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69、一つの答えが出ると次の疑問が生まれる。

 欠伸を一つ。左手で眠い目を擦りながら右腕を空に向けて突き上げて、大きく伸びをする。・・・流石に夜通し話し続けていたらこうなるわな。お互いに現在に至るまでの道程を、目を覚ました時点から語っていたら、時間がいくらあっても足りない。それでもこの話を共感できる唯一の存在に出会えた喜びが、どうしても話すのを止める事をさせてくれなかった。終いには流石のアッシュも「貴様らには付き合いきれん。吾輩はもう寝る。」と言って呆れて席を外して天幕の中に引き上げてしまった。俺達は気が付いたら、その場所に突っ伏していた。

 この寝不足もあって、本日はこのまま天幕を貼りっぱなしにしたまま、道を挟んで北側の・・・十字なのか丁字なのかははっきりしないが道沿いに並ぶ、民家だったであろう建造物の調査をする事にした。翌日に我々の当初の目的である南側の探索に向かう・・・予定。その旨を朝食の際に皆に伝え了承を得た。

 朝食を終え、その・・・今となっては遺跡と化してしまった場所へと向かっている。俺とクロト、サイとフタバ、シロマルの御大と解説と補足の為にトウオウとアッシュが調査隊だ。ヤクモはキンカクとギンカク、レッドンと話が会うらしく、今朝も何やら話し込んでいた。良く考えたらうちには子供と女性陣ばかりで、男性の話し相手が少ないのかもしれない。俺以外は聖獣と魔王だもんな。ヤクモからすれば、俺は主だしノインとトウオウに対しては対等に話すという訳にもいかないんだろうな。性格的にも。戦術などの情報交換も少なからず含まれてはいるだろうが、楽しそうにしていてなによりだ。という事で、別行動。ただ何故かその近くにロックが座ってその話を聞いている。・・・きっと何かあるんだろう。多分。

 ノインも旧知のコバと積もる話があるのだろう。聖獣同士の会話はそんなものなのか興味はあるが。穏やかに話をしている。何年振りなのかは知らないが、途方も無い時間な気がするので敢えて聞かないようにしている。聞いても想像も実感も出来ないと思うし。・・・しかしあのコバという青龍さんは、ノインより一回り程小さい。聞いて確かめた訳ではないが、多分身体の大きさをある程度任意で変えられるのだと思われる。本来はもっと大きのだろうな。そして常に浮遊していて、その姿はまるで、色こそ違うが、七つの球を集めて呼び出す願いを叶えてくれるあの龍の様だ。彼等も留守番をし、そこで二重に聖域結果を展開してくれるとのことだった。勿論念の為だ。

 モモカはモモちゃんに懐かれてしまったみたいで、ジュウザとハク、サツキと一緒に面倒を見てくれるようだ。モモちゃんもお姉さんがいるのと、少し年上だろうが同年代の遊び相手がいるのが嬉しいようで、朝からはしゃぎっぱなしだ。ま、今のジュウザならモモちゃんに本気にぶつかられても特に問題は無いだろう。ジュウザって意外とちゃんとお兄ちゃんだしな。万が一怪我をしてもモモカが一緒にいれば何とでもなるだろう。

 スーアンは意外にもキスケと気が合うらしく、やれああでもない、やれこうでもないと法術や戦術の話を楽しそうにしている。お互いにしきりに感心したり驚いたりし合っている。ミナもその話を側に座って興味深そうに聞いていた。・・・にしても幾つもの金平糖程の小さな法術の球を操りながら説明しているけど、あれって普通にできる事なのかしら。・・・俺は考えるのを辞めた。


 時を昨晩に遡る。

 俺がした質問に、それまでの和やかな雰囲気がやや張りを生む。その場を囲むのは、兎が二羽と麒麟と青龍の聖獣、そして南瓜と猫の魔王。・・・つまり俺とクロトの事情をある程度把握、もしくは感づいている者達だけ。何かしら世界の事情を把握いている者達の面持ちが些か真面目なものになる。・・・南瓜を除いて。いや、表情から察するのが非常に困難なだけなのだが。

