か・・・いやそうじゃない。目的はこの首無騎士を倒す事だ。それを間違える訳にはいかない。砕けてしまった大槌は後で回収しよう。

 俺に左腕と盾を弾き飛ばされてようやく俺に気が付いた様だ。意識が俺に向く。そこに驚きの表情などは一切ない。まぁ、当然ではあるが。少し残念な気もする。

「なんや・・・今のも魔法か。鎖が出てきとったけど。」

「そうだな。助かった。後は俺がやろう。」

「そうか。ほんなら後は任せた。」

「悪いなぁ、美味しいところだけ頂いちゃうみたいで。」

「そういうんは、ちゃんと倒してからにせい。」

 仰る通り。身体の反対側から飛んでくる槍の先を避けて馬の腹の下へ潜り込む。腹の下から見上げると予想通り胸部にあの赤い核があるのが確認できた。どうしようかなどと迷っている暇は無い。その場所に向かって全身の力を込めて一直線に跳び上がる。家宝の杖を頭に装着した英国紳士の超人の如く。


ーー《白兎流格闘術・流星弾》ーー


 久々の流星弾。俺の最初の技。二足歩行になってからは使う機会が極端に減ってはしまったが、とっさに選択する技としては当然だろうと思う。

 見事命中し馬の核を貫き、通り抜け、その骨の馬を覆って守っていた金属製の鎧に角が突き刺さる。「良し。」と心の中で拳を握る。核を失った骨の馬は形を失い崩れ去る。それに合わせてその鎧を角に残したまま、その上に乗っていた首無騎士と一緒に落下する。


 まだ終わった訳じゃない。角を突き刺さったままの馬鎧の一部と一緒に切り離して、その場を離れる。案の定俺の飛び退いたその場所に騎士槍が突き刺さった。首無騎士は未だ健在。だがこれで地上に降りて来た。馬上の騎士と戦うより遥かにましだ。他の骸骨の様に緩慢な動きでは無いが、これくらいないなら。

 隻腕の首無騎士は今の所戦意を失っていないようだ。それ以外には色々と失っているみたいではあるが。首とか、左腕とか・・・。それ以前に・・・命か・・・。なんとか眠って貰うとしよう。

 とはいえあの槍は厄介だ。兎の俺からするとかなり広範囲だ。相手は不死者、元々筋力でその槍を持ち上げている訳では無いのだろう。その重量に意味はなさそうだ。その法則を無視したかのように振り回している。

「面倒くさいなぁ・・・。」

 連鎖捕縛で絡め取る事も出来るが、槍の一本ぐらいその必要もないだろう。アイテムボックスに手を突っ込み、再び鎖を二本引き摺り出す。引き摺り出す勢いのまま首無騎士の槍に向けて打ち付ける。


ーー《白兎流格闘術・影技・連鎖交叉縛れんさこうさばく》ーー


 鎖が首無騎士の振り回す槍に右腕ごと絡め取る。何も考えずに振り回しているから頼まなくても勝手に絡み付いてくれる。両手で鎖を握り槍の動きを止める。抵抗する力はそれ程でもないが、決して弱くもない。

「悪いが、このままいかせて貰うぞ。」

 跳び上がり身体を回転させ鎖を交差させて捻じる。その鎖を引っ張るながら着地してその鎖を背負投にする。


ーー《白兎流格闘術・影技・連鎖流星鎚れんさりゅうせいつい》ーー


 首無騎士は槍ごと弧を描き大地に叩き付けられる。金属の落ちる大きな音が響き渡る。それと同時に首無騎士の右腕がもぎ取れる。だが決めきれなかったようだ。本当はこの一撃で決めるつもりだったが、そう甘くはないらしい。両腕をもがれた状態でも立ち上がる。そして金属の擦れる音をさせながら俺に向かって来る。あの衝撃で腕以外の部分が無事だった事に驚かされる。だがもうこの首無騎士にはなす術は残されているようには思えない。どこか悲哀を感じさせる。ならばせめて最大級の敬意を込めて・・・。

 掴んでいた鎖から手を離し、深い呼吸をしながら目を閉じる。眉間の上の額の中心辺りに意識を集中させて、ゆっくりと目を目を開ける。

 眼の前の胴体と下半身だけになってしまった鎧の騎士に星座が写る。


ーー《白兎流天球技・奥義・横道二十六星座・月光鈴蘭げっこうすずらん》ーー


 首無騎士の身体に浮かぶ星を一つづつ拳と足で打つ。最早抵抗する方法を持たない首無騎士は無防備に俺の技を受ける。全ての星を繋ぎ月光鈴蘭の星座を完成させると、首無騎士はその場に立ち尽くす。その騎士に背を向け数歩進み振り返る。

「ゆっくり眠ってくれ・・・。」

 俺の言葉を聞き届けたみたいに、抜け殻になった騎士鎧が落下して音を立てた。


 鎖を回収する為に拾い上げて巻き取っていく。

「お見事やね。今の最後のはなんや。」

「俺の必殺技だ。」

 巻き取る鎖の先に鎧の右腕と槍が絡まったままになっていた。引き摺り寄せるよりも俺の方から鎖を巻き取りながら近寄っていく。

「そんなもんをまだ隠してたんか・・・。なんでこの前使わんかったんや。」

「必殺技なんだよ。お前相手には使わないよ。」

 絡み付いた腕と槍をここで解く暇もないのでそのままアイテムボックスに放り込む。戻ってからにしよう。

「なんでや。」

「だから、必ず殺す技なんだよ。手加減をしたわけじゃない。」

「そら・・・わいでも使わんわ。すまん。」

 どうやら疑問は解消したらしい。

「さて・・・ここはなんとかなったか。」

「この後どないする、イッスン。」

「取り敢えず、この一団の残りは一層してからにしようか。」

「賛成やね。」

 そうクロトが言い終わると、先を競う様にこの一団の残党を掃討する為に走り出した。

 最大の懸念材料だった狂乱の首無騎士を仕留めたので残りの数十体など取るに足らない。武器を使うのにも躊躇いが無くなった。それはクロトも同じ様であの双剣を使って縦横無尽に飛び回っている。俺は壊れてしまった大槌同様の試作品である長い柄の両刃の斧を振り回す。・・・思ったより大分楽だな。始めから武器を使えば良かったよ。


 付近にいた骸骨の一団を壊滅させ辺りを見渡す。

「これで一段落かな。」

「やね。結構大変やったな。・・・他にはあの首無騎士みたいなのはおらんみたいやね。」

 少なくとも気配を察知できる範囲にはいなさそうだ。

「さて、どないしようか。わいは幾らでも付き合うで。」

 元気な事だ。俺は・・・確かに体力的には特に問題はないが、最大限の集中力を発揮したので精神的に大分疲弊した。

「予定より少ないが、ここら辺で切り上げて、帰ろうか。」

「・・・そうやね。わいもなんとなくそれが良い気がするわ。」

「思ったより距離もあるし。」

「それな。行くときは、ひたすら真っ直ぐ最短距離を、やったからそれ程長いと感じんかったけど。」

「そうなんだよなぁ。だから帰ろうぜ。車線上にいるやつはぶっ飛ばすくらいで。」

「そうやね。ほな、帰ろか。」

 大きな結界に背を向ける。


 あ、大槌の残骸を回収しないと。

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