「・・・いや、すまない。ただちょっと確認したかっただけなんだけど。」

 急に僅かばかりではあるが、生んでしまった緊張を払う為に慌てて付け加えた。

「んん・・・ないなぁ。」

 クロトは両手を広げながら肩を竦め首を振った。

「そうか。」

 答えはある程度予測は出来ていたが、一応確かめておきたかった。・・・まぁ、お互いにまだ遭遇した事が無いだけで、世界の何処かに存在している可能性はあるが。そんなもの悪魔の証明でしかないからどうしようもないが。今の所は、お互いに出会った事はないと。証明に一歩近付いたが、答えは永遠に出ないだろうな。

「俺もだ。・・・ただ、その亡骸を発見した事はある。」

 その亡骸は、土にでも埋めて埋葬しようかとも考えたが、そのままにしておいてあげたほうが良いような気がして、敢えてそのままにして、手を合わせ祈るに留めてある。触れてしまうとその形を全て無に帰してしまいそうな気がして・・・。

「そうか。此処に来るまでの道程で、存在の痕跡は見たけどなぁ・・・。」

 クロトはそう言いながら、首を回し北側へと視線を向けた。

「そうだな。どうやら存在して事は間違いないな。」

「そうみたいやねぇ・・・。軽く見た感じ、長い事使ってへんみたいやけどねぇ。」

 まともな形を保っているものも殆ど見かけていない。家は、住むものがいなくなると朽ちるって言うからな。

「・・・なぁ。提案なんだけど。明日はこのまま拠点を置いて、休息も兼ねて少し北側の探索をしてみないか。流石に今日の明日で南に行くのは避けたい。できれば念の為、なるべく万全に近い状態で南に行きたい。」

「せやね。わいもそれがええような気がするわ。わいはイッスンに賛成や。・・・皆は。」

 皆は一様に頷く。

「ふん・・・吾輩達は貴様らに従うだけだ。好きにすれば良い。」

 口は悪いが、賛成なんだ。うん・・・段々アッシュなる魔王の感じが掴めてきたぞ。どうやら口程悪い奴ではないらしい。・・・まぁそんな事、出会った時から分かってはいたけどね。なんだかんだ言ってはいてもトウオウの事をちゃんと友だと思っているみただしな。

「良し、決まりやね。・・・良かったわぁ。流石に明日は休みたかったんや。」

「阿呆が。貴様が余計な事をしなければ良かったのだ。」

「まぁまぁ、そう言ってやるなよ。」

「それに付き合った貴様も同罪だと言っている。」

 きゃぁ。助け舟を出したら、此方にも弾が。白と黒の兎は同時に灰猫に謝罪した。その頭上を南瓜が楽しそうに宙返っている。

「おい。貴様はもっと重罪だぞ、そこの南瓜。」

 あぁあ。トウオウも捕まっちゃった。


 見上げる建物越しに青空を覗く。今日も良い天気だ。

「こうやって建物を・・・だった物を目の当たりにすると、やっぱり人間はおったらしいっちゅう事だけは確かなのだけはわかるなぁ。」

 俺に負けず劣らずの眠い声だ。欠伸も一つかましている。

「そうだな。」

 まともに形をなしているものは無いと言って良い状態だ。むしろ、どれ程の時間が流れているのか正確な所は分からないが、それが家であった事を見ただけで判別出来る状態のものが残っている事の方が奇跡に近いと思われる。

「・・・少しだけ切ないような気もするな。」

 だからといって人間に会いたいかと言われれば、そうでもないのだが。

「せやねぇ。会いたい訳でも無いけど、どんな生活をしてたかは気になるな。」

 同意見だね。・・・この成れの果てを見る限り、そして故郷の森で見つけた亡骸の様子を考える限り、おおよその見当は付くけどな。その予想が合っているかどうかを確かめようとしている感じだ。勿論何かしらの情報が・・・と考えてはいるが、正直この場ではあまり大きな期待はしていない。

「どうする。手分けするか、それとも皆で一緒に行くか。わいはどっちでもええねんけど。」

「そうだなぁ・・・。一応みんな一緒に行動しようか。」

「ええけど・・・。警戒し過ぎちゃうか。」

「そういう事じゃないさ。全員の目で見た方が良い気がするだけだ。」

「あぁ・・・なるほど。せやね。別々に全部やと二度手間になりかねんし、っちゅう事やね。」

 理解力が高いな、助かる。

「それにどうしても俺達は、先入観やら固定観念やらがありそうだろ。」

「確かにそうやね。純粋な魔物や魔王の視点は、わい等に見えないものが見えそうや。」

 俺もそう思う。此処にそれ程の情報が転がっているかは判らんが。それでも俺達にとって初めての経験だからな、全く収穫が無いとは思わないが。大いに役に立つ情報である可能性も低そうだけど。

「右と左・・・どっちから行く。」

 別にどうでも良い質問をしてみる。

「そうやねぇ・・・。」

 腕を組んで首をゆっくり左右に振ってそれぞれの方向を眺めている。

「いやぁ、そんなに難しく考えなくても・・・。」

「ちゃうねん。こういうのはわいが決めるより硬貨とかで決めた方がええねん。」

「そんなにくじ運が悪いのか。」

「ちゃうわ。どっちでもええからや。」

 あ。それはクロトも分かってたのか。

「・・・じゃぁ誰かに決めて貰うか。」

「ん。それがええかもな。・・・誰にしよか。」

 取り敢えず魔王達は候補から外れますよね。トウオウは基本的に此方に指示を出すような事は言わない。たとえ聞いても「どっちでも良い。」的な返事をするに決まっている。アッシュの方は堂々とお断りする姿が容易に想像できる。そしてこんな事を頼んだら怒られそうだし。

「フタバぁ・・・。」

「あい。」

 俺に呼ばれて可愛い返事をして此方に飛んできて、俺の頭の上に停まる。

「なぁに、あるじたま。」

「右と左。どっちからにしようか。」

 こういう時はフタバに選んで貰うに限る。未だにフタバの判断基準は不明だが、その選択には不思議な結果が伴う。フタバは上下左右に一通り振って考える。

「なんや。梟のお嬢ちゃんはこういうの得意なんか。」

 俺の頭の上を見ながらクロトが聞いた。

「そうだな。こういう時はフタバに選んで貰うのが一番良い。」

「ひだり。」

 俺の頭の上から俺を見ながらフタバはそう言った。

「良し。じゃぁ左からにするか。ありがとう、フタバ。」

「あい。」

 フタバは嬉しそうに笑ってシロマルの方へと戻って行き、シロマルの雲の上に乗った。お爺と孫の様だ。

「皆ぁ、左から調べるでぇ。」

 先行している皆に声を掛ける。一斉に此方を向き左へと進路を変える。


 左側、西側の、辛うじて家屋の形を成しているものの前に立つ。屋根など無く、当然扉も無い。おそらく木製だったのだろう、経年劣化で朽ち果てたものと思われる。今にも崩れ落ちそうな壁に不用意に触れないよう気を使いながら中を覗き込む。空色の天井のおかげで

「これって、「人」が住んでた家って事で間違いないよなぁ・・・。」

「どうやろねぇ。わい等の知らん生き物やもしれへんぞ。」

 ・・・その可能性は零ではない。が、森で出会った亡骸から考えると、十中八九人間、少なくとも人種と思うんだけど。

『是、肯定します。人間の住居で間違いありません。』

「のわっ。」

 久々のご登場に思わず声を出してしまった。何時も唐突だからな。

「くわっ。」

 俺の隣でクロトも同じ様な声を上げた。どうやらクロトも唐突に『誰か』に話し掛けられたご様子。同じ様な反応をしたもの同士顔を見合わせる。

「お前もか。」

 その質問に、苦笑いで頷きを返す。

「これは自問自答の時間かな。」

「わいもその時間が欲しいわ。」

 見たことも無いものに興味津々なハクやフタバ達は特に問題はなさそうだ。その補足や解説にトウオウとアッシュがしている。そのアッシュが此方に視線を送り、自分の顔の前で何かを払うように手を振った。俺達の状況を察してくれたようだ。俺も軽く手を上げて礼を伝える。

「優秀な右腕だな。」

「せやろ。せやけどアッシュだけやのうて、皆自慢の仲間や。」

 それは俺もだ。


 さてせっかく気を利かせてくれたので、甘えさせて貰おう。俺達は一度その建造物から距離を取る。

 おまたせしました。『問題ありません。』それで・・・これは、「人」の造ったもので間違いないと。『是、肯定します。種族・人間の文明で間違いありません。』つまり俺達の推察に大きな間違いが無かったって事だな。『是、肯定します。』しかし急に情報が開示されたな。『条件を満たしたので、一部の情報が解禁されました。』・・・なるほど。それはこの文明の名残りを発見した、もしくはそれを調査しようとした事かな。『概ね正解です。』概ねかぁ。他の条件も含まれるって事だね。じゃぁ、何故この情報を秘匿しておく必要があったのかって事が気にはなる。『現在に至る選択をしない可能性もあった為です。』・・・そうか。ただ魔物のとしてあの森で生活するだけなら必要の無い情報だと。『是、肯定します。』俺にそんなに気を遣って頂いて申し訳ないね。敢えて俺がそちらの道を選んでしまわないようにと。『是、肯定します。』ありがとう、な。『恐れ入ります。』しかし俺が、俺達がこの選択をしなかったらどうするつもりだったんだ。『特に問題は・・・。』いや、済まない。答えは聞かなくてもなんとなく分かったから大丈夫だ。『恐れ入ります。』改めて、ありがとうな。セッテさん。『いえ、私は何もしておりません。』そう言うと思ってた。


 俺がどんな選択をしても一切文句など無かっただろう。俺を誘導するような事は一度も無かった。つまり俺達に世界の運命を背負わせるつもりはなかった訳だ。セッテさんは・・・ではなく、セッテさんの上司は・・・かな。そんなものが存在するのならば、だが。

 元の世界に帰ってきた俺はクロトの様子を伺う。クロトは腰に手を当てて空を見上げていたが、俺の視線に気が付き此方を向いた。どうやら俺より少しだけ早く帰還していた様だ。

「答えは見つかったか、クロト。」

 別にそういう答えを探していた訳ではないのだが。

「そっちはどうなんや、イッスン。」

 そんな事は承知の上でそう返す。

「気になってた事を確認しただけだ。」

「わいも似たようなもんや。」

「で、そっちは何さんって言うんだ。俺の方はセッテさんだ。」

「わいの方は・・・アンシェさんや。って、名前ついてんのかい。」

「え。付けるだろう、名前・・・。」

「付けるよなぁ、やっぱ。」

 これで確認が取れた。お互いに自分にしか聞こえない案内役がいるという事が。また昨日と同じ様に、似た者同士だなと笑い合う。

 先に調査に入っていた皆に合流する。部屋の隅を覗き込んでいるハクの側に立っているアッシュが顔を半分程振り返った。

「・・・用事は済んだのか。」

「おう、すまんなぁ。」

「問題は無い。」

 無愛想にそう答える。答えてくれるだけありがたい。なにせうちのトウオウさんは、分かっていても大きな反応が返ってこない。思いの外笑い上戸なのに。少し羨ましい気もする。

「ハク、何か面白いものがあったか。」

 ・・・おぉ、返事がない。随分と熱心に観察しているご様子。良いねぇ、そんなに熱中できる事があるなんて。俺の質問に反応しないハクの代わりにトウオウが俺を見て楽しそうに首を振った。

 それに引き換えフタバはシロマルと一緒に、部屋の中にあるものをあれは何だ、これは何だと話している。そこで少し疑問が湧く。

「なぁ・・・シロマルの爺さんはそれなりに知識があるのはなんとなく分かるんだけど、フタバは何でそんな知識があるんだ。まだ生まれてからそんなに経ってないし、あの森から出たのは今回初めてのはずだと思うんだけど。」

 それこそ文明の知識を持ち合わせている事が不自然な気がする。

「ふふ。それはな、イッスン殿。梟たるフタバ嬢の技能によるものなのだよ。」

「梟たる・・・ですか。」

「そうじゃ。なぁフタバ嬢よ。」

「あい。」

「へぇ、そうなのか。・・・良かったらどんな技能なのか教えてくれないかな。」

「あい。梟の叡智って言う、技能だよ。」

「梟の叡智。それはどんな技能なんだ。」

「えぇっとねぇ・・・。」

 フタバはそう言って首を捻り始めた。それを見かねてシロマルが助け舟を出す。

「フタバ嬢よ。良かったら、わしが代わりに説明しても良いじゃろうか。」

 フタバは頭の回転に言葉がついていかない。おそらくそれはこれからの成長の過程で改善していくとは思うが、現段階では年相応の幼さの影響がある・・・と思っている。梟の年相応とはどんなものかという知識は持ち合わせていないが。

「あい。マル爺ちゃん、お願い、します。」

「イッスン殿もそれでよろしいかな。」

「勿論だ、お願い出来るかな。」

「でわ・・・。梟の叡智とは、全ての梟同士で知識を共有するという技能じゃ。」

「知識を共有する技能・・・。」

「そうじゃ。わしも昔、梟の友に聞いただけじゃから正確では無いかもしれんが。あくまで共有するのは知識であって、意識や記憶ではないらしい。」

「ほぉぅ、なるほど。」

「何処かに知識を貯めておくような場所があって、そこにある知識を全ての梟が必要な時に引き出せる、という様な技能らしい。」

「全ての梟の・・・ですか。」

「そうじゃ。過去の知識も全てらしい。わしにはそれがどの程度のものかもわからないし、どれ程正確なものかはわからん。」

「梟達の共通の知識の財産って事か。」

「・・・過去もちゅう事は、梟によっては、誰かに飼われたり、使役されたりしてたもんもいたっちゅう事かいな。」

「流石わ、殿じゃ。仰る通りございます。」

 その説明を聞いてようやく合点がいった。知るはずのないものの知識を有している理由が。

「その知識ってどれくらい正確なんだ。」

「わしの古き友の言うには、そこが面白いところだと言っておった。その知識を蓄積した個体の主観が多分にに含まれるのだと。」

「ははは。そりゃ面白いな。」

 

 そこに残されているものを見ても、もはや何人の家族が暮らしていたのかすら想像もつかない。長い年月、風雨に晒されればこうもなるだろう。この世界の気候がいかに穏やかとはいえ、風も吹けば、雨も降る。まだそこに僅かでも文明の匂いが残っている事の方が驚きだ。それでもやはりその残影は些か物悲しく思える。

 そこに人の営みがあった事は分かるが、それ以上の情報を得るのは難しそうだ。おそらく前世の世界の様に、どの家庭にも少なからずあるであろう書物もないだろう。故にそこから得られる情報は皆無だからな。そう考えると自分達はいかに当たり前に高い水準の文明の中で生活していたのだなと思う。こうしてその生活を離れ、己を見つめ直すと気が付く事が沢山あるな。

 そこからその付近にある建造物を気の済むまで調べ尽くしたが、やはり大きな収穫は得られなかった。ただハクとフタバは終始楽しそうにしていた。俺やクロトからすると、そんな所が気になるのかとか、そう見えるのかと、新鮮な驚きを与えてくれた。全てを調べ終えた頃には西の空が茜色に染まっていた。


 天幕の張ってある場所に帰ると、まるで遊園地にでも行ってきた日の様な疲れを覚えた。こんな感覚は何年振りだろうか。そんなに長い距離を移動した訳でもないのに妙に疲れた。俺はなった事はないが、親とはこんな感じだったのかなと思ってみたりする。

 ハクとフタバは非常に満足したみたいなので何よりである。そしてそれに長い時間付き合ってくれていた、トウオウとアッシュとシロマルには本当に感謝したい。

 皆で少し早目の夕食を食べながら、翌日の予定を確認する。特に大きな変更のない旨を伝える。そして本日は少し早く就寝する事にした。本日の当初の目的は休息だったからな。・・・そしてなにより、眠い。やはり夜通し話していたのが、大きく響いている。完全に自業自得ではあるが。食事が最後の止めとなってしまったようで、急激に瞼が重くなって来た。一瞬でも気を抜いたらすぐにでも夢の世界へと連れて行かれてしまうだろう。結局俺達のやってることは、どちらかと言うと親と言うより子供みたいだな。

 さて・・・明日は南側の調査だ。ここからでも極微量ではあるが、不穏な気配を感じる。鬼が出るか、蛇が出るか。それとも悪魔か、邪神か・・・。今夜はきっちり休んで明日に望むとしよう。

